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軍拡競争でロシア潰しを狙うアメリカ
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2016年12月30日 マスコミに載らない海外記事
Finian Cunningham
2016年12月25日
Sputnik
今週世界中で、アメリカとロシアの間の新たな軍拡競争に関する警鐘が鳴った。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が先にロシアの核能力"強化"を呼びかけた後、次期大統領ドナルド・トランプは、アメリカのマスコミに"かかってこいだ" と述べたと報じられている。
モスクワは後に軍拡競争をけしかける意図は皆無なことを明らかにした。トランプ側は、アメリカ核兵器備蓄を“大幅に拡大する”という表現で、新大統領が一体何を意味していたのかについては、曖昧なままだ。
アメリカ政府にとって、ロシアとの核軍拡競争を引き起こす魅力的な戦略的誘因がある。主な目標はどちら側も生き残ることができない最終的な破滅的戦争を開始することではない。狙いは、ロシアを財政的に潰すことだ。違った形であるにせよ、これはやはりある種の戦争だ。
モスクワを財政的に潰した結果の次は、最終的には、アメリカによるロシア征服だ。ロシアとその豊富な天然資源は、それ以降、アメリカ資本によって支配される、もう一つの領土にすぎなくなる。地政学的に、シリアにおける最近の出来事が実に良く実証している通り、強力なロシアによる対抗力が無ければ、世界中のどの国でも、アメリカ政府は自由に叩くことができる。
この財政戦争シナリオの前例は、1980年代のロナルド・レーガン大統領下で見ることができる。第二次世界大戦以来、冷戦の数十年間ずっと、アメリカと、そのNATO軍事同盟は、当時のソ連に対して常に攻撃的に動いてきたのは確実だ。ロシアは、ある種、防衛上の均衡を維持するため、法外な経済資源を割くことを絶えず強いられてきた。
レーガン大統領時代、アメリカは、軍事支出増大に乗り出し、それは必然的に、ソ連でも同様の対応を引き起こした。加速された軍拡競争のおかげで、両国は膨大な財政問題を被った。ソ連の場合、維持不能な兵器支出が経済崩壊を招き、結果的にロシアの政治体制は、1991年に崩壊した。
ところがアメリカの場合、世界最高の国際準備通貨としての米ドルが、アメリカ政府が単純にドル紙幣を印刷し続け、山のような負債を累積するのを許しているため、財政的、政治的大災害を先のばしできるのだ。冷戦が公式に終結して以来四半世紀、アメリカは総計20兆ドル滞納し、世界最大の債務国として傑出している。借金清算期限はとっくに過ぎているのだ。
言い換えれば、アメリカが冷戦に勝ったように見えたのは、アメリカのソ連に対する政治的、経済的、あるいは軍事的体制の優位性によるものではない。逆に、もっぱらアメリカは、自由奔放に、紙幣を印刷でき、負債を累積できがゆえに、決定的利点があるのだ。一方、ソ連制度には財政問題を他の国々に押しつける特権は無い。
それゆえロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、今週、ロシアを、再度、アメリカとのいかなる軍拡競争にも巻き込まれるようなことはしないと語ったのは賢明だ。プーチンと彼の顧問は、歴史をしっかり研究しており、そのような軍拡競争が、もし引き起こされれば、アメリカ政府にとってより、モスクワにとって、遥かに重大な経済的、政治的問題をもたらすことを理解しているだろうと想像する。単に、米ドルが、世界金融体制により不当に特権を享受しているという特異性のおかげなのだ。
それでも、ロシアとの軍拡競争は、まさにアメリカ支配体制内の強力な連中が望んでいることだと思いたくなる。
これにはいくつかの理由がある。第一に、アメリカ資本主義、巨大な軍産複合体への政府助成という頼みの綱無しには機能しないのだ。毎年、アメリカ政府は軍事に約6000億ドルを費やしており - 教育、医療や公共福祉に対する総政府支出の約半分だ。総計すれば、アメリカとそのNATO同盟諸国は、ロシアが軍事部門に支出している金額の約十倍費やしているのだ。
“自由市場”、“私企業”制度だということになっているアメリカ資本主義は神話だ。現実には、それは対照的に、支配エリートの営利のための、中央計画経済、助成支援体制なのだ。年々の膨大なアメリカ軍支出は、この種の経済的寄生体制を維持するためには不可欠だ。論理的に、ロシアに対し引き起こす軍拡競争は、巨大製造企業、ウオール街銀行家や超裕福な株主という軍産複合体にとって、願ってもない恩恵だ。
ロッキード・マーチンの、F-35戦闘機を作るための途方もない公的助成計画に対する彼の最近の訓戒からして、トランプはこのことに気がついているように見える。トランプがアメリカ軍産体制の寄生的な性格を進んで克服するかどうかは、また別の問題だ。それは疑わしい。ここで必要とされるのは、大規模な政治運動によってもたらされる系統的変革だが、資本家億万長者の大立て者トランプは、そういうものを代表していないのは確実だ。
アメリカが、一体なぜロシアとの軍拡競争を望んでいるのかという、もう一つの切実な理由は、ワシントンの政治計画者やイデオローグ連中は、そのようなエスカレーションで、無益な金融上の穴堀競争でモスクワを潰すというかつての冷戦戦略の繰り返しをもたらすことができることを重々承知していることだ。
ロシアは、事実上、あらゆる国々同様、経済のどれだけを軍事支出に使えるかが制限されている。アメリカは違う。世界金融体制が、主要準備通貨として、ドルに頼っている限り、アメリカ政府は、何のおとがめもなく債務を累積させることができるのだ。
軍拡競争によって引き起こされる財政戦争で、ロシアを潰すことを狙ったこのシナリオは、一体なぜアメリカ率いるNATO同盟が、近年モスクワに対するいやがらせを強化しているかの説明にもなる。“ロシアによる侵略”から“ヨーロッパを守る”という口実は明らかに馬鹿らしい。ロシアによる“クリミア併合”というわざとらしい恨み言アメリカ政府とNATOのお先棒をかつぎ連中が、ロシア国境で軍事力を強化する口実にするために画策されている。
客観的状況は、欧米諸国政府や連中の柔順なマスコミが主張しているものと真逆の、ロシアに対するNATOの攻勢と脅しであることは、正気の人なら理解できる。
これは、2002年に、一体なぜアメリカが、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)条約を一方的に離脱したのかという説明にもなる。アメリカの破綻した経済は、そのような不安定さと、戦争の多発によってのみ支えることが可能なので、アメリカ政府は、不安定と不安を醸成する必要があるのだ。
本当の狙いは、ロシアとの第三次世界大戦を煽り立てることではなく、モスクワに無理やり再度の悲惨な軍拡競争をさせることだ。
ロシアは継続して防衛能力を強化することが不可欠だ。つまり、既存システムの性能向上だ。ここでのキーワードは“強化”だ。プーチンは“拡張”とは言っていない。彼は経済的、技術的に効率的にして、軍事能力を最適化することをはっきりと語ったのだ。
アメリカ政府による無謀な戦争挑発は、第二次世界大戦以来何十年もの歴史がある傾向だ。不幸なことに、このアメリカの好戦性に抵抗するには、ヨーロッパの同盟諸国は、あまりに従属的、つまりイデオロギー的に従順に過ぎる。この場合、ロシアは、アメリカによるあらゆる究極的侵略を阻止すべく、最高の防衛システムを保有するよう常に警戒し続けねばならない。
ロシアは“いかなる侵略者”に対しても自らを守ることができると、プーチン大統領は堂々と述べた。
とは言え、いかなる代償を払っても、ロシアは、経済を、そして結局はロシアの国家主権を破壊する軍拡競争を避けなければならない。それこそ、まさに敵のアメリカが願っていることなのだから。
本記事で表明されている見解はもっぱら著者のものであり、必ずしもスプートニクの公式な立場を反映するものではない。
記事原文のurl:https://sputniknews.com/columnists/201612251048979856-us-russia-arms-race/
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