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ダブル選打つか否か 小沢一郎氏と考えた
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2016/01/31/post-615.html
サンデー毎日 2016年1月31日号
倉重篤郎のサンデー時評 連載84
安倍晋三首相は、7月にダブル(衆参同日)選挙を打つか否か。
今政界で最もホットな話題だ。
来年4月に消費税を10%に上げることを前提にすれば、確かに衆院の解散・総選挙の時期は限られてくる。増税後少なくとも1年間はできない、総裁任期切れ近くでの追い込まれ解散はしたくない。となると、7月のダブルか、秋以降の臨時国会かにしぼられる。
となると、やはりダブルではないか。半年間に2度も国政選挙を構えるのは現実的ではない。何よりもカネがもたない。5月には伊勢志摩サミットがあるし、内閣支持率も復調気味である。野党勢力の一本化も難航している。政権側からすると、こんな好機はない。
ただ、いくつかのネックもある。その最大のものは、連立を組む公明党、というよりもその支持母体である創価学会の意向だろう。今の自民党は全国で700万と言われる公明・学会票なしではとても戦えない政党になっている。一方で、学会は一貫してダブルに対しては反対姿勢を取ってきた。ダブルになると投票行為が複雑化して、組織的な対応がしにくくなる、というのが理由とされている。
そこをどう見るべきか。公明党ウオッチャーで平成随一の政局仕掛け人・小沢一郎氏に聞いた。
やはりダブルとみてる?
「野党がこんな状態だし、創価学会は今回は状況から判断して(ダブルを)受け入れざるを得ない感じがする。だって、差しでやっているじゃない。官邸と学会で」
昨年、消費増税の軽減税率をめぐり菅義偉官房長官と創価学会政治担当の佐藤浩副会長が接触している。
「そこ(ダブル選)まで話しているよ。差しでやっているんだもの。宗教団体と」
これは小沢時代にもなかった?
「(学会幹部とも)懇親の付き合いはあったが、個別政策を差しでやることはなかった。僕には市川(雄一元公明党書記長)がいた。今は佐藤と菅だ。あまりにもあからさま。政教一致になっちゃった。直接やらなければ、互いに信頼できないということだろう」
ダブル選になると結果は?
「野党がこのままなら、衆参共に議席の3分の2を(改憲勢力で)取られる可能性がある。これは僕の直感だ。徹底してやられる。菅君は政権維持のためには政敵に対して権力の行使を躊躇(ちゆうちよ)しない」
◇「彼は思慮分別のない心情右翼」 小沢一郎の安倍首相評
安倍政権は彼の力が大きい?
「これまではプラスに働いてきた面が多かったが、プラス、マイナス両方だ。権力というのは強い面もあるが脆(もろ)い面もある。ワンマン社長がいっぺんにひっくり返ることもある。猛き者もついには滅びる。祇園精舎の鐘の声よ」
「経済状況が悪化。株だけじゃない。実体経済そのものが悪い」
「普天間移設も政府が強行すれば物理的対立になり、血の雨が降る可能性さえもある」
24日投開票の宜野湾市長選は?
「(翁長雄志(おながたけし)知事の応援する新人が)勝つんじゃないか」
4月の北海道5区補選は?
「今の状況じゃ勝てない。民主党が自分達だけで候補を立て、皆応援しろという態度では無理だ。民主党が自分を捨て皆を包含し、一つにまとめて戦うという形にしなければ」
どう一つにまとめる?
「オリーブの木(1995年、イタリアで12の中道・左派政党が緩やかな連合体を組み総選挙で右派政権に勝利)方式の新党だ。共産党は入れないが選挙協力はする。これしかない。既存政党はそのまま残し二重党籍にする。法的には何の問題もない。民主党の中でも心ある人達はわかっている。だが、幹部の人達が決断できない」
「(オリーブの木ができれば野党は)圧勝する。政権がころんと変わる。そういう選挙制度を僕が作った。参院も過半数を取れる」
「そうするとダブルをしないかもしれないが、いずれにせよ安倍首相は参院で負ければ退陣だ」
オリーブの木はどういう政策を軸にまとまる?
「憲法を守りましょう、でいい。相手が改憲だからこちらは立憲、安保法制はやめましょうだ。それは誰も反対ない」
その一点では弱い?
「そんなことを言うのは日本のマスコミだけだ。昨年暮れの仏地方選を見てほしい。極右を防ぐため、共産党までが右派に票を入れた。民主主義国家では当たり前。日本ではすでに極右政権ができてしまったのだから、選挙はそれを倒すためのベターな選択だ」
「3分の2取られたら日本の明日はない。野党は壊滅だ」
共産党だけは残る?
「最後は共産党もやられちゃう。非合法化だな。あんたは笑うけど、今、安倍政権がどれだけのことしている?」
特定秘密保護法から集団的自衛権まで。
「そうだよ。それが3分の2取ったら何をすると思う」
小沢さんは剛腕と言われたが、安倍さんの方が剛腕?
「剛腕というのではない。僕は民主主義者だよ。憲法ルールをきちんと守る。彼は思慮分別を欠く心情右翼だ。彼はもてはやされているわけではない。権力にへつらうだけだ」
そもそも、小沢さんが言えば言うほど野党結集が難しくなる?
「個人の問題ではない。天下国家のこと。僕一人はずれて全部がまとまるならそれでいい」
この小沢氏の見立て、どう思われるか。極論もあるが、ことの本質をズバリ言い当ててもいる。オリーブの木もまだ使えるかもしれない。ただし、護憲と安保法制廃案だけでは不足だ。廃案後の安保政策と経済・財政、エネルギー政策だけは基本的一致点が欲しい。
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