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甘利スキャンダルで思い出す小泉政権の「年金未納」という策略−(田中良紹氏)
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21st Jan 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
総額3.3兆円の平成27年度補正予算案が
2日間の代表質問と衆参それぞれ3日間の委員会審議を経て成立した。
1億総活躍社会を実現するためと称して低年金の高齢者に3624億円を支給することや、
TPPで打撃を受ける農家への支援策に3403億円が盛り込まれるなど、
野党から選挙対策の「バラマキ」と批判される予算案である。
その議論の中身の低調さを書こうとしていたら、
甘利経済再生担当大臣の「政治とカネ」のスキャンダルが飛び出した。
今年の世界はサウジとイランの断交、北朝鮮の核実験、
止まらぬ原油安・株安と「激震」続きだが、
「一強多弱」の日本政治も何が起きるか分からない「大乱」の様相を帯びている。
21日の参議院決算委員会では野党各党が甘利大臣を追及したが、
大臣は「記憶が曖昧」などと答弁して説明を先送りした。
おそらく甘利大臣はスキャンダルを暴露した側と週刊文春がどれほどの材料を握っているか、
また暴露の真意が何かをまだ探り切れていないのではないか。
フーテンも記事を読んで暴露の真意を図りかねた。
記事には「カネをたかられて憤りを感じたから」と書かれているが、
それを素直に信じる気にはなれない。
安倍政権の中枢を撃つ暴露を決断するには何かそれ以上の理由があるはずだ。
甘利大臣はそれを探るための時間稼ぎをしているようにフーテンには見える。
記事を読む限り甘利大臣は政治資金規正法違反とあっせん利得処罰法違反に当たる可能性が高い。
しかし暴露した側が甘利大臣側とのやりとりをすべて録音している事や
口利き料の50万円の札の番号が分かるように写真に撮っている事などに
フーテンは用意周到すぎるという引っ掛かりを感じる。
「多弱」の野党はスキャンダルに飛びついて追及を強める構えだが、
追及するには記事に頼るだけでは駄目である。
この時期に何を目的に暴露されたかを独自に探り出す調査をする必要がある。
そう言いたくなるのは、かつて年金未納問題で民主党が自民党を追及した挙句に
それがブーメランとなって自滅した例を思い出すからだ。
2004年小泉政権下の通常国会には年金法改正案が上程されていた。
国民の負担は増えるのに受給額は減るという法案である。
国民の理解を得るのは極めて難しかった。その時に年金未納問題は起きた。
小泉内閣の中川昭一経済産業大臣、麻生太郎総務大臣、石破茂防衛庁長官の3人に
年金未納があることが発覚した。
その夏には参議院選挙が予定されていた。
これに民主党の菅直人代表が飛びつく。
選挙勝利のため当時流行していた「だんご三兄弟」という唄に引っ掛け、
「未納三兄弟」を激しく攻撃する。すると毎日のように与党議員の未納が明るみに出て、
テレビと新聞はそれを連日激しく断罪する。
国民から年金法改正案への関心が薄れ、年金未納政治家に対する怒りが日本中に渦巻いた。
そこで菅直人氏自身の未納が発覚したのである。
本人は必死に否定したが、福田康夫官房長官にも未納が発覚し、
福田氏が責任を取って辞任すると、風当たりは官直人氏に集中した。
テレビキャスターから「いつ辞める」と迫られ、菅氏も代表辞任せざるを得なくなる。
大物政治家が辞めれば国民の怒りは薄らぐ。
それを見計らうように小泉総理の未納が公表されたが、もはや国民が辞任を迫る事はなかった。
そして国民の怒りが未納政治家に注がれている間に肝心の年金法改正案が成立していったのである。
フーテンは小泉政権の三閣僚の未納が発覚した時点から
誰がその情報をメディアに漏らしたのかを考えていた。
未納情報を知りえるのは霞ヶ関だけである。つまり政府が流した情報にメディアは踊らされ、
それに民主党が踊らされ、小泉総理は菅民主党代表の首と福田官房長官の首を取って、
成立困難と思われた年金法改正案を成立させたのである。
菅直人氏は反省のために頭を丸めて四国巡礼の旅に出た。
旅から帰京してフーテンが経営していた「国会テレビ」に出演した。
その時「政府の策略にまんまと乗せられたのではないか」とフーテンが問うと、
菅氏は憮然として「マスコミが正確な報道をしてくれないから困る」と言った。
フーテンはマスコミの情報に頼るような政党に権力を握る資格はないと思った。
無論、年金未納問題と今回の甘利スキャンダルとは質が異なる。
年金未納は犯罪ではないが今回の問題は明らかに犯罪を構成する。
また情報をメディアに流したのも政府ではない。
しかし参議院選挙を前にした野党が飛びつきたくなる政権与党の大失態である。
それに目が集中すると、本当に大事な問題の追及がおろそかになる可能性がある。
その思いがフーテンの中にある。
フーテンは今回本当は「子供に対するバラマキ」と「高齢者に対するバラマキ」のどちらが
日本の未来を明るくするかを論じようと思っていた。
しかし甘利大臣のスキャンダルが勃発したためそちらの話が長くなった。
「バラマキ」はまたの機会に書く事にするが、参議院選挙を前にした通常国会で、
政権運営が難しいと思われる時に、権力は誰もが考えない策を弄した例がある事を忘れないで欲しい。
つまり今の日本政治は「一強多弱」の安定した状態にある訳ではない。
安倍政権はとうの昔から崖っぷちを走っていて、
少しでもバランスを崩せば崖下に転落する。
まして世界から吹き付ける風向きは複雑で舵取りは大変だ。
「大乱」が迫る時にはどんな策略でも生みだすのが権力である事を
野党と国民は知らなければならないのである。
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