http://www.asyura2.com/16/senkyo200/msg/926.html
Tweet |
衆参ダブルで違憲立法だ この選良の執念の訴えを聞け
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2016/02/21/post-670.html
サンデー毎日 2016年2月21日号
倉重篤郎のサンデー時評 連載87
国会が浮かれている。
何に浮かれているか? 衆参ダブル選挙モードに浮かれている。
安倍晋三首相からすれば、面白くてたまらない政局だろう。この野党の弱体ぶりでは、参院だけの選挙でも自民党は単独過半数(122議席)を回復するであろう。あの1989年の「山が動いた」選挙から27年ぶりの快挙となる。
さらに色気を出して衆参ダブルに持ち込めば、その相乗効果による議席の上積みが期待でき、改憲勢力だけで発議に必要な3分の2(参院の場合162議席)まで届く可能性も見えてきた。しかも、その決断は急ぐ必要もない。5月まで待って、経済状況、その他を勘案して決めればいいことだ。
安倍氏周辺のこういった思惑が、国会全体を染め上げている。議員たちは腰が据わらず、ダブルを念頭に地元を走り回っている。この時代の節目の大事な時期ではあるが、国権の最高機関たる立法府の威厳と風格がどこにも見られない。ただ票亡者たちの権力におもねる妄執のみが浮き上がる。
そんな中、ある小さな、だが、政局を切り裂く声が響いてきた。
その選挙、ちょっと待った。選挙法そのものが違憲立法である。安倍さん国民に陳謝せよ。という。
声の主をただした。
参院議員の脇雅史氏(71)である。前自民党参院幹事長。参院の1票の格差是正を検討する協議会の座長として、大胆な抜本改革案を取りまとめたが、自民党内の抵抗勢力につぶされ、それに抗議して参院自民会派を離脱した(20015年7月)人物だ。我がコラムでも二度ほど登場していただいた。
脇氏曰(いわ)く。衆参両院の1票の格差訴訟では最高裁からこの5年間で5本(衆院3本、参院2本)の違憲状態判決が出たが、立法府は違憲立法状態で居直っている。
特に、直近の15年11月25日の衆院に対する最高裁判決は深刻である。それまでの判決がなかなか抜本改善を図らない国会の不作為に対して違憲状態を指摘していたのに比して、今回は国会がこれによって違憲状態を脱したと胸を張っている作為(13年6月成立の衆院定数0増5減法)そのものに対して、それでもダメだと「ノー」を突き付けられたからである。
◇法治国家の成り立ちを問う! 時の流れに左右されない根源的な批判
確かに、安倍氏は首相として14年1月から2月にかけて3回、「(0増5減法成立により)違憲状態は解消されたものと考えている」と答弁、その解釈に基づき同年12月解散総選挙に踏み切った。
脇氏によると、15年判決が出た以上は、これは内閣による明確な憲法99条(憲法尊重擁護義務)違反になる。内閣の憲法違反という前代未聞の事態に対しては安倍氏が国民に、あれは違憲立法でしたと陳謝、法案審査した内閣法制局長官の責任を問うべきだ。「ほっかむりはおかしい」というのだ。
参院に対してはもっと厳しい。
衆院はまだ最高裁判決が例示した「2倍以内」という法理に沿って収めようとしたからまだ救いがある。だが、参院が15年7月28日に成立させた10増10減案は直近の14年11月26日判決の法理を確信犯として逸脱している。つまり、10増10減案の背景には、投票価値の平等は衆参とでは違う、という認識があるが、脇氏によると、これは14年判決にある「参院は衆院と共に国権の最高機関として適切に民意を国政に反映する機関としての責務を負っており、参院選挙であること自体から直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見いだし難い」とする法理に反する、というのだ。脇氏に言わせると参院は判決にたてついた、ということになる。
立法府が最高裁判決をそれほど軽視していいのだろうか。これが脇氏の問題意識である。立法府の中には、いまだに最高裁何するものぞ、国民に直接選ばれた立法府こそが一番との意識がある。しかし、日本は三権分立であり、憲法81条は、最高裁を法律が憲法に適合するかどうかを決定する終審裁判所と定めている。その最高裁が違憲性をかくまで声高らかに、しかも何度も明確に指摘しているテーマは他にない。しかも、ついにその指摘は時の政権が合憲と言い張る法制までをターゲットにするに至った。1票の価値をめぐる50年にわたる司法vs.立法の闘いがついに抜き差しならぬ新しい局面に入った、というのである。
このままだと法治国家としての体面を失う。まずは、中国に対しこれ見よがしに日本こそ法の支配を体現する国家であると言えなくなる。しかも、選挙に入れば少なくとも参院は無効判決が出てくる可能性がある。司法はその性質上、引き返せない。むしろ、その確信犯的な違憲行為に対してより厳しい判決を出すだろうと予測する。
ただ、この問題の重さを理解している人は少ない、と脇氏は言う。年が明けて各党や衆参両院議長への公開質問状を、内閣に対しては質問主意書を順次出してきたが、同僚議員の反応もメディアの関心も薄い。ある意味たった一人の異議申し立てである。
この議論は重要だ、というのが私の直感である。安倍政権は例の安保法制で、1959年の砂川最高裁判決をもって、よって立つべき法理だとした。それだけ大事な最高裁判決をこと1票格差で軽視するわけにはいくまい。ダブル選挙の可能性が依然として高く、改憲が争点になることを考えると、そもそもの選挙法の違憲性という問題がまずは議論されるべきだろう。
脇氏はこの選挙で引退する。「15年11月判決が事実上違憲立法と認定しているのに皆さん何も感じてない。これではだめだと思い、最後の仕事にしようと思った」
選良への期待とは、時の流れに右往左往するのではない。毅然(きぜん)と根源的な批判をする気骨である。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK200掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。