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『拉致被害者たちを見殺した安倍晋三と冷血な面々』(講談社)を上梓した蓮池透氏
蓮池透氏が安倍首相の“逆ギレ”国会答弁に堂々反論!「安倍さんは議員バッジより先にブルーリボンを外すべきだ」
http://lite-ra.com/2016/01/post-1888.html
2016.01.13. 元家族会・蓮池透氏インタビュー(前編) リテラ
「私が申し上げていることが真実であることはバッジをかけて申し上げます。私の言っていることが違っていたら、私は辞めますよ。国会議員を辞めますよ」
1月12日の衆院予算委員会で、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(家族会)元副代表の蓮池透氏の著書について問われた安倍晋三首相は、こう声を荒らげた。
蓮池氏の著書とは先月発売されたばかりの『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)。同書では、安倍首相のついたいくつもの嘘が明らかにされ、「首相は拉致問題を政治利用した」と主張されていることから、民主党の緒方林太郎議員が安倍首相に「拉致問題を利用したのか」とこの問題をぶつけたのだ。
すると、安倍首相は「議論する気すら起きない。そういう質問をすること自体、この問題を政治利用している」と逆ギレしつつ、「利用したこともウソをついたこともない」と反論、さらに緒方議員が「では蓮池さんがウソを言っているのか」と畳み掛けると、冒頭のように、議員辞職まで口にしたのである。
この安倍首相の逆ギレ答弁について、当の蓮池氏はどう考えているのか。本サイトは13日に緊急インタビューを行った。
――昨日、予算委員会で蓮池さんの著書が取り上げられ、安倍首相がバッジをかけてそんなことはない、と反発していましたが。
蓮池 安倍さんが「バッジをかけて」って言った瞬間、議員バッジではなく、拉致問題の象徴でもあるブルーリボン・バッジのほうを外すのではと思ったほどでした。それくらい安倍首相の拉致問題への姿勢には失望しているし、彼は議員を辞めるつもりなんかないと思ったのです。私が『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(以下、『見殺しにした安倍首相』)に書いた内容はこれまで自分で体験し見聞きしてきたことです。Twitterにも書きましたが決してウソなど書いていません。
それにしても、一国の最高権力者である総理大臣がですよ、私のような一介の市民が書いた本で批判されたからといって、本気で対決姿勢を示すというのはいかがなものかと思いました。最後にはキレ気味でしたからね。そうではなくさらりと流したほうが総理としての器を示せたのではないかと思います。
──とくに「政治利用した」「拉致問題でのし上がった」という言葉に安倍首相は反応していました。
蓮池 安倍さんが、拉致問題で総理大臣になったのは事実です。そして総理に返り咲いてからもまだ拉致問題を利用している。私は決して安倍さんを批判するために本を書いたのではありません。拉致問題の恩恵を受けて総理になったのであれば、恩返しという意味でも拉致問題の解決に向けきちんとやってください、そういう思いを込めたつもりです。しかし今回の発言を聞くと本当に残念です。
2002年の小泉訪朝から13年もの長い時間が経っているのに何も変わらない。だから一石を投じるつもりでこの本を書いたのです。弟家族が帰国できたのだから黙っていたほうが楽だろうとも言われます。しかし、こんな状態で黙っていることはできない。弟はまだ帰ってこない被害者の人々のことが頭にこびりついているんです。肉体的には解放されたけど、精神的にはまったく解放されていないんです。心身ともに自由に暮らせるようなってもらいたい。そんな思いもあって私は声をあげている。だから“批判のための批判”みたいに捉えられるとすごく嫌ですね。
──安倍首相は、国会答弁で蓮池さんの本について「家族会の中からも、実はその本に対して強い批判があるということもご紹介させていただきたい」と主張していました。他家族のことを持ち出し、伝聞という形で蓮池さんを批判しています。
蓮池 私のところには家族会からの“強い批判”は直接きたことはありません。ネット上では、この本を出したことで「これでお前も終わりだ」「身辺に気をつけろ」などと書かれましたが。
──薫さんら5人が帰国した際、日朝政府間は「一時帰国」とし北朝鮮に戻すという約束をしていました。しかし当時、官房副長官だった安倍氏が「日本に残すべきだ」と判断して小泉首相の了解をとりつけたと言います。昨日の委員会でも関係者を集めて「最終的に私は返さないとの判断をした」と、蓮池さんの本の内容とは真逆の答弁をしています。
蓮池 安倍さんには、あなたがいつ説得などしたのか? と訊きたくなりましたよ。本にも書きましたが、弟を説得したのは私であって、安倍さんじゃない。実際に電話のひとつもなかったんですから。当時、政府は5人のスケジュールをびっちりと埋めて作っていましたし、「一時帰国」を変更不可能なものとして進めていたのです。家族たちの間では「帰りのチャーター便はどうするのか?」と、北朝鮮に戻すことを前提に具体的な話し合いまでもたれていたのです。
また、政府はこうも言っていました。「今回は一時帰国だけど、次回は子どもも含めて全員が帰ってきますよ」と。安倍さんも一貫して、5人を北朝鮮に戻すことを既定路線として主張していた。でも、弟と話し合うなかで「ああ、これは2回目などないな」と確信を持ったのです。だから必死で止めた。
──被害者の方々が日本に留まるという決意を伝えたとき、政府は慌てていましたか?
蓮池 慌てていたというより「そうですか」って感じでしたね。ようするに、弟たちの日本に留まるという強い意志が覆らないのを見て、しぶしぶ方針を変えただけなんですよ。にもかかわらず、安倍さんは相変わらず「決断したのは自分だ」というようなことを言う。大人の答弁だとは思えないですね。
また、小泉訪朝時、安倍さんは「『拉致問題で金正日から謝罪と経緯の報告がなければ共同宣言に調印せずに席を立つべき』と自分が進言した」と言っていますが、でも、それは安倍さんが突出して言っていたことではない。(当時、アジア大洋州局長として会談に同行した外務省の)田中均さんがその後のインタビューなどで答えているように、それは訪朝したメンバー全員の共通認識だったんです。それを自分だけの手柄のように吹聴したわけでしょう、安倍さんは。
──著書では、最近の安倍首相による拉致問題の“政治利用”について、蓮池さんのご両親の選挙応援の事例が記されています。これに対し、昨日、安倍首相は「政治利用はしていない」としながらも完全にはぐらかしていましたが。
蓮池 両親が選挙に駆り出されたのは事実です。2014年の衆院選で、新潟二区で立候補した自民公認の細田健一候補の地元・柏崎に安倍首相が応援演説に駆けつけた。そこに講演会にまず弟が招かれたんですが、多忙を理由に断ると、今度は両親が駆り出された。
「ここに蓮池薫さんのご両親も来てくださっています!」なんて演説で言われて。警察を動員して両親の道案内までしていた。弟が帰って何年も経って、なぜ両親が出て行かないといけないのか。これが政治利用じゃなければ何なんですか。一方では刈羽原発再稼働の問題がある柏崎で、原発のゲの字も言わない。母は「結局、安倍さんのダシに使われたね」って言っていましたが、この期におよんでまだやるか……と思いましたよ。
ただ、国会でこの話題が出たときに本当に残念だと思ったのが、緒方議員が安倍さんから当事者の話をまったく聞いていない、と切り返されたことです。実際、緒方議員から私に事前に何の連絡もありませんでした。本を読んだだけだから、本人に確認したと言えない。だから、安倍さんに「本の引用だけじゃないですか」と言われる隙を作った。なぜ電話の1本でもくれなかったのか。
繰り返しますが、そもそも私は安倍さんを単に批判するために本を書いたのではない。膠着した拉致問題に向け政府がきちんと動いてほしいだけですから。
もうひとつ。本を書いた理由に拉致被害者支援法の実態があまりに世間の認識と乖離していることでした。この法律の草案の段階で、私は自民党本部で安倍さんや中山(恭子・拉致被害者家族担当内閣官房参与【当時】)さんなどから支援法の草案を見せてもらったことがあった。そこでまず驚いたのは、そこに「慰謝」と書いてあったことです。「え? 月額13万で『慰謝』って?」と思いました。正確にいうと夫婦で24万ですから、割ると12万、そして子どもひとりにつき3万円です。しかも、働いて収入が発生したら減額です。24年のブランクがあり学歴もキャリアも中断され、いきなり日本に帰ってきて政府はこれだけで自立しろと言う。北朝鮮に強制的に拉致され、24年も放置されてこれは酷すぎるんじゃないのか。
草案の段階で「慰謝」は削除してもらったのですが、同時に金額が低すぎると訴えました。すると法案作成にかかわった自民党議員から「野党が金額が低いと吊り上げるから大丈夫」と説明されたのです。しかし結果は逆。野党は13万円は高すぎると主張し、その金額のままになってしまった。
その際、私は安倍さんに言いました。「国の不作為ですから賠償請求で国を訴えますよ」と。すると、安倍さんは薄ら笑いを浮かべてこう言ったんです。「蓮池さんね、国の不作為を立証するのは大変だよ」って。この言葉は今でも本当に忘れることができません。
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安倍首相の逆ギレ答弁とは対照的に、蓮池氏は終始冷静に、しかし、具体的な根拠をひとつひとつあげながら、安倍首相の答弁をくつがえしていった。
両者の言い分を読み比べてみたら、どちらが嘘をついているかは、明らかだろう。
だが、蓮池氏の話はこれで終わりではない。北朝鮮の水爆実験、この間の交渉の問題点、さらには家族会の政治利用などについても、言及していた。
その内容については、後編をぜひ読んでいただきたい。
(編集部)
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