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「政権へのダメージを最小限に止めよ」甘利事件の捜査シナリオを読み解く
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47645
2016年01月29日(金) 伊藤 博敏「ニュースの深層」 現代ビジネス
■この国では政治がすべてに優先される
甘利明・経済再生担当相のサプライズ辞任で、数々の疑惑解明はどうなるのか――。
『週刊文春』が、1月21日発売号で都市再生機構(UR)への甘利事務所の口利き疑惑を報じて以降、指摘されていたのは、あっせん収賄罪、あっせん利得罪、政治資金規正法違反罪などに抵触しているのではないか、という点だった。
既に、市民団体などが検察への刑事告発の準備を進めており、特捜部が受理して捜査する流れとなるのは必至である。
「官邸の意向」は、接待饗応の証拠が残り、政治資金収支報告書への虚偽記載は免れない以上、立件されるのは避けられないものの、秘書までで、「甘利氏には罪が及ばないようにする」と、いうものだった。
また、もうひとつの「官邸の意向」は、推測ではあるが、週刊文春に告発した建設会社「薩摩興業」の一色武氏(62)を何らかの罪に問うこと、ではなかったか。
安倍晋三政権の柱のひとつである甘利氏を失いかねないと危機感を持つ官邸が、「なにかと政権に批判的な週刊文春と組んだ事件屋を許さない」と発想することは、容易に想像ができる。
2010年に発覚した証拠改ざんの大阪地検事件以降、「特捜改革」に取り組んでいる検察は、「司法取引」を含む刑事司法関連法案の早期成立を願って、政治に対して従順だ。官邸と一体化しているといっていい。
医療法人「徳洲会」の公選法違反事件では、捜査過程で発覚した猪瀬直樹都知事への5000万円供与を、都知事辞任と引き換えの公選法違反での略式起訴で済ませ、大手化粧品会社の代表から8億円を提供された渡辺喜美みんなの党元代表については、「個人の借入」だったとして不起訴処分にした。
優先されるのは政治であり、捜査によって政治日程が狂ったり、国家秩序が揺らいだりすることは許されない。検察は、「司法取引」の導入で新しい捜査の形を確立するまで、今の「死んだふり」を続けるのだろう。
■怪しすぎた告発者
もともと政治には弱い警察は、菅義偉官房長官のもとで秘書官を長く務めた幹部が警視庁の中枢にいて、同時に警察出身の杉田和博官房副長官が目を光らせており、「官邸の意向」が通りやすい。
そういう意味で、「検察は秘書、警察は告発者を狙う」という捜査シナリオが、疑惑発覚の直後から想定できた。これは官邸の力の証明で危険な傾向だが、「捜査で告発の価値を減じさせる」という意向が通るぐらい告発者が怪しかったのも事実だ。
不動産会社を経営していたことがあり、今は薩摩興業の総務担当者という肩書きの一色氏だが、一方で「運動家」としての一面を持つ。ひとつは差別と戦う人権センターの副理事長の肩書きであり、もうひとつは北方領土の返還運動などを進める右翼団体の総括参謀という肩書きである。
だが、両団体とも活動歴は希薄で、人権センターの方は創立者との個人的関係をもとに名乗っていただけ。右翼団体の方も、活動歴の長い会長の力と存在感を利用しただけで、右翼活動には熱心ではなく、既に除名処分を受けている。活動家というより事件屋である。
そして、薩摩興業には、政治家や複数の右翼団体などを使って、千葉県企業庁から補償金を受け取ろうとした“前史”があった。薩摩興業が補償を求める現場は、千葉県白井市の千葉ニュータウン北環状線建設工事。最初は企業庁だったが、今はURが委託を受けて工事を進めている。
右翼団体は3年前に解散。元会長が語る経緯は以下のようなものだ。
薩摩興業の代表が、8年ほど前、資料を持って説明に来た。「産廃が埋まった土地に道路を建設しようとしていて、立ち退きを迫られている、補償金を取って欲しい」という。ウチと台湾問題に取り組む団体との二つで活動を開始。活動費として薩摩から渡されたのは300万だった。
閣僚歴のある大物代議士に口利きを頼んだら、「5億円」は取れるという。だが、企業庁は「無理です」と、にべもない。結局、諦めて、我々は手を引いた――。
この時、運転手役で元会長と現地に赴いていたのが一色氏。その後、右翼団体から離れ、薩摩興業の総務担当社員として、URとの交渉を任された。
■加速した献金と接待
甘利事務所の秘書をフィリピンパブなどの接待で篭絡する手口や、領収書を全て取り、会話は秘密裏に録音する手法は報道されている通りだが、神奈川を中心に活躍する事件屋としての“評価”は、それほど高いものではなかった。
甘利事務所に口利きを依頼、2013年8月、URから2億2000万円の補償金を手にしたのは、おそらく初めてといっていいほどの成功事例だろう。そこから「二匹目のどじょう」を狙って献金と接待が加速する。
「補償の上積み」を求めて、甘利事務所のキャッシュディスペンサーとなることを厭わなかった一色氏が、親しく秘書たちとつきあいながら、なぜ週刊文春に告発を始めたのかは謎である。
文春記事(第2弾の1月28日発売号)によれば、最初に一色氏に接触したのが昨年8月27日で、資料をすべて渡されたのが今年1月ということだから、一色氏はギリギリまで手の内を明かさず、週刊文春は証拠をすべて握ってゴーサインを出したことになる。
その過程で一色氏に、甘利事務所への揺さぶりに週刊文春を使う意図はなかったか。あるいは薩摩興業代表との連携はないか。
記者会見で甘利氏は、同代表から秘書に次のような口裏合わせの“誘い水”があったと明かした。
「(URとのトラブルに)大臣が口利いてうまくなるようであれば、(一色氏が)『ありもしないことを言った』と言えば済む」
「(一色氏が)『解決すれば自分が出て虚偽を言ったと頭を下げる』と言っている」
事実なら、経費を膨大に使いながら成果の出なかった一色氏が、週刊文春を使って世間を騒がしつつ、甘利氏を動かして30億円とも言われる補償交渉をまとめようとしたことになる。一世一代の大芝居だ。
むろん、それが通るわけもなく、一色氏の動機も含め、甘利事務所に対し、具体的にどんな工作がなされ、それがなにか犯罪に当たるのかを徹底検証する必要がある。
サプライズ辞任によって、政局を招かないように、特捜部が秘書の事件で小さくまとめ、告発者の事件を警察が扱うことで甘利氏への影響を減じさせる、といった国策的な予定調和事件にする必要がなくなった。
だが、疑惑は広がるばかりである。
■これは、権力者の犯罪である
URが28日明らかにしたところによれば、13年6月から16年1月6日までの間に、UR職員が甘利氏の秘書と面談したのは12回に及び、異例の回数である。あっせん利得罪の構成要件は、「不正行為の有無にかかわらず、口利きで財産上の利益を得た場合」である。
ただ、立件には「議会で取り上げるぞ!」といった具体的な影響力の行使が必要で、それがハードルを高くしているが、政界大物の事務所に、これだけの回数、職員を呼ぶこと自体が脅迫であり、影響力の行使だろう。
高い支持率もあって、官邸の力は強く、捜査当局ばかりではなく、メディアを従わせる力もある。一色氏へのネガティブキャンペーンが始まると同時に、「週刊文春も共犯にできるんじゃないか」という声が官邸筋から漏れ伝わった。また、そうした流れに沿うように、読売新聞は今回の告発には「わなに陥れる意図があった、といわてもやむを得ない」としたうえで、「週刊文春の取材姿勢にも疑問がある」(1月27日付)と、批判した。
忘れてはならないのは、これが権力者の犯罪であることだ。特異な手法を用いた一色氏に、“秘密”の思惑があったかも知れないが、大物政治家の「間違いのない腐敗の事実」をつかめば、おちょぼ口で握りつぶすのではなく、公開するのがメディアの務めだろう。
そして、予断なく犯罪を解明するのが捜査当局の務め。原点を問われる事件となった。
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