Column | 2016年 11月 22日 13:51 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:TPP米離脱で中国が負うアジア自由貿易推進の使命http://s2.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20161122&t=2&i=1162608209&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXMPECAL04I 11月21日、米国は自ら音頭を取ってきたTPPから離脱する様相となった。これに幻滅したアジア各国の指導者は「中国主導」の代替案が打ち出されるのを待ち構えているが、当の中国政府は新たな多国間貿易協定の枠組み構築で主導的役割を果たしたくないと表明した。写真は中国の習近平国家主席。ペルー首都リマで開催されたAPEC首脳会議で20日撮影(2016年 ロイター/Mariana Bazo) Pete Sweeney {香港 21日 ロイター BREAKINGVIEWS} - 米国は自ら音頭を取ってきた環太平洋連携協定(TPP)から離脱する様相となった。これに幻滅したアジア各国の指導者は「中国主導」の代替案が打ち出されるのを待ち構えているが、当の中国政府は新たな多国間貿易協定の枠組み構築で主導的役割を果たしたくないと表明した。 中国としては、TPPのとん挫で米国が見舞われた国威の失墜を自分たちも味わいたくないと考える気持ちはよく分かる。だが世界第2位の経済大国となった中国は、好むと好まざるとにかかわらず、指導的な立場に置かれている。 中国はTPPから外された後、これに真っ向から対抗する姿勢を取ってきた。具体的にはアジアインフラ投資銀行を設立し、国際通貨基金(IMF)に人民元の特別引き出し権(SDR)構成通貨採用を働きかけ、「一帯一路」構想に基づく大規模投資を通じてアジアやアフリカ、欧州諸国との関係強化に動いている。 ただ米大統領選のトランプ氏勝利によってTPPの命運が尽きたことで、アジアの指導者はおのずから中国がかじ取り役として需要低迷に苦しむこの地域の貿易コスト削減に尽力することを期待するようになりつつある。データストリームのデータによると、APEC加盟国間の貿易額は2014年以降減少が続き、今年第2・四半期は約6%減った。 流れは急速に中国側に傾いている。ベトナムはTPP批准案の国会提出を先送りし、オーストラリアは東アジア地域包括的経済連携(RCEP)とより野心的なアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の支持を打ち出した。RCEPは、ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国プラス中国、日本、オーストラリアなど6カ国の貿易障壁引き下げと投資促進を提案したものだ。米国はRCEPとFTAAPのどちらでも対象外となっている。 中国は今、米国を犠牲にした上で停滞した貿易協定交渉を進める絶好の機会を確保している状況を好ましく思っていないように見える。強力な貿易協定が中国が保護している産業を競争にさらすという点も踏まえると、TPPの圧力がなくなった場合に、同国がいったいどれだけ本気でアジアの自由貿易を推進するつもりがあるのかという疑問が浮上してくる。 米国の覇権に不平を言うのは簡単だが、覇権と指導力は同じではない。アジアの貿易が必要としているのは指導力、それも中国のより一層の指導力の方だ。 ○背景となるニュース *中国外務省の耿爽報道官は18日の会見で、同国は東アジア地域包括的経済連携(RCEP)やアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の推進で主導的な役割を追求しないと語った。国営新華社が伝えた。 *アジア太平洋の新たな自由貿易協定を成立させる道筋としては、中国が後押しするRCEPが最有力候補とみなされている。米国はRCEPから除外されている。 *オバマ米大統領は先週、任期中にTPPの議会承認を取り付けることを断念し、トランプ次期大統領と新たな議会に決定を委ねると述べた。TPPは中国を含んでいない。 *トランプ氏は選挙期間中、TPP承認を「破滅的」と明言してきた。 *ベトナムのフック首相は17日、TPP批准案の国会提出先送りを表明した。 *オーストラリアのチオボー貿易・投資相は16日付英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、同国はFTAAPを支持すると語った。 *筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。 *このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。 *見出しを変更して再送します。 http://jp.reuters.com/article/asiapac-trade-breakingviews-idJPKBN13H07W?sp=true
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