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なぜ放送法4条は倫理規範なのか(どうして総務大臣の電波停止・業務停止は許されないのか)。
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/6f48fec2637d9fbdce9f8745a743732a
2016年02月11日 | 社会とマスコミ Everyone says I love you !
テレビと権力
清水 英夫 (著)
講談社
はたしてテレビに“言論”機関の資格はあるか。「椿事件」の際、公権力の言論介入に抗議して放送番組調査会委員長を辞した著者が、「思想・表現の自由」の侵害に弱腰の“免許事業”=テレビを語る。
いま、放送法4条が法的規範(法律上の義務を生じるルール)なのか、倫理規範(単なる道徳上の努力義務しか生じないルール)なのかが争いになっています。
高市総務相や安倍首相は前者だと言っており、放送法や憲法学会の通説は後者だと言っています。
これが何に関係してくるかというと、総務大臣が放送局に電波法の電波停止や放送法の業務停止を命じることができるのは、放送局が「法律違反」=法律的な義務に違反した場合だと書いてあるからです。
もし、放送法4条が単なる倫理規範なら、放送局に法的義務を負わすものではないので、法的に義務違反の問題も生じず、放送法の条文はあっても電波法76条や放送法174条の「法律」の中には入らないんですね。
電波法76条1項
総務大臣は、免許人等がこの法律、放送法若しくはこれらの法律に基づく命令又はこれらに基づく処分に違反したときは、3箇月以内の期間を定めて無線局の運用の停止を命じ、又は期間を定めて運用許容時間、周波数若しくは空中線電力を制限することができる。
放送法174条
総務大臣は、放送事業者(特定地上基幹放送事業者を除く。)がこの法律又はこの法律に基づく命令若しくは処分に違反したときは、三月以内の期間を定めて、放送の業務の停止を命ずることができる。
表現の自由と第三者機関 (小学館101新書)
清水 英夫 (著)
小学館
表現の自由、言論の自由は尊重されなければならないが、一方で名誉毀損、人権侵害などメディアによる問題事例が後を絶たない。また、損害賠償額の高額化によるメディアの萎縮など、言論の自由が危ぶまれる状況に陥りつつある。長年、新聞、放送、出版、映画などの世界に関係してきた著者は、表現の自由を守り抜くためには、いまこそ第三者機関による公正な判断とメディアの透明性、説明責任が必要であることを訴える。
さて、法律に規定してあるのに、法的義務を生じない倫理規範というのは、確かに多くはないのですが、いろんな法に存在しています。
たとえば、憲法には国民の「三大義務」、すなわち保護する子女に普通教育を受けさせる義務(第26条第1項)、勤労の義務(第28条第1項)、納税の義務(第30条)が規定されていますが、ここから直接には法的義務を生じない規定だとされています。
たとえば、働けるのに働いていないから憲法違反だということにはなりません。これは単なる倫理上、道徳上の問題しか生じないのです。
いやいや、納税の法的義務はあるじゃないかと思われるかもしれませんが、納税の法的義務は憲法から直接生じるのではなくて、所得税法や消費税法などの具体的な法律ができて初めて生じるのです。だから、納税すべきと気にしないのはこれらの法律違反であって、憲法違反だという話は聞いたことがないでしょう。
憲法に国民の「義務」を書いてあっても、そこから直接国民に法的義務を負わせるのは、細かく規定ができないので大ざっぱに過ぎ、不適切だと考えられているのです。
言論の自由はガラスの城か―マスメディアの自由と責任
清水 英夫 (著)
三省堂
行き過ぎた報道にブレーキはかけられるのか?またその方策は?報道の自由と人権との調和に心を砕いてきた著者が、マスコミ倫理のあり方を語る。
さて、では、なぜ放送法4条は法的義務を生じない倫理規範だと考えられているのでしょうか。
それは、よく言われるように、放送法4条が法的義務だと、放送局の表現の自由、報道の自由を侵害する恐れがあるからです。
ここでやっと放送法4条を改めてみたいと思います。
(国内放送等の放送番組の編集等)
第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
このように、放送法4条は放送の中身について「ねばならない」と書いてあります。放送局の表現の中身にまで踏み込んでしまっているのです。
こういう規制は、新聞や雑誌に対する法律では考えられませんよね?また国民一般の表現行為についてもあり得ません。
もちろん、名誉毀損罪や犯罪の教唆に当たるような極端な場合は個々別々の法律で規制がされていますが、表現行為が一般にたとえば「政治的に公平」でなければならない、と大ざっぱに規制されるようなことはありえないわけです。
なぜなら、放送局の報道の自由を含めて、憲法は広く表現の自由を保障しているからです。
日本国憲法
1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
放送法を読みとく
鈴木 秀美 (著), 砂川 浩慶 (著), 山田 健太 (著)
商事法務
放送番組の編集は、放送事業者の「自律」(=自らにルールを課し、守る)に任されている。
倫理規範とはいえ、放送法にこのような4条が設けられたのは、新聞や雑誌と違って、放送の電波は限られており、放送局の数も制限されるので、放送局の放送が公平でない場合の影響が大きいからだと言われています。
しかし、それでも、放送法4条が倫理規範であり、放送局に法的義務を負わせるものではないと考えられていることには法的根拠もあります。なぜなら、4条の前に1条と3条が規定されており、4条はこれらの条文を前提にしているからです。
(目的)
この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
第1条
一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。
(放送番組編集の自由)
第3条 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。
つまり、1条2号で放送法の目的は、放送のによる表現の自由を確保することであり、放送の不偏不党もその手段であること。
放送法第3条で、あくまでも放送番組が何人からも干渉され、規律されないことが前提であること。
が規定されているからです。
メディアの法と倫理
大石 泰彦 (著)
嵯峨野書院
マス・メディアやジャーナリストによる取材・報道活動を「法」と「倫理」という2つの社会的ルールの観点から分析し、批判する学問分野である「メディア倫理法制」の概説書。
このように、放送法4条は放送局に法的義務を課すものではないので、電波法76条1項や放送法174条の、「違反したら電波停止や業務停止」にされる「法律」には含まれていません。
だから、、放送内容が「公平」でなかったら放送法4条違反なんだから、総務大臣が電波停止にできるというのは法律上当たり前の理屈だ、一般論だという安倍首相、菅官房長官、高市総務相らの理論は成り立たないのです。
さらに言うと、まず、放送法1条2号で定められた「放送による表現の自由」「不偏不党」を侵害し、3条で許されないとされた「干渉」や「規律」をしてくる最大の存在は政治的権力です。
ですから、総務大臣のような国家権力が放送内容に踏み入り、その政治的「公平」性を審査するようなことは、むしろ放送法違反と言えるでしょう。
マス・メディアの法と倫理 (言論法研究)
清水 英夫 (著)
学陽書房
言論法にいま、何が問われているのか!私たちの法律論は、常識論的な見方を無視するものではない。しかし、常識がすべてであるなら、法律論はいらないし、まして法哲学的考察など無用の作業であろう。真に必要なのは、巨視的な立場であり、憲法論の上に立った冷静で合理的な評価・判断である。
また、一般に憲法上、基本的人権の制約は「公共の福祉」に反しない限り許されませんが、表現の自由のように民主政の過程に不可欠な権利は、それが損なわれてしまうと民主政治そのものがダメになってしまうので取り返しがつかないため、国会の作る法律でも必要最小限度の制約しか受けないとされています。
ましてや、表現内容に着目して表現行為を制限すると、こんな表現をしても大丈夫かな、と表現する側の萎縮を招きますので、立法府・行政府の判断権限は非常に小さい(裁判所により憲法違反とされやすい厳しい基準をもって違憲審査される)とされています。
この観点から、高市総務相が言及した電波停止や業務停止処分を見ると、放送局の「公平性」を担保するために、行政指導の前にできること(BPOによる勧告など)、さらには行政指導と電波停止処分の間に無数にやれることがいっぱいあり、電波停止や業務停止という強権発動はとても必要最小限度の方法とは言えません。
そういう意味でも、高市総務相の発言は二重三重に、憲法上も放送法上も、許されない発言・発想であったと言えるでしょう。
放送法・メディア法の第一人者、清水英夫青山学院大学名誉教授は著書『表現の自由と第三者機関』(小学館新書、2009年)より。
「そもそも、政治的公平に関するこの規定(注 放送法4条のこと)は、当初は選挙放送に関して定められたものであり、かつNHKに関する規定であった。それが、「番組準則」のなかに盛り込まれ、民放の出現後も、ほとんど議論もなく番組の一般原則となったものであり、違憲性の疑いのある規定である。」
「かりに規定自身は憲法に違反しないとしても、それを根拠に放送局が処分の対象になるとすれば、違憲の疑いが極めて濃いため、この規定は、あくまで放送局に対する倫理的義務を定めたもの、とするのが通説となっている」
関連記事
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BPOが自民党に「放送の自由と自律に対する政権党による圧力そのものであるから、厳しく非難されるべき」
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/a384589f0ea9fbf92068f8b3e3671834
高市総務相が放送法4条違反の放送局の電波停止の可能性を明言。これで「行政指導」も取消訴訟の対象に。
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/755c0843633b7d1a9d901171fee94662
安倍首相「安倍政権こそ、与党こそ言論の自由を大事にしている!」。国民「自分たちの自由はな!」。
http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/4e837c369c740c8ea984b6a96f7465c4
・
参考記事
【全文】高市早苗氏「電波の停止がないとは断言できない」放送局への行政指導の可能性を示唆
http://logmi.jp/125281
・
表現の自由を大切に考える市民の皆様の理論武装の一助となれば幸いです。
高市総務相、放送局電波停止に再び言及 罰則適用否定せず 衆院予算委
http://www.saga-s.co.jp/news/saga/10101/277428
2016年02月10日 10時44分
衆院予算委で、答弁のため挙手する高市総務相=9日午前
高市早苗総務相は9日の衆院予算委員会で、放送局が政治的公平性を欠く放送法違反を繰り返した場合、電波法に基づき電波停止を命じる可能性に再び言及した。電波停止について「極めて限定的な状況のみで行う」と指摘。将来的に罰則を適用することを否定しなかった。野党は「報道の自由を侵すような発言を厳しく追及する」(民主党の高木義明国対委員長)と批判し、高市氏に発言を撤回するよう求める構えだ。【共同】
菅義偉官房長官は記者会見で「当たり前のことを法律に基づいて答弁したにすぎない」とし、恣意(しい)的な運用は「あり得ない」と強調した。
衆院予算委で、民主党の玉木雄一郎氏は「ある番組が憲法9条改正反対を支持する放送を繰り返した場合も電波停止になるのか」と質問した。
高市氏は、電波停止を命じる基準として(1)放送法に違反した放送が行われたことが明らか(2)放送が公益を害し、将来に向けて阻止が必要(3)同じ放送局が同様の事態を繰り返し、再発防止の措置が不十分(4)放送局の自主規制に期待するだけでは放送法を順守した放送が不可能−と説明した。
さらに「1回の番組で電波停止はまずあり得ない」としたものの「放送局が全く公正な放送をせず、改善措置も行わない時、法律に規定された罰則規定を一切適用しないとは担保できない」とも語った。
高市氏は8日の衆院予算委でも「将来にわたり(罰則適用の)可能性が全くないとは言えない」と答弁していた。
■電波停止 放送局が放送法などに違反した場合、総務相が電波法76条に基づいて命じる行政処分。放送法4条は、放送番組の編集に当たり「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などを定めている。これまでは「やらせ」や捏造(ねつぞう)など法令違反があっても「警告」などの行政指導にとどまっており、電波停止を発動した例はない。
高市総務相が改めて電波停止に言及、与野党に波紋
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2699627.html
TBS動画ニュース
高市総務大臣は9日の国会で、放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、電波停止を命じる可能性について改めて言及しました。
「総務大臣の権限として放送を止めることができるわけですよね」(民主党・奥野総一郎議員〔8日〕)
きっかけは、8日の衆議院予算委員会のやりとり。民主党の奥野議員が高市大臣に、「政治的公平」などを定めた放送法第4条に違反したことを理由に総務大臣の権限で放送局の電波を止めることはないと明確に否定するように求めたのに対して・・・
「電波の停止は絶対しないと、私のときにするとは思いませんけれども、何度、行政の方から要請をしても全く(放送法を)順守しないという場合、その可能性が全くないとは言えない」(高市早苗総務相〔8日〕)
9日の朝の閣議後の記者会見では・・・
「(電波停止は)非常に極端な場合であるのは、過去の総務大臣答弁からもある」(高市早苗総務相)
高市大臣は、違法な放送が行われたことが明らかで、公益を害し、同一の事業者が同様の事態を繰り返す場合などの条件を明示。電波の停止について「未来永劫、適用することがないかと言われると、それを否定するわけにはいかない」と述べました。
こうした発言に、政府与党内からは・・・
(Q.電波停止の判断を時の政権が恣意的に運用する可能性は?)
「それはありえないでしょう」(菅義偉官房長官)
「果たして大臣の答弁のようなことが実際に起きるかどうかというとは、ちょっと考えにくいのではないか。基本的には慎重な運用が望ましい」(公明党・山口那津男代表)
石破地方創生担当大臣は、高市大臣の発言を詳しく把握していないと断った上で・・・
「民主主義において、言論機関の自由な表現は常に保障されなければならない。気に入らないから統制するとか、民主主義とメディアの関係がおかしくなると思う」(石破茂地方創生相)
放送法に詳しい専修大学の山田教授は・・・
「本来ならば、放送法というのは放送の自由を規定する法律であって、その自由を規定する法律を使って電波法に規制をかけるのには矛盾がある」(専修大学文学部言論法研究室・山田健太教授)
放送法の理念を説明した上で、こう指摘します。
「繰り返し政府の首脳が国会の場で正式に答弁をすることで、どんどん(放送の自由に規制をかける)考え方が既成事実化していくことの恐ろしさがある」(専修大学文学部言論法研究室・山田健太教授)
この問題は、9日の国会でも取り上げられました。
「ある個別の番組において、憲法9条の改正に反対する政治的見解を支持する内容を相当の時間にわたり繰り返し放送した場合も、電波停止になる可能性は否定できませんね」(民主党・玉木雄一郎議員)
「1回の番組で電波停止ということはまずありえません。繰り返して全く公正な放送が行われない 、改善措置もなされていないときに法律に規定されている罰則規定を一切適用しないということまでは担保できない」(高市早苗総務相)
高市大臣は、「極めて慎重な配慮のもと運用すべき」と答弁しましたが、民主党の玉木議員は「放送に対して萎縮効果を与えるような発言は厳に慎まれた方がいい」と批判しました。(09日23:12)
高市総務相の停波発言に波紋 与党にも慎重対応求める声
http://www.asahi.com/articles/ASJ295DB7J29UTFK00Q.html
相原亮、笹川翔平 星賀亨弘 2016年2月10日05時04分 朝日新聞
高市早苗総務相が、放送局が政治的な公平性を欠くと判断した場合、放送法4条違反を理由に電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性に触れたことが、波紋を呼んでいる。メディアの報じ方に神経をとがらせてきた安倍政権だが、今回は与党からも慎重な対応を求める意見が上がった。憲法に保障された表現の自由は守られるのか。
9日の衆院予算委員会。民主の玉木雄一郎氏が「憲法9条改正に反対する内容を相当時間にわたって放送した場合、電波停止になる可能性があるのか」と問いただした。
高市氏は「1回の番組では、まずありえない」としつつ、「私が総務相の時に電波停止はないだろうが、将来にわたってまで、法律に規定されている罰則規定を一切適用しないということまでは担保できない」と述べ、重ねて電波停止を命じる可能性に言及した。
放送法や電波法には、総務相が電波停止を命じることができる規定があり、総務相経験者の菅義偉官房長官は「当たり前のことを答弁したに過ぎない」と擁護する。高市氏は答弁や記者会見で歴代総務相らの名を挙げ、答弁で電波停止に言及しているとも強調した。
しかし、福田政権時の2007年、増田寛也総務相は答弁で「国民生活に必要な情報の提供が行われなくなり、表現の自由を制約する側面もあることから極めて大きな社会的影響をもたらす。慎重に判断してしかるべきだ」とした。電波停止に政府は慎重な対応が必要だと強調する内容。大臣の権限をあえて前面に出した高市氏の答弁とは趣がまったく違う。
しかも、高市氏が電波停止につながる行政指導の根拠としている放送法4条の解釈自体に問題がある。
放送法は1条で法律の目的として「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」をうたう。4条では「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」など番組が守るべき規則を定めている。
安倍晋三首相は高市氏と同様、4条を「単なる倫理規定ではなく法規であり、法規に違反しているのだから、担当官庁が法にのっとって対応するのは当然」との立場を示している。
しかし、放送による表現の自由は憲法21条によっても保障されており、憲法やメディア法の専門家の間では、放送法4条は放送局自身が努力目標として目指すべき「倫理規範」とするのが通説だ。4条を放送内容に干渉できる根拠とし、放送事業者に不利益を課すことについては、憲法21条に抵触する疑いがあると指摘されている。
公権力による放送内容そのものへの介入で、「政治的公平」という漠然とした規定によって規制するのは、放送事業者の番組編集権を必要以上に制約して、萎縮させる可能性が強いと考えられるためだ。
安倍政権、自民党は、これまでもメディアの報道内容に神経をとがらせてきた。
14年衆院選では、安倍首相がTBSの番組出演中に内容を批判。自民党は各放送局に選挙報道の「公平中立」を求める文書を送った。昨年4月には、自民党の調査会が放送内容をめぐり、テレビ朝日とNHKの幹部を呼んで事情を聴取した。高市氏の発言はこれに続くもので、今回は与党からもたしなめる声が出ている。
石破茂地方創生相は9日の会見で「気に入らないから統制するとかそういうことをやると、民主主義とメディアの関係がおかしくなる」と指摘。公明の山口那津男代表も会見で「政府が内容についてコントロールするのは慎重であるべきだ」と語った。(相原亮、笹川翔平)
■米英は独立機関の所管
テレビ・ラジオ放送の事業者や番組、NHKなどについて定めた放送法、そして電波利用について定めた電波法は占領下の1950年に成立した。あわせて成立した電波監理委員会設置法とともに「電波三法」と呼ばれた。
政府から独立した機関として放送行政を担った電波監理委員会は、連合国軍総司令部(GHQ)の強い意向で設置された。ラジオ放送が戦時中、政府のコントロール下に置かれ、戦争に協力したという歴史があるためだ。
委員会は日本が主権を回復した52年に廃止され、放送行政は郵政省(現総務省)に移された。米国やイギリスなど多くの先進国で、放送は独立機関が所管しているのとは対照的だ。
電波法は、テレビ局が放送法などに違反した場合、総務相が電波の停止や放送免許の取り消しなどができるとしている。しかし、これまで放送内容によって行政処分が出されたことはない。
放送法の解釈・運用については、政府も放送局の自主性を尊重する見解をとってきた。それが変わったきっかけは、テレビ朝日報道局長の発言を自民党などが問題視した93年の「椿(つばき)発言」だった。これを機に、政府は放送法違反を理由とする行政処分に慎重だった見解を変えた。
当時の江川晃正郵政省放送行政局長が「違反があった場合は、電波を止めるなどの措置がとれる」と記者会見で説明。衆院逓信委員会でも「(政治的公正は)最終的に郵政省において判断する」と答弁した。これ以降、それまでほとんどなかった放送事業者に対する行政指導が増えていった。
放送倫理・番組向上機構(BPO)は昨年11月に意見書で、放送法4条について「放送事業者が自らを律する『倫理規範』であり、総務大臣が個々の放送番組の内容に介入する根拠ではない」と述べ、高市総務相が4条違反を根拠としてNHKに行政指導したことを批判した。(星賀亨弘)
■「表現の自由を制約する側面ある」
増田寛也総務相の答弁(2007年11月衆院総務委) 自主的な放送事業者の自律的対応ができない場合には電波法の76条1項の適用が可能だと思う。ただ、行政処分は大変重たいので、国民生活に必要な情報の提供が行われなくなったり、表現の自由を制約したりする側面もあることから、極めて大きな社会的影響をもたらす。したがって、そうした点も慎重に判断してしかるべきだと考えている。
■「極めて慎重な配慮のもと運用すべきもの」
平岡秀夫総務副大臣の答弁(2010年11月参院総務委) 総務大臣は、業務停止命令、運用停止命令を行うことができるが、放送事業者の自主規制に期待するのでは法律を遵守(じゅんしゅ)した放送が確保されないと認められるなど、極めて限定的な状況にのみ行うこととしている。極めて慎重な配慮のもと運用すべきものだと従来から取り扱っている。
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