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ビートルズの活動にドラッグの影響が強くみえだしたのはアルバムの時期でいえばHelp!であり、そのタイトルがアイロニーそのものであるが、まだ異常は顕著にあらわれていなかった。
次作のRubber Soulでジョンがついに「アイデア切れ」を訴えるものの、アルバムは後世に残る名盤にしあがっていて、そのままビートルズ現象は続行されていくことに疑いはなかった。
しかし翌年の1966年に転機が訪れる。世界ツアーで日本を含むアジアに出かけたビートルズはその道中にトラブルに巻き込まれる。そしてジョンはユダヤ人相手に、そしてその後はキリストへと非常識な放言を繰り返しアメリカをはじめとする欧米でもビートルズ焚書運動がおこる。
そして一切合財のライブ活動の停止へ。1967年発表のSGT Pepper’sではレコーディング中にジョンはドラッグによる錯乱で倒れているので、やはり1966年のRevolverはビートルズがギリギリで平常心を持つことのできた時代の最後の騒動を収めたアルバムだった。
よくジョン・レノンの代表作はヨーコとのコラボ時代のたとえばイマジンやインスタント・カルマのようなかったるい曲だと真顔で言う人がいるが、一体何を聞いているのか理解できない。ジョンはRevolverで終わってる。LucyもRevolutionもいい曲だしホワイトアルバムにも名曲はいくつかある。しかしそれらStrawberry Fields以降の自我にしがみついたような締まりのない単発作品にはビートルズの魅力がまるで生きていない。
それだけにこのRevolverでジョンが最後の力を絞って作り出したAnd your bird can singはマスターピースとしてアルバムのクライマックスを飾っていると信じたい。
しかし、ジョン派であるはずの私には既に答えがわかっている。Revolverの最大の名曲はポールのHere, there and everywhereである、と。この曲はレコーディング・スタジオの万代の神が味方をしたとしか思えない。曲の良さとパフォーマンスの良さに加えて、録音する瞬間の奇跡が働いているからだ。
今日、急にこの曲をYoutubeで探したら、なんと無い。Revolverのアルバム・バージョンであるオリジナルのHere, there and everywhereはどこにもあがっていないのだ。あがっているのは、未公開バージョンなど使われなかった掘り起こしテイクばかりだ。そしてその中の動画のコメントに私と同じフラストレーションを感じていた欧人がコメントをつけていた「オリジナル・バージョンは一体どこにあるの?」と。無理もない。アルバムのあのHere, there and everywhereに流れる一秒も無駄のない神業は他のバージョンには見当たらないのだから。
アルバムが丸ごとあがっていたので辛うじてオリジナルを見つけたが、どうして同じ時代の同じ人間の手による同じ曲がここまで違うのか、これこそが「奇跡」のしわざなのだ。無論、ライターでリードボーカルを受け持ったポール・マッカートニー自身にも再現できないことであろうことは想像に難くない。
ちなみにジョンは同アルバムの中で彼にとっての最高傑作はやはりポールの作品でFor no oneだと後になって語っている。このアルバムを制作した時期からしばらく、ポールには神がかりな力が宿っていたのではないか。
余談: 一昨年に私はオーストラリア出身のギターリスト、トミー・エマニュエルのライブに珍しく出かけていったのだが、その行く途中の車の中で私は特に脈略もないままこんな話をした。「エルヴィス・プレスリーの中でJailHouse Rockという曲は特別の価値を持つ。この一曲だけがずば抜けて格好よく仕上がっているのは、レコーディングしたときの場が不思議な興奮に乗っ取られた瞬間にエルヴィスが逆らわずに溺れていくことで破壊的な自己陶酔が能動的な超自我のもとで表現されたからだ」と。
それから小一時間して一通りの演奏で会場を熱気に包んだトミー・エマニュエルがトークに入った。トミーはいきなりプレスリーの話をしはじめたのだ。そして彼はこういった。「エルヴィスで一番好きな曲はJailhouse Rockだ。この曲の偉大なところは、エルヴィス一人でなく、演奏していた(名前は忘れたが)誰々のせいでもなく、レコーディング・スタジオに起こった奇跡の瞬間をキャプチャーすることにプロデューサーが成功したからなんだ。」
そのときの鳥肌のたつような現実ばなれした感覚を今でも忘れない。小一時間前に車の中で言ったことをあのギターの巨匠が同じ論旨でステージから語りだしたのだから。
世界的なギターリストのトミー・エマニュエルであっても、名作を生み出すのは才能や技能だけでなく、場に流れた不思議な偶然が重なり会った奇跡によるものだという見解は支持してくれたようなので、よしとしよう。
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