一方、冷戦崩壊後の敗者ロシアはエリツィン政権の大混迷と国難を元KGBのリアリストに舵を握らせ、先ずは混乱したロシア国内の経済と政治腐敗を取り除くため徹底的に独断を震わせた。
他方ではロシアの国力と武力がアメリカに及ぶものでない現実もしっかりと把握した元KGBの大統領は、アメリカの無理難題に対しても面従腹背は避けつつも協力できるところは協力し、しっかり利を得る戦略を打っていった。
たとえばアフガンにおける米軍のために旧ソ連側の進入ルートを確保してやった。

中央アジアの旧ソ連衛星国とはいえそこはロシアの権益であり、アメリカが軍隊を駐留させることは権益を侵されることと同じだが、後にアフガンで泥沼に入り込むアメリカにとってパキスタンルートが鬼門になると、北部ルートは最重要ルートの死活地域となり、結果的にロシアはアメリカの金玉を握ったも同然になったわけである。

中国をあやし手なずけて手ごろな金づるに仕込んだはずなのに、気が付くと中国はアメリカの言うことを聞くことより、アメリカに注文を付けるほうがめっきりと増えてきた。
今ではアメリカはそんな中国の注文に対して、一笑のもとに撥ねつける力さえ持っていない。
それでもアメリカは中国から離れられない。

何を言いたいのかというと、冷戦崩壊後アメリカは2000年代に入ってからずっと後退期に入っているという現実認識が日本の政治家にないことである。
後退期の速度は2010年代からさらに強まり、去年はもっと顕著になった。
然るに日本が新安保法制を法律にしようとしたのが2015年である。
日本だけが冷戦時代の思考から抜け出ていない。
取り残されたままだ。
そしてアメリカの幻影に脅えている。