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自民党が選挙改革に猛反発する「呆れた理由」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47628
2016年01月28日(木) 鈴木哲夫 現代ビジネス
■「絶対阻止」の情けない理由
年明けの1月14日、「ダブル解散」の可能性が囁かれだしたさなか、衆議院議長の諮問機関である「選挙制度に関する調査会」が、衆議院の定数削減案を答申した。いわゆる「一票の格差」を是正するために、いまある295の小選挙区を7つ増やし13減らすなど調整し、現在の定数475(比例含む)から10減の465にするというものだった。
答申を受けた大島理森議長は、さっそく1ヶ月をメドに各党が党内議論を行って見解をまとめるよう指示。その後速やかに各党協議に入る方針を打ち出した。
ところが、これに強く反発した党がある。与党・自民党だ。理由は実に明瞭。「選挙区を減らすことは、議員にとって死活問題」という、あまりにも身勝手なものだ。聞けば聞くほど、「それでも政治を預かる与党か」とがっかりする。
減らされる対象となっている選挙区の自民党中堅議員が鼻息荒く、「反対」の理由を明かす。
「減らされる対象となっている13の地域は、有権者の年齢層が高く、保守層が多い。その地域から選出されている議員は、ほぼ全部が自民党議員だ。答申案のとおりに選挙区を減らすと、自民党の現職が選挙区と地位を失う、ということだ。これまで長い時間と労力、そして金をかけて地盤を築いてきたのだから、おいそれと手放すわけにはいかない。絶対阻止するしかない」
長く政治取材をしてきた私も、「地盤を作る」ことがどれだけ大変かを知っているつもりだ。この言い分も分からないでもない。
それでもやはり「ちょっと待て」と言いたい。そういう観点から、定数削減の問題を議論するのは明らかに間違っている。
■あの約束を忘れているのか
そもそも「定数削減」の話はどこからきたものか。
さかのぼること3年前の2012年11月。民主党政権の支持が落ちるところまで落ち、安倍晋三氏を新総裁に選出した自民党が勢いを増し、政権奪取が間近に迫っていたころだ。当時の野田佳彦首相と安倍総裁の間で繰り広げた党首討論は、忘れようと思って忘れられるものではない。
「解散総選挙をしてもいい。その代わり約束して欲しい。国民に消費増税を求める代わりに、どちらが政権をとっても来年の通常国会で衆議院の定数削減をやると約束できるか」
野田首相は鬼気迫る表情で、こう問うたのだ。これに対して安倍総裁は「やりましょう」と応じて、場内は与野党から歓声や拍手が起こり騒然とした。
このやり取りは潔かった。議員も痛みを自らに課そう―。毅然とした党首討論だった。
あれから3年経つが、あの時のトップ同士の約束はいまだに果たされていない。
野田・安倍両トップや議員たちが、なぜ声高に「定数削減」を主張したのか。それは当時、民自公の三党が「社会保障と税の一体改革」を進める中で、消費増税など国民の負担が増えるのに対して、議員自らも身を切る姿勢を示そうではないか、というものだった。
増税は、ないならないほうがいい。しかし、民自公はあくまでも消費増税を通したかった。そこで彼らが国民を説得するために考え出したレトリックが、「国民に痛みを求める以上、議員自身が率先して身を削る」だった。国民はそれを信じて消費増税法案を呑んだという側面もある。
これが「定数削減」の出発点なのである。
■負担を強いられるのは国民ばかり
さて、国民への消費税負担は、その後3年間で予定通り着々と実現している。税率は8%にまで上がり、17年には10%にまで上がる予定だ。また、国民へは他の痛みも加わっている。財政健全化を名目に、社会保障は新年度予算案でも3900億円削られ、高齢者の医療費負担は増加。要介護者の施設入居などの条件も厳しくなってきた。
にもかかわらず、国民に啖呵を切った「定数削減」はなかなか進まない。おまけにようやく出た答申案にも目の色を変え、「身を切る」どころか「自分の身を守るために反対」しているのだから、もはや開いた口が塞がらない。
1月26日の衆議院本会議の代表質問では、一貫して定数削減を優先政策課題にしてきた維新の党の松野頼久代表が、壇上で安倍首相にひときわ強い口調でこう迫った。
「(答申の)10減など少ない!」
これに拍手で応えたのは一部の議員のみ。3年前の党首討論の場で、「そうだ!そうだ!」と叫んでいた与野党の議員たちは、一体どこにいったのか。特に、自民党議員席は水を打ったように静まり返っていた。「定数削減」などもうどうでもいいのだ。情けなくなった。
自民党幹部は、もっともらしい反対理由をこう語った。
「我が党に最も影響が出る以上、答申をそのまま受け入れるわけにはいかない。いろんな案が考えられるんじゃないか。一つは小選挙区の定数はそのままにしておいて、区割りのほうをうまく変えて一票の格差を是正する方法。この場合、定数削減は比例だけでいい。
もう一つは議論自体をもう少し先送りしてじっくりやるという方法。この2月には国勢調査の結果も出るので、たとえばその人口分布を見て一票の格差を再チェックし、向こう1年ぐらいかけて議論し直すのもありだ」
一方で、自民党内にも良識的な声もある。あるベテラン議員が言う。
「いまの自民党政権が本当にいいのかどうか。そもそも単独で300議席近くも取ると緩みが出たり、中にはどうしようもない連中も紛れ込んでしまう。持論だが、自民単独で270議席ぐらいがちょうどいい。
270議席あれば国会の委員長ポストなどは全部取れるし、少しは謙虚にもなる。長く続く与党の形はそれぐらいの所帯がいいんだ。だとすれば、現状から20や30ぐらい定数が減ったって構わない。身を切る姿勢を見せるためにも、政治を引き締めるためにも、答申案の10減じゃ足りないんじゃないかと思う。ただし、こうした考えは残念ながら少数派だ」
■解散カードは握っておきたい
安倍首相は、「答申を尊重していく」と前向きに答えてはいる。しかし、そこには狙いがある。「単に解散カードを担保するためだけが目的」と民主党幹部は次のように批判する。
「安倍首相は基盤を盤石にするためにダブル選挙を仕掛けるなど解散も自分の手の内に持っておきたい。しかし、定数削減を実施せず、一票の格差をそのままにして解散総選挙をやったら、完全に憲法違反となる。だから、安倍首相は『10減はやる。そして、解散カードは握っておく』という考え。動機が不純です。本気で定数削減をやるなら、安倍首相は20減とか30減とか言えばいいじゃないですか」
私はこの「定数削減」問題は、議員の数を減らすことで歳出を減らすという単なる財政的な観点や、「一票の格差を是正し、憲法違反状態をなくす」ということよりも重要な目的があると思う。
それは、「政治の信頼」を取り戻すということだ。
自分の身一つ切れない議員に、はたして国民は政治を任せることができるのか。「定数削減」をやれるかどうかは、安倍自民党の合否を判断する指針になる、と言っても過言ではない。安倍首相が決断し、10減よりもさらに踏み込んだ議席減の大ナタを、トップダウンで振るうことができるか。自民党議員が与党の責任として「矜持」を示せるか――。
「定数削減」は、一見地味ではあるが重要な政治テーマだ。これからも厳しく見ていく必要がある。
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