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トランプになれば太平洋は安定する?
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8378
2016年12月8日 岡崎研究所 WEDGE Infinity
トランプ陣営アドバイザーのグレイ(ランディ・フォーブス上院議員の元上級顧問)とナヴァロ(カリフォルニア州立大学教授)が、Foreign Policy誌ウェブサイトに11月7日付けで掲載された論説で、トランプのアジア政策を説明し、経済利益を安保のために犠牲にしない、米軍の増強を図る、同盟国の負担の増大を求める等と述べています。要旨、次の通り。
オバマのリバランス政策は正しかったが、大げさに言うだけで鞭は小さなものでしかなかった。中国は軍の近代化や対米貿易黒字などの結果、力を顕示するようになった。オバマのリバランス政策は腰砕けになった。艦船のシンガポール派遣等見せかけのジェスチャーしか取らず、政権は国防予算を大幅に削減、米軍、特にピボットの尖兵となる海軍も削減された。
リバランスの核心として政権が重視するのは軍事力ではなく、TPPということになった。TPPが中国封じ込めの手段となった。国防長官は、TPPは空母一隻分の重要性を持つと述べた。
米国が軍事力を削減するなか中国は南シナ海に人工島の建設を進めた。それに対し米国は極めて限定的な対応しかしなかった。中国は一方的に防空識別圏を設定し、国内では人権抑圧を強めた。クリントンはピボット政策の弱いフォローしかせず、北朝鮮に対しては大失敗の「戦略的忍耐政策」を取り続けた。北朝鮮は米西海岸に到達するミサイルを開発している。
フィリピンの対中接近はオバマ・クリントン外交のもう一つの失敗だ。オバマ政権は12年の中国によるスカボロー礁支配にも介入しようとはしなかった。オバマの悪名高いシリアに関するレッドライン公約の顛末はアジア太平洋での米のコミットメントの信頼に疑念を惹起することになった。
タイの政府は米国から冷たくされ、中国との関係を強化している。オバマ政権は台湾が必要とする武器の提供を拒んできた。幸いなことに日本、韓国、インド、越などは対米関係を強めている。次期政権はこれらの国との戦略関係を更に強化することができる。
トランプのアプローチは二本の柱からなる。第一に、外交のために経済を犠牲にしない。NAFTAや中国のWTO加盟許容、TPPの承認のようなことを今後することはない。第二に、トランプは、レーガンの「力を通じる平和戦略」を追求する。オバマ政権の下で海軍は第一次大戦以来最も縮小した。陸軍、空軍も同様に縮小した。トランプは国防費の強制削減の撤回のため議会と協議する。
日韓などの経済力を考えれば、米軍経費負担の増大は正当なことだ。アジアでの同盟関係へのトランプのコミットメントに疑いはない。トランプは日韓や欧州諸国と負担につき協議をしたいと考えている。
トランプはアジアその他の地域での外交が成功するためには必要なことを明確に理解している。基本となるのは、力を維持し、 大統領の述べることは実行されると同盟国、敵対国双方に信じさせることだ。トランプ政権になればアジア太平洋は格段に安定するだろう。それは米や同盟国の国益に資することだ。
出典:Alexander Gray & Peter Navarro,‘Donald Trump’s Peace Through Strength Vision for the Asia-Pacific’(Foreign Policy, November 7, 2016)
http://foreignpolicy.com/2016/11/07/donald-trumps-peace-through-strength-vision-for-the-asia-pacific/
この論説の前半は、オバマ・クリントン批判です。後半で政策の主張を展開していますが、それは三点に要約されます。第一は、外交のために経済を犠牲にすることはしないこと(オバマはTPPを安全保障目的のために利用したと批判)。第二は、海軍など米軍の増強を図ること。第三は、同盟国の経費負担を増やすべく日韓や欧州諸国と協議すること。顧みれば、レーガン時代にも負担分担が大きな問題でした。
やや安心な点もあります。中国や北朝鮮の問題は基本的に正しく理解されているように見えます。また、日本などアジアでの同盟関係へのトランプのコミットメントに疑いはないと明言しています。トランプ政権の考えもオバマのリバランス政策と基本認識において大きく違わないとも言えます。
■米国の国益重視
しかし、気になる点もあります。「米国の国益」重視が強調されています。偏狭な米国第一主義は問題を引き起こします。国際秩序維持のためには依然として米国の役割が不可欠です。トランプの「世界観」と「米国の世界での役割」の理解が今ひとつ分かりません。政権移行期においてもトランプ側から安心できる「世界観」と基本的な安保外交政策について発信されることが重要であり、政権発足後早期に国家安保方針を発表することが望まれます。
今後、トランプ側との協議に当たっては次の点を強調することが重要です。
(1)世界の安定のために米国の役割が不可欠であり、それなしでは世界の戦後秩序は崩壊する。米国の孤立主義は見たくないし見る余裕もない。
(2)我々は米国と共に働いていくし役割も果たしていく。日米で意思疎通に齟齬がないように早め早めに協議をしていく。同時に、アジアではASEAN、豪州と一緒にやっていくことが重要。そうしないと中国に分断される。安保、経済双方で皆が協力するマルチラテラリズムが重要(注:トランプにはマルチ思考より二国間思考が強いと言われる。貿易協定についても然り)。
(3)日米同盟関係はアジアの要である。経費分担に関するトランプの主張については、単純比較はできないが米国の同盟国の中で日本は最大の負担をしてきていることを理解してもらい、どうしても見直しが必要というのであれば、双方で先入観を持たないで現状をレビューすることは考えられる。但し今非常に強固である日米安保が不要な議論でガタガタすることは日米双方にとって不利益となる。
(4)アジアの最大の安保問題は中国と北朝鮮である。中国は尖閣に執拗に攻勢を続けている。日本は米国の安保条約上の役割表明を多としている。中国の台頭自体が問題なのではなく、中国とも協力していくが、中国による力の示威を含む振る舞いが問題である。きちっと対応しないとシステム上の問題になる。北朝鮮はクリティカルな段階に至っている。これらのアジアの問題について一方的な行動ではなく日米間の緊密な連携で対処していきたい。
(5)自由貿易なくして日米のダイナミックな経済発展はなかった。保護主義になれば皆が損をする。問題はできる限り国内措置で対処していく方が利益に適う。TPPについては農業など強い国内の反対もあるが国会の審議を進めており、早期成立を目指している。米国でも国内措置により雇用を守りながらTPPなど自由貿易を守っていくことを考えて貰いたい。
新政権の政策は、主要閣僚等に誰が任命されるかにより大きく影響されます。選挙戦でトランプに反対してきた共和党外交安保エスタブリッシュメントの多くが抜けており、そのためトランプチームは経験不足が指摘されてきましたが、チームが旨く作動し、政策がより現実的になることが期待されます。
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