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トランプ次期米大統領の長女イバンカ氏(右)の夫ジャレット・クシュナー氏(Gettyimages)
トランプが溺愛する義理の息子の正体 反縁故法を乗り越え、政権入りは可能か?
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8353
2016年11月30日 海野素央 (明治大学教授、心理学博士) WEDGE Infinity
今回のテーマは「トランプに影響力を行使する人物」です。現在トランプ政権の閣僚人事に焦点が当たっていますが、その一方で選対本部及び政権移行チームの人事まで介入してきた人物にも注目が集まっています。共和党ドナルド・トランプ次期米大統領の長女イバンカ氏の夫ジャレット・クシュナー氏(35)です。本稿では、事実上の選対本部長と呼ばれた同氏の役割とトランプ氏との関係について述べます。
■人事権への介入
シュクナー氏は不動産開発事業を手がける「クシュナー・カンパニーズ」のCEO(最高経営責任者)です。本社はニューヨーク市の5番街にあります。同氏はハーバード大学を卒業し、その後ニューヨーク大学で経営学修士号と法務博士を取得しています。
イバンカ氏とは不動産開発事業のブローカーを通じて出会いました。1年間の交際後一旦は別れたのですが、ある日プライベートのパーティーで再会し、それがきっかけとなって結局結婚に至ったのです。クシュナー氏は正統派ユダヤ教徒で、イバンカ氏はユダヤ教に改宗しています。
さて、共和党候補指名争いでクシュナー氏の名前が上がったのは、トランプ陣営の初代選対本部長であったコーリー・ルワンドスキー氏が突然更迭になったときでした。「トランプはトランプらしく」をスローガンにして戦い、主流派の本命ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事や保守派のスコット・ウォーカーウィスコンシン州知事などを撤退に追い込んだ功績にもかかわらず、ルワンドスキー氏は事実上の解雇となったのです。その背景には、同氏がイバンカ氏とクシュナー氏と対立したからだと米メディアは報じています。
さらにトランプ氏が採用した大物政治コンサルタントポール・マナフォート氏が更迭された際も、同氏がイバンカ氏とクシュナー氏と不和になったのが原因だと見られています。2012年米大統領選挙において共和党候補ミット・ロムニー氏の5人の息子たちはここまで人事に介入していませんでした。
■インサイダーの中のインサイダー
ルワンドスキー・マナフォート両氏の更迭に加えて、トランプ氏の副大統領候補の指名にもクシュナー氏が絡んでいました。クリス・クリスティニュージャージー州知事は共和党候補指名争いから撤退すると、即座にトランプ候補(当時)を支持表明しました。それにもかかわらず、クシュナー氏はトランプ候補の副大統領候補にマイク・ペンスインディアナ州知事を強く推したのです。その背景にはクシュナー氏の父親が脱税、選挙資金の違法献金及び証人への脅迫で2年間の実刑判決を受けたことがあると言われています。当時の検察官はクリスティ氏だったのです。父親の判決が下ったとき、クシュナー氏は検察官を目指してマンハッタン区の検察官の事務所でインターンをしておりましたが「法の解釈にはニュアンスがある」と実感し夢を捨てたのです。
トランプ氏が次期大統領に決まると、政権移行チームの委員長であったクリスティ氏は副委員長に降格となったのです。強硬派で次期主席戦略官兼上級顧問のスティーブン・バノン氏が共和党主流派のクリスティ氏に反対したという報道がありますが、クシュナー氏の力が働いたという見方が有力です。同氏はトランプ氏のインサイダーの中のインサイダーであり、意思決定にかなりの影響力があると見て間違いありません。ではどうしてトランプ氏は娘婿を高く評価しているのでしょうか。
■2人の類似点
影の選対本部長とも言われたクシュナー氏は、トランプ氏の原稿の草稿、デジタル及びマーケティング戦略から人事まで幅広く関与していたと見られています。同氏は、義父のために情報を集めて直接報告する「情報収集役」を果たしているのです。
選挙後、オバマ大統領がホワイトハウスにトランプ氏を招いて会談を行った際、同氏は長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏や次男エリック氏ではなく、クシュナー氏を側近として連れて行ったのです。レジデンス南側の庭を大統領補佐官デニス・マクドノー氏と歩く姿が撮影されています。安倍晋三首相がニューヨークのトランプタワーでトランプ氏と初めて会談をした際も、内閣広報室が公開した写真を見ますと、クシュナー氏とイバンカ氏が出迎えています。
トランプ氏とクシュナー氏には類似点が存在しています。トランプ氏の父親フレッド氏は、ニューヨーク市クイーンズ区で主として中間所得層を対象に不動産開発事業に携わっていました。父親に仕込まれたトランプ氏は、マンハッタン区で富裕層を相手に事業を展開することを夢見てそれを実現させたのです。
クシュナー氏も父親チャールズ氏の不動産開発事業を引き継ぎ、ニュージャージー州からマンハッタン区に打って出ます。それが功を奏し、クシュナー氏は実業家として名声を得たのです。トランプ氏は、若き頃の自分と現在のクシュナー氏を重ね合わせているのです。
■政権入りは可能か?
クシュナー氏に対する特別な思いを寄せるトランプ氏ですが、1967年に制定された「反縁故法」が障害になっています。同法によれば、「公職者は自分が務めている政府機関に親族を任命、採用及び昇格をさせてはならない」となっています。公職者とは大統領、親族は娘婿を含みます。
ただ過去にはビル・クリントン元大統領がファースト・レディのヒラリー氏を医療保険制度問題特別専門委員会の委員長に任命した例があります。このときは、「反縁故法」がホワイトハウスや大統領府のスタッフには適応しないという判決が下されました。
トランプ氏は反縁故法の存在にもかかわらず、中東政策に関心があるクシュナー氏を特使、上級アドバイザーないし特別顧問として採用する道を探っているのではないかと思われます。選挙期間中、トランプ選対はまるで同氏、「トランプ・チルドレン」並びにクシュナー氏による家族経営のようでした。米国民は、ホワイトハウスまでも家族経営になると「私物化」と見なして好ましいものと捉えないのではないかと筆者はみています。
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