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バッハの音楽13 フーガの技法 コントラプンクト11
今回は、また、フーガの技法BWV 1080 をとりあげる。20曲ほどあるなかの、コントラプンクト11である。これは、あまり注目されないが、未完の4重フーガと同じように、バッハの諸曲のなかでも、きわめつけの、とくべつな大曲であると、わたしは考えてきた。
これは、3重フーガであり、特別な意味と表現をもつが、無機的でわかりにくいため、素通りされることが多い。これにも、BACHの署名が、音名で第3主題にしるされているのは、未完の4重フーガと同じである。バッハがいかにこの2曲を特別視して作曲したかということがよくわかる。
これに似た曲が、わたしの知るかぎり1つある。インベンションとシンフォニアのなかのシンフォニア9番BWV 795 である。これも、インベンションのなかでは、1つだけ孤立したとくべつな名曲である。このシンフォニア9番BWV 795の延長に、フーガの技法コントラプンクト11があるということが、コントラプンクト11を理解するために重要になる。
シンフォニア9番の特徴は、コントラプンクト11に似て、まず嘆きの主題があり、悲しみの半音階下降音階の主題があり、慰めの第三主題がある。バッハが、このような曲を、曲集インベンションとシンフォニアに入れたのは、事情はわからないが、特別な思い入れが、インベンションとシンフォニアの曲集にはあったのだろう。このシンフォニア9番BWV 795の延長にあるとの理解のもとに、フーガの技法コントラプンクト11を演奏した人はあまりいない。かのヴァルハやグールド、レオンハルトでさえ、そのように演奏していない。
私が知るかぎり、この曲をバッハの意図にしたがって正しく演奏した人は、グリゴリー・ソコロフがあるのみである。
フーガの技法コントラプンクト11 グリゴリー・ソコロフGrigory Sokolovの演奏
https://www.youtube.com/watch?v=UgmpBHAwFLk#t=36m28s
シンフォニア9番 ヴァルハの演奏
https://www.youtube.com/watch?v=7zgN71SDJvE#t=14m53s
コントラプンクト11は、最初の第1主題が大切である。テンポが嘆きのテンポになっていなければならない。ほとんどの奏者は、最初からまちがっている。第2主題は、悲しみの半音階下降音階ではなく、半音階上昇音階としてまず提示される。第1主題の上昇基調にあわせた提示であるが、すぐ反行形の半音階下降音階の主題があらわれる。これが、真の第2主題であろう。3重フーガなので、第3主題としてバッハの署名が入った主題があらわれるが、そのまえに、コントラプンクト8と似た印象的な旋律から始まる。これも は、正しく解釈して印象的に始め、さらに第3のバッハの主題に続ける。
したがって、グリゴリー・ソコロフの演奏は、ヴァルハやグールド、レオンハルトなどの演奏とは、別次元のすばらしい演奏となっているが、それに気がつける人はあまりいないであろう。
わたしは、コントラプンクト11を、音楽史上の最高傑作、芸術史上のエベレストのような存在であると考えてきた。いっけん無機的であり、とっつきにくいが、こんなに深い悲しみと慰めをあらわした音楽が、この世にほかにあるのだろうか。
だが、おそらくだれも気にもしない。だれも通らない道ばたで、ひっそりこの花は咲いているのだ、退屈でどうしようもない曲という感想がバッハを聴く人の大部分であろう。フーガの技法さえ、最初は演奏して聴く曲集とは思われず、ながいあいだ、聴かれることなくきたという事実がある。もちろんコントラプンクト11は、未完の4重フーガ(これはコントラプンクト14とされることが多い)ほど、衆目の目に触れることさえなかったのは、ほとんど解説がないことからわかる。
ヴァルハやグールド、レオンハルトが、この曲のほんとうの意味と偉大さを理解することができなかったように思われるのは、しかたがないことであったとは思う。この特別なバッハの傑作が、もっともっとバッハ愛好家に知られるといいな、とわたしは思っている。
だが、モーツアルトは、K. 404a でコントラプンクト8を弦楽に編曲している。なぜか前奏曲はつけていない。コントラプンクト11がないのは、聴衆がこの曲を理解しないと予想したからだろうか。
https://www.youtube.com/watch?v=L1JWhO-DqjM#t=20m30s
なお、ヴァルハのオルガンのコントラプンクト11の演奏は、
https://www.youtube.com/watch?v=q4uJug3Ll_w#t=43m55s
レオンハルトのチェンバロのコントラプンクト11の演奏は、
https://www.youtube.com/watch?v=FRs75gKIHnk#t=46m51s
グールドのコントラプンクト11の演奏は、
https://www.youtube.com/watch?v=-I1TFlKaVtA
gerrubach の4段のフルスコアの弦楽のコントラプンクト11の演奏もある。主題の入りがよくわかる。
https://www.youtube.com/watch?v=XXQY2dS1Srk#t=34m15s
ミッシェル・パルロフというひとが、フーガの技法の解説をしている。日本語化はできない。
コントラプンクト11の解説はないが。いい演奏を紹介していると思う。
https://www.youtube.com/watch?v=Yl8M1VyASvk
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