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トランプが直面する核政策の課題
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8424
2016年12月15日 岡崎研究所 WEDGE Infinity
トランプ次期米大統領が直面する核政策の課題につき、ワシントン・ポスト紙は11月13日付で社説を掲げ、現実的な対応を求めています。要旨次の通り。
トランプが次期大統領となることが決まった今日、選挙期間中に注目を集めた課題――核抑止力や米国の核に支えられている貴重な同盟関係をどのように管理するべきかという課題――につき冷静な再検討が必要である。選挙期間中、トランプは向こう見ずな発言を行ったが、その後、表現を和らげている。
選挙後、彼は、最も破滅的なアイディアの一つからは距離を置くようになっているようだ。選挙期間中、彼は、日韓両国が米国の核の傘を脱し独自の道を歩む方が米国にとって良いと述べ、両国がもっと財政負担をしないのであれば、米軍を同地域から引き揚げるべきであると主張した。そうなれば、日韓両国の核保有を招き兼ねない。北朝鮮の核・ミサイル開発に加え、新たな拡散の懸念が生じることとなる。しかし、トランプは11月10日に、韓国の朴大統領と対話し、韓国大統領府によれば、同盟関係を維持・強化する意思を「100%」再確認した。
トランプはNATOへのコミットメントについても警告を発していたので、同様の対応を早急に執るべきである。選挙期間中のトランプの発言は孤立主義的であったが、大統領に就任すれば、個人的な取引能力以上のものが必要であることを知ることになろう。抑止力が米国の国力と影響力のバックボーンである。トランプが厄介な現実の諸問題に取り組まねばならない時に、同盟国の間に不信の種を播くことは意味がない。北朝鮮の加速する企てをいかにして阻止するかもそうした問題の一つである。オバマ大統領が放置してきたこの問題については新たな戦略が必要であり、中国に「その問題を解消させる」とか、「自分が金正恩と会うことで解決できる」とするトランプの咄嗟の思いつき以上のものが必要である。
トランプは選挙期間中にイランとの核合意を破棄すると約束したが、これにも制約がある。トランプが新たな合意を目指すことになるとしても、その間、欧州のパートナー諸国がイランに対する制裁を復活することは期待できない。
国内では、トランプは高額な核戦力更新計画を引き継ぐことになる。彼が方針転換することはありそうにない。ただし、予算の制約により、一部の運搬システムにつき難しい決断を迫られることはあり得る。
トランプと核兵器との関連では、ロシアが最大のクエスチョン・マークである。トランプとプーチンは互いに気さくにお世辞を述べ合っているが、軍備管理を巡る最近の緊張関係――ロシアが中距離核戦力協定に違反しているとの米国の主張、米国の弾道ミサイル防衛についてのロシアの不満を含む――に与える影響は不明である。選挙期間中に核問題に関連し矛盾する発言をしたトランプは、韓国については自らの直感に従うべきである。すなわち、役に立っているものは残すということである。破壊的な危機は他に幾らでも発生し得るので、わざわざ新たな危機を作り出す必要はない。
出典:‘Avoiding nuclear headaches’(Washington Post, November 13, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/avoiding-nuclear-headaches/2016/11/13/7897150e-a841-11e6-ba59-a7d93165c6d4_story.html
トランプ次期大統領は、主要国の首脳と電話会談を行い、主要人事に着手した段階で、11月17日に行われた安倍総理との会談が本格的な外交デビューとなりました。国務長官のポストに誰が就くかが争われているようです(ジュリアーニ元NY市長、ボルトン元国連大使、ロムニー元マサチューセッツ州知事などの名が挙がっている)が、その決着如何で新政権の外交政策はニュアンスの違ったものになるでしょう。
トランプ政権の核政策がどのようなものとなるかは未だ明らかではありません。しかし、トランプは10月13日の自身のツイッターで「ニューヨーク・タイムスがトランプはもっと多くの国が核兵器を入手すべきだと考えている、と書いた。なんと不誠実なのだろう。一度も言っていない」と述べるなど、選挙期間中の極端な発言が修正されつつあることが解ります。
世界の安定のために米国とNATO諸国の協力関係が一定の役割を果たしていることに変わりはありませんので、トランプがNATO諸国の信頼を早めに獲得できることが重要です。
北朝鮮の核・ミサイル開発問題がトランプの咄嗟の思いつきのような発想で解決出来る訳ではないので、日米韓の結束を維持しつつ中ロ両国の協力も取り付けて対応する他ありません。
■イランとの核合意については?
イランとの核合意については、この社説が指摘するとおり、トランプ政権がこれを破棄し、新たな合意を目指すことになっても、欧州諸国の協力は得られないでしょう。また、米国の核戦力更新計画は長期的視野の下で推進されている計画であり、新政権もこれを基本的に引き継ぐものと見るのが自然です。
トランプとプーチンは気が合うように見えますが、プーチンは機を見るに敏ですから、油断をすれば隙を突かれる可能性があります。両首脳の波長が合うというだけで米ロ関係がうまくいく保証はありません。
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