http://www.asyura2.com/16/senkyo200/msg/603.html
Tweet |
甘利経済再生相辞任に際し、安倍政権をほめ殺す
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2016/02/14/post-651.html
サンデー毎日 2016年2月14日号
倉重篤郎のサンデー時評 連載86
かつて、ほめ殺し、というのがあった。政治家を一見ほめているようで、実は批判している、という皮肉っぽい政治手法である。
安倍晋三政権に対して、このほめ殺しをしてみようかと思う。なぜならば、安倍政治には二つの要素があるからだ。一つは、敵ながらあっぱれ、とでもいうか、歴代政権がなしえなかったことをいくつも実現している面。もう一つは、そのことが結果的に日本国のこれまでの歩みを逸脱し、国家国民を破綻に導く可能性がある、というリスキーな面である。
その1。安倍さんは盟友思いである。1月28日辞任表明した甘利明経済再生担当相を、その勲功によりかばい続け、自らの支持率の貯蓄をはたいても、メディアからのバッシングに耐え忍ぼうとしてきた。メディア報道に対し、そんなことで一国の政治が動かされるわけにはいかない、との毅然(きぜん)たる姿勢も見受けられた。
その新味や良し。ただし、その反論の姿勢がいただけない。安倍氏側から聞こえてくるのは、「(甘利氏が資金提供者側の)罠(わな)にはめられた」(高村正彦氏)、「喧嘩(けんか)両成敗」(山東昭子氏)といった論調であった。つまり、資金提供を受けた政治家もさることながら、罠にかけた提供者側にも問題がある、あるいは、どっちもどっちで、片方のみ批判を受けるのはバランスを欠く、との指摘である。
これはおかしい。両者の間では圧倒的な権力、権限の差がある。資金提供者は自らに力がないからこそ力のある政治家に金品を貢ぐのである。政治家は、選挙によって選ばれることにより付与されるその権力を多数の幸福、公共の福祉のために使うべきであって、一業者の目の前の利益のために行使すべきではない。政治家にはその要請を蹴る選択肢もある。
「罠にはめられた」と被害者然としていたこと自体が変だ。世の中にはおとり捜査というものもある。政治家はあらゆる場面でチェックされることを覚悟すべきである。それだけの重責なのである。両成敗ではない。あくまでももらった政治家側に、より高い罪、道義的責任を負わせるべきである。
ここで処理を誤ると、日本の政治が守り続けた政治家のあり方、つまり、政治家は自らが付与された公的権力の行使を私的なものに流用してはならない、という大原則を逸脱する前例となり、安倍政権だけの問題ではすまなくなる。
◇安倍的改革の後に何が来るのか? それを見据えた議論を
その2。安倍さんは政局運営が巧みである。確かに、自民党内を安倍一極体制で統治し、公明党と大阪維新を競い合わせ、かつ、ダブル選挙があるかもしれない、というブラフを手に解散風を吹かしながら国会運営のかじ取りをするやり方は、ある意味、見事である。
ただ、これもそれぞれに背景があり、かつ問題を抱えている。総理総裁への権力一極集中はあくまでも現行の選挙制度のおかげだし、与党志向の強い政党を利用した政局運営は、翼賛政治に近い政体をも生み出すであろう。権力内部で制御がきかなくなることである。現に安倍政権内部では、与党内非主流派勢力の不在という前兆現象が出始めている。この間の重要政策をめぐる与党内議論を振り返ると相当深刻な段階にきている。
好き勝手に解散権を弄(もてあそ)ぶのもいかがなものか。解散には憲法上2通りある。衆院で不信任案が可決された時(69条)と、天皇の国事行為としてのもの(7条)である。日本では時の首相が自らにとって都合のいい時に行使できる7条解散が圧倒的に多いが、ドイツでは、解散は議会で不信任案が可決された場合に限られており、イギリスでも、2011年に「議会任期固定法」が成立し、首相による解散権の行使が封じられた。日本でも国民が選んだ4年間の任期を極力全うさせるべきである。選良たちに選挙の心配をさせないで徹底的に議論させる。その熟議の中にこそ新しい知恵を得ることができる。
その3。安倍さんは、国家の安全保障権限強化策でこれまでにない法制度を作り上げた。特定秘密保護法制定、武器輸出の原則解禁、安保法制制定である。歴代保守政権からすれば、一内閣一課題級の大改造だった。一貫してこの体制整備を進めてきた外務官僚からすれば、安倍氏こそが彼らの悲願を達成してくれた大宰相になろう。
だが、ここにも陥穽(かんせい)がある。この一連の国家改造は、あの戦争体験という大きな代償から出てきた知る権利の重視、不戦の意志化といった戦後の日本の歩みから大きく外れるものであった。中国の台頭に対する当面の抑止力強化策にすぎず、そこには中長期的視点と日本人のコンセンサスが欠落している。それに加え、自衛隊にグローバルな米軍の後方支援を可能にした新法制は、将来の日本を戦闘行為に巻き込む余地を残した。
その4は、アベノミクスである。安倍さんのすごさは歴代政権ができなかった金融の異次元緩和であった。これも円安と株高によって成功したように見える。
だが、その後のサイクルが回らない。企業収益が給与や投資に振り向かないのだ。それだけならまだいいが、金融緩和から卒業する時、つまり、日銀が年80兆円という国債購入をやめる時の負のシナリオについては一切言及がない。
政局運営、安保、経済政策。いずれも現在は何とかカムフラージュできているが、将来的に大きな反動がある。国民的に大きなマイナスを背負う話ばかりである。
確かに、20年の東京五輪までは問題点が表面化しないかもしれない。経済的にはそれなりの実需があるだろうし、政治的にも国民的な求心力が継続するからである。ただ、その後に何が来るのか。そこも見据えた議論をしないと安倍政治全体を語ることにはならない。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK200掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。