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極なき世界の航海 沈む中間層が反旗、新秩序は米再生から
論説委員長 原田亮介
2016/12/2付
グローバル化が地球の隅々まで浸透するさまを描いた「フラット化する世界」(トーマス・フリードマン著)の出版からほぼ10年。米欧には反移民や反自由貿易のうねりがみられ、「世界の警察官」不在は中東などに混迷をもたらした。世界秩序の安定には、強い米国の復活が欠かせない。
「フラット化する世界」は地球が「小さく平ら」になり、個人の力が強くなる大変革期の到来を予言した。起爆剤はインターネットだ。今や人工知能(AI)やロボット技術を軸とする「第4次産業革命」(クラウス・シュワブ著)の大潮流になりつつある。
だが国際経済システムがどれだけグローバル化しようと、政治構造が国民国家を基本としていることに変わりはない。この矛盾が反グローバル化の火種となっている。
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「象のチャート」と呼ばれるグラフがある。世界の所得上位1%と、30〜60%の所得層は20年間で実質所得が6割も増えているのに、上位80%前後の所得層はほとんど所得が増えなかった。ニューヨーク市立大のブランコ・ミラノビッチ氏が分析した。
冷戦崩壊直前の1988年からリーマン・ショックが起きた2008年までの20年間、グローバル化とIT化は一握りの金持ちと中国などアジアで勃興した中間層に恩恵を与えた。一方で、先進国の中間層にはメリットが十分浸透しなかったことになる。
来年1月、米大統領に就任するドナルド・トランプ氏。環太平洋経済連携協定(TPP)離脱や、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉など、保護主義的な政策には危うさがつきまとう。
英国は来年春から欧州連合(EU)離脱の協議に入る。移民の流入を制限する一方で、従来通りにEUの単一市場の恩恵を受けるという「いいとこ取り」ができるとはとても考えられない。
自由主義からの逆走をポピュリズム(大衆迎合主義)と批判するのは簡単だが見落としてはならないことがある。
もともと先進国の中間層は人権や機会平等を尊ぶ、民主主義の中核的な担い手だ。それが豊かさが実感できないために、グローバル化に懐疑的になり、政治批判を先鋭化させているのだ。
米欧の内政の揺らぎは国際秩序にも影を落としている。
13年9月、オバマ大統領は「米国は世界の警察官ではない」と明言した。イラクとアフガニスタンでの戦争が長期化して米国民の批判が高まり、そう言わざるを得なかったのだが、シリア内戦はこれを機に泥沼化し、打開の糸口もみえない。
ロシアのクリミア侵攻や中国の南シナ海での領有権の主張、北朝鮮の相次ぐ核実験やミサイル発射――。米国の一極支配が明白な状況ならこんな混迷があっただろうか。
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グローバル化がもたらした地殻変動は、米国を先頭に主要7カ国(G7)が世界をリードする時代の終わりを予感させた。実際、世界の国内総生産(GDP)に占めるG7の比率は半分を切っている。
だが中国やインドなど新興国も交えたG20はG7を代替しない。中国は共産党の一党支配だし、サウジアラビアでは王政が続くなど政治形態はばらばらだ。価値観の共有ができなければ、合意形成も難しいだろう。
米政府の国家情報会議が近未来を予測した「グローバルトレンド2030」。GDP、人口、軍事費、技術投資、健康、教育、統治という要素から算出した「国力」は米国がトップであり、40年代まで中国に抜かれない。
米国の国際秩序への関与後退を称して「Gゼロ」という声もあるが、当面米国以外に世界の盟主は見当たらない。
大統領選で露見した国内の分裂を修復し、中間層を再生できるかどうか。米国の復活は世界の行方も左右するだろう。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO10113410Q6A131C1M20100/?dg=1&nf=1
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