http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/699.html
Tweet |
[ポジション]OPEC減産に波乱要因
ロシア動向や米シェール焦点 相場上昇打ち消す懸念も
石油輸出国機構(OPEC)が8年ぶりの減産で合意した。9月末の暫定合意で示した下限となる日量3250万バレルの生産枠達成に向けた減産の実施が今後の焦点となる。原油相場は減産を好感し1バレル50ドル程度まで上昇したが、3つの波乱要因が減産効果を打ち消す懸念材料となっている。
全体で日量約120万バレルとなる減産の4割は盟主のサウジアラビアが担う。サウジは財政健全化と経済構造改革を掲げており、住友商事グローバルリサーチの高井裕之社長は「最後はムハンマド副皇太子の決断が最終合意に結びついたのではないか」と分析する。
OPECの歴史が示すように、今回もサウジとイランの対立が交渉の焦点となった。サウジは直前までイランに10月の生産量に相当する370万7000バレルの生産基準に4.5%の減産を要求。一方、イランは397万5000バレルでの生産凍結を主張した。結果的にイランの生産基準をサウジが受け入れ、397万5000バレルからの4.5%減産で譲歩した。最終合意でイランは実質9万バレルの増産を勝ち取った。
それでも「イランに一定の生産枠をはめてOPECが減産合意に歩み寄った影響は大きい」。石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之氏は合意の意義を強調する。
大方の予想を上回る減産合意に、市場も敏感に反応した。合意が伝わった11月30日のニューヨーク原油先物は40ドル台半ばから急伸。5日には一時52.42ドル(期近物)に達し、年初来高値を更新した。
今後の原油市況はどうなるのか。3つの波乱要因が浮上している。
第1が部族対立や内戦の影響で適用除外になったリビアとナイジェリアの動向だ。ナイジェリアは2012年には日量220万バレルの原油を生産した。10月の生産量は163万バレルだが、「ナイジェリアが仮に50万バレル、リビアが40万バレル増産すれば減産効果は帳消しになりかねない」(野神氏)。
第2はソ連崩壊後で最高水準となる日量1120万バレルを生産するロシアの動向だ。ウィーンで現地時間10日にOPECはロシアなど非加盟国との減産協議を開催。ロシアは30万バレルの減産を表明している。「協調すれば、原油価格をもう一段押し上げる強材料になる」(野村証券の大越龍文氏)との見方が出ているものの、合意に至るかどうか、不透明感も漂う。
第3の波乱要因が米国のシェールオイルだ。全米の代表的なシェールオイルの生産コストは15年には1バレル60ドル程度とみられていたが、生産性の改善に伴って「16年には50ドル台前半にまで下がってきた」(野神氏)。原油価格が55ドルを超えれば「シェールの増産が上値を抑える」と市場関係者の見方は一致する。
OPEC加盟国の減産実施は17年1月から始まる。2月には加盟国の最初の減産姿勢の動向が判明する。足並みの乱れが露呈すれば、再び40ドル台前半まで下落しかねない。サウジが目指す50ドル台の原油価格を維持できるか。減産合意の実効性を市場関係者は固唾をのんで見守っている。
(松沢巌)
[日経新聞12月10日朝刊P.17]
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。