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前回のHere there and everywhere で既に「LP(リボルバー)のベストソングではない」と言及したジョン・レノンの作詞・作曲によるギターとボーカルのメロディーラインのかけあいを全面にだしたシンプルな作品。製作過程で名付けられたタイトルはYou Don't Get Me それがおそらく一番いいたいことだろう。
You don’t get me・・・・俺には勝てないよ。俺からの容認を得れることはない。俺の理解や境地にまで到達することは無理だよ。という挑発的な言葉はライバル的な存在へ投げかけられている筈であるが、それは一体なんなのか?
ホームスコーラーにとっての心強い味方ウィキペディアによるとYouにあたるのは三説ある。
一つはアメリカ歌謡界の大御所、フランク・シナトラであり(彼はレノン=マッカートニーの最高傑作はどの曲だときかれてハリスンのSomethingだと答えたくらいビートルズへの無関心・嫌悪を表明することに抵抗がなかったイタリア系のオヤジである。)、もう一人は飛ぶ鳥をおとす勢いのミック・ジャガー、そしてあとの一人がポール・マッカートニーである。
リボルバーの1966年といえばビートルズにとって転換期であり、ジョンのユダヤ人・キリストに対する暴言が抑えられなくなったため世界的な大バッシングははじまった年だった。ビートルズはライブ活動をやむなく永久休止することになり、ジョンは干される中ヨーコと知り合う。
ジョンは音楽活動に疲れ、家庭に疲れ、エンタメの先導者であることに疲れ、いち早く引退・逃避モードに陥っていた。And your bird can singは歌詞全体の内容からいって「自分はもう終わっているが、いまをときめいているお前(You)に何がわかるものか」という皮肉とも羨望とも区別がつきにくい我儘な心境をエゴイスティックに退廃的な反抗音楽にしているのだが、そういう印象が中和されているのはポールのリードギターとハーモニーがあまりにそれに反してポジティブで前向きであり澄み切った秋空を飛び交う鳥の群れのように直線的な叱咤を与え続けているからだろう。
And your bird can singの解釈は色んな要素の複合であって、一つの答えはないというのが私の説である。同時代の律儀なアーチストの中には、たとえばデビットボウイがその珠玉の名作であるLady Stardustでマーク・ボランをモデルにしていたり、またそのボウイの妻に捧げたミック・ジャガーのAngieもある。ジョンはヨーコとおかしな暴走を遂げるまでは人との絆には冷笑的であり、シリアスに誰かのことを歌にしたとは思えない。
Birdという言葉を使ったのは、前年のNorwegian Woodからきていて、そこにミックジャガーの恋人でシンガーでもあるマリアンヌ・ファイスフルがかかっただけのことで、成功を手にするミック・ジャガーを振りにした後はもう次の歌詞に移り「七つの不思議を知ったようなことを言うが」というのはポールに対してである。アメリカでボブ・ディランと会ったときにマリファナをみんなで吸いながらポールがディランに蘊蓄をかますために「七つの不思議」の話をした逸話が(本当はソースはいいたくはないがWikiにのっている)ある。ポールのマリファナの見識は甘くそれについてYour bird is greenと言及しており、これはミック・ジャガーにも、Birdという言葉があててある若い魅力的な女性というものにも関係ない。おそらくYour bud is green(お前の吸っているマリファナの葉は摘んだばかりの若葉じゃないか)とでも言いたかったのではないかと思う。ポールもそれは受け取っているだろう。
そしてLook in my direction, I’ll be round I’ll be roundはジョンがのちに回想したことによるとおかしな意味をもっている。ジョンはビートルズの人気が異常なまでに上昇したとき、現実感覚を喪失して自分達が神にでもなったのではないかと不信におちいり、そのたびに後ろを振り返るとリンゴ・スターがいることで安心したのだとジョークを応えていたものだった。不安にかられたときは、その道の先駆者である俺のほうをみてみろよ、まだなんとかここに居るから・・・・とスターダストに酔う後輩(ミックかポールかわからんが)にアドバイスをするように歌詞をつなぐジョン。
二度目のブリッジではWhen you bird is broken, will it bring you down? You may be awoken, I’ll be round I’ll be roundともはや英米語のネイティブだろうがドリトル先生認定のキリン語の通訳だろうが、わけがわからない様相へ・・。仕方ないので私が翻訳を試みる。Bird is brokenというのは、おそらく玩具の鳥だろう。どういうシチュエーションかというとそれこそNorwegian Woodである。つまり、女性の家を訪ねてワインを飲んだり話したりいい雰囲気になってきたが、自分は浴室へ行って寝て、起きたらもう彼女(Bird)はそこにいなかった、というオチだ。つまりジョンは浴室でプラスチック製のアヒルかドナルドダックかそんな入浴用玩具をみつけたのだ。そして触ってるうちに潰してしまう。あ!うっかりやっちまった。まさか気付かれたかな、機嫌をそこねるだろうか、まだ起きてるかもしれないな、俺はここにいるよ!実際にジョンの行ったことか想像の拡張かまでは争わないが、これがAnd your bird can singでアイデア不足のジョンが無理矢理意味のない歌詞を仕上げたときの背景である。
ま、こんなもんでしょう。一体誰に言いたいのか?とジョンはきかれても答えようがない、創作とはそういうものである。ヨーコやヨギに出会うまでは、他人というのはどこまでも創作の種であり、特別な関心をもって没頭するようなことはなかったのだから。
私は中学一年のとき、メタル製の黒い筆箱にコンパスの先で彫り物をいれていた。右上に1cm四方くらいのサイズでAnd your bird can singと書き、左下に薄い筆記体でBand on the runと書いていた。ビートルズずぶずぶの精神である。当時は前者はジョンの作品でしかなく、まさかポールがギターでバックアップしているからこそあの自虐的な曲が躍動感に震えながら光を放っているとはしらなかった。英語が大嫌いの戦前生まれ軍国教師が現代文の時間に憎しみをこめた視線でそれをみていた。そして彼は「筆箱をみたら、成績がわかる」などと嫌味をいっていた。中一の現代文は学年で最下位か下から二番。100点満点中11点という中間試験もあった。筆箱にはその後、Rip this jointなる新たな彫り物が入ってオバカ度が倍増していたものの、成績は中2でかわり学年10番台におちついた。英語と数学の図形のほうもそれに続きコンスタントに上位に入った。10番台といっても、私の学年ではサンデー毎日によれば東大・京大の合格者が計200人くらい出ているので悪くはないのだ。自慢話がしたかったわけではない。ロックにうつつを抜かしているような輩でも少し態度をかえれば優等生と紙一重であり、優等生では絶対にわからない知識や想像の体系をもっているものである。
Look in my direction, I'll be round I'll be round
You tell me that you've got everything you want
And your bird can sing
But you don't get me, you don't get me
You say you've seen seven wonders and your bird is green
But you can't see me, you can't see me
When your prized possessions start to weigh you down
Look in my direction, I'll be round, I'll be round
When your bird is broken, will it bring you down?
You may be awoken, I'll be round, I'll be round
You tell me that you've heard every sound there is
And your bird can swing
But you can't hear me, you can't hear me
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