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[FT]トランプ氏顧問ら、対中貿易戦争に重き置かず
2016/11/16 6:30日本経済新聞 電子版
Financial Times
米保護主義の新たな時代が世界経済に有害な結果をもたらすとの懸念が広がるなか、ドナルド・トランプ次期大統領の顧問らが、中国との全面貿易戦争の可能性を押し下げ始めた。
実際、一部のアナリストは、トランプ氏が米国の経済成長を押し上げることを目指す減税とインフラ整備計画に集中し、選挙戦で打ち出した貿易に関する厳しい公約は二の次になるのではないかと考えている。この見通しは8日の選挙以来、市場を沸かせてきた。
「トランプ氏大統領選出で米国激震」という見出しで大統領選の結果を報道する中国の新聞。習近平国家主席は14日、トランプ氏と電話協議した
ニューヨークの投資家でトランプ氏のアドバイザーを務めるウィルバー・ロス氏は先週、「貿易戦争は起きない」と語った。
ロス氏に言わせると、中国からの輸入品に45%の関税を課すというトランプ氏の選挙中の脅し――エコノミストらが中国との貿易戦争の潜在的な引き金として飛びついた材料――は誤解されており、交渉戦術にすぎないという。
そのような数字は、中国の通貨・人民元が45%過小評価されているという見方に依存するとロス氏は言う。国際通貨基金(IMF)は、人民元は公正に評価されていると述べており、米政府高官らは、中国政府による最近の為替市場介入はいずれも市場主導の元安のペースを落とすよう設計されたもので、ほぼ間違いなく米国の利益にかなうと指摘する。
■対米投資評価を厳格化する可能性
全面的な貿易戦争は疑わしいものの、トランプ政権が中国に寛大になる方針を意味するわけではない。トランプ氏は、政権発足から最初の100日以内に中国を為替操作国と認定するよう財務長官に指示することを約束した。退任が近いバラク・オバマ大統領は中国を挑発することを恐れて(このような指示を)避けてきた。
為替操作国の認定は、おおむね象徴的意味合いが強く、貿易に直接的な影響はほとんどもたらさないが、コーネル大学教授でかつてIMFの中国部門を率いたエスワー・プラサド氏は「ほぼ確実に中国からの攻撃的な反応を招き、2カ国間の緊張を急激にエスカレートさせるだろう」と言う。
トランプ氏は、外国からの投資の規則と、国家安全保障に重点を置いた対米外国投資委員会(CFIUS)の評価プロセスを厳格化する可能性もある。
中国はかねて、現行制度は中国企業を差別していると訴えてきた。だが、トランプ氏は、CFIUSの権限を拡大し、差し引きの経済的恩恵の評価やその他の戦略的な検討事項を加えるよう求める米議会の要求を受け入れると見る向きもある。そうなったら、中国の対米投資がさらに阻止されるかもしれない。だが、そのような対策は、米国に有利な方向へ傾いていた経済関係を一部、直撃することになる。
調査会社ロディアム・グループの新たな調査研究によると、1990年から2015年にかけて、米国の対中直接投資は累計2280億ドルに達した。これに相当する中国の対米投資は640億ドルだった。
一方、ロディアムによれば、今年だけで中国の対米直接投資は過去最高の300億ドルに達する見込み。この状況に悪影響を及ぼすどんな出来事も米国の労働者に打撃を与えるだろう。
■ペンス次期副大統領は自由貿易主義
次に何が起きるかは、トランプ氏が誰を連れて政権の座に就くかに左右される。鉄鋼大手ニューコアの元最高経営責任者(CEO)で、長年、米国は中国に対してより強硬な姿勢を取るべきだと主張してきたダン・ディミッコ氏は、トランプ氏の政権移行チームで通商問題の連絡係を務める。商務長官と米通商代表部(USTR)代表の候補になる可能性があるディミッコ氏は12日、トランプ政権が貿易について、選挙後により穏健な路線を取っているという考えは「間違った噂」だと本紙(フィナンシャル・タイムズ)に語った。
やはり選挙戦のアドバイザーを務めた経済学者のピーター・ナバロ氏はよく知られた対中タカ派で、2013年の映画「デス・バイ・チャイナ」(注:Death By China。ナバロ氏は監督として、米市場に輸入される中国製品を雇用喪失をもたらした大きな脅威として描いている)はトランプ氏から「重要なドキュメンタリー」と称賛された。
だが、政権移行の責任者となった次期副大統領のマイク・ペンス氏は、インディアナ州知事として投資を呼び込むために中国を訪問した自由貿易主義者だ。さらに共和党の支配者層が、ロルフ・ランドバーグ氏(米国商工会議所の元ロビイストで、移行チームの通商政策の実行責任者に任命)と衝突している兆候がすでに見られる。
「金融市場の今の反応を考えると、トランプ氏の通商チームは、政策の貿易部分が財政刺激策の部分(から得る経済的恩恵)を台無しにすることは望まないだろう」。米ピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、ゲーリー・ハフバウアー氏はこう話す。
中国では、選挙遊説での発言にもかかわらず、楽観的な人もいる。中国政府系の冶金工業規画研究院の李新創院長は「大半の米大統領候補は、いざ大統領に就任したときに、脅しを実行しないものだ」と言う。
だが、まだおびえている人もいる。「ポスト冷戦時代では、トランプは前例のない保護主義者だ」。北京の中国人民大学で国際関係を教える時殷弘教授は言う。「遅かれ早かれ、彼の保護主義とポピュリズム(大衆迎合主義)は米中通商関係にダメージを与えるだろう」
By Shawn Donnan in Washington and Tom Mitchell in Beijing
(2016年11月14日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO09553620V11C16A1000000/
米商務長官候補、知日派ロス氏が浮上
2016/11/16 5:11
知日派で投資家のウィルバー・ロス氏
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知日派で投資家のウィルバー・ロス氏
【ワシントン=河浪武史】トランプ米次期政権の商務長官に、知日派で投資家のウィルバー・ロス氏の就任案が浮上した。ロス氏は企業再建を得意とする著名投資家で、大統領選ではドナルド・トランプ氏の経済政策顧問を務めた。2000年に幸福銀行(当時)を買収するなど日本でも投資経験があり、日米交流団体の会長を務めるなど親日派の1人としても知られる。
著名投資家のカール・アイカーン氏が15日、トランプ氏との会談後に同氏の人事構想を明らかにした。財務長官には、陣営の財務責任者を務めた銀行家のスティーブン・ムニューチン氏が有力だと指摘した。両氏がそれぞれ就任すれば、ウォール街出身者が財政、経済政策を担うことになる。
トランプ氏は大統領選で、貿易政策を取り仕切る米通商代表部(USTR)と産業政策を担う商務省の統合に言及したことがある。ロス氏はトランプ氏に米国の貿易赤字解消を進言しており、次期政権の産業・通商政策を主導する可能性もある。
ロス氏は従来は自由貿易の推進派で、知日派の1人として日本の環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を強く促してきた経緯もある。日本は反TPPなど保護貿易主義を掲げるトランプ氏の通商政策を注視しているが、実業家のロス氏が就任すれば、現実路線に転じる可能性もある。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGN15H3M_W6A111C1000000/
トランプ外交 落ち着けぬ世界
2016/11/15 3:30日本経済新聞 電子版
The Economist
次期米大統領になるドナルド・トランプ氏は国家安全保障担当チームを編成しながらアドバイザーらに尋ねた。「君たちは『打ち重ね』が何か知っているか?」。その場にいたある米軍幹部は知らないと言った。するとトランプ氏は高層ビルを建てるときの土台部分に、強度を保つため一気に生コンクリートを投入することだと説明した。その作業ではミキサー車を何街区も待機させておくのだという。この会話が教えるのは、難しい専門用語を知っているのは何も将官だけではないということだ。
■怒りっぽくて自慢好きな性格
トランプ氏の勝利でポピュリズムの勢いが増しそうだ。英国ではEU離脱が後押しされたとの論調も=ロイター
これは典型的なトランプ氏の一面を表している。怒りっぽいが自慢好きなのだ。過去に大統領に選ばれた人物で、トランプ氏ほど世界の仕組みを知らない人はそういない。同氏ほど第2次世界大戦後、70年かけて米国が築いてきた世界秩序を覆そうとしている次期大統領も思いつかない。
トランプ氏は外交政策に関しては説明が曖昧で、詳細な計画より「米国第一主義」といったスローガンを好む。米国の同盟国はぞっとしながらも、慌ててトランプ氏に祝辞を贈っている。
外交政策のなかで主張が明快なのが貿易だ。同氏は昨年、本誌エコノミストに(米国が中国に輸入代金を払っていることについて)「我々は中国に金を巻き上げられている。これは我が国にとって歴史上最大の窃盗だ」と語った。
米鉄鋼大手ニューコアの元最高経営責任者(CEO)でトランプ氏の通商アドバイザーのダン・ディミッコ氏は「(米国の)貿易赤字の時代は終わった。これからは『話し合おう。そうでなければ関税をかけるぞ』だ」と話す。
米シンクタンクのピーターソン国際経済研究所はトランプ氏の通商政策の影響を試算した。例えば、世論の反対などで導入から1年以内にトランプ氏が関税引き下げに追い込まれる「貿易戦争取りやめ」の場合でも、世界のサプライチェーン(供給網)は混乱し、米民間部門で130万人の雇用が失われる。メキシコ、中国との「全面貿易戦争」になれば、米国人480万人が失業しサービス部門にも影響が及ぶという。
トランプ氏の政策の衝撃は海外の方が大きいかもしれない。選挙後に通貨ペソが対ドルで急落したメキシコは特にそうだ。中南米にとっては、同氏の勝利は悪いタイミングで訪れた。左翼ポピュリズム(大衆迎合主義)が後退し、北米との貿易拡大への道が開かれ始めたときだったからだ。
トランプ氏は長年の同盟国も防衛費を公正に負担すべきだと何度も主張してきた。戦後の国際安全保障の礎が根底から覆される恐れがある。なかでも、中国が近隣諸国を脅かしているアジアと、ロシアがクリミアを併合しウクライナ東部にも軍事介入した欧州で、その危険が高い。
アジアでは米国の戦略は長らく3本の柱に支えられてきた。開かれた貿易とそれによる繁栄、日本やオーストラリア、シンガポールとの強固な同盟関係、そして民主主義の価値観だ。トランプ氏がこれらをどう思っているかは不明だ。同氏は米国がアジアで最も信頼を置く日本を不安にさせるだろう。中国は南シナ海などで強硬路線を推し進めるかもしれない。
中国は米国との貿易戦争によって打撃を受けるが、国内のタカ派は地政学的な好機とも捉える。「トランプ氏が米国と西側にどんな混乱をもたらすか見てみよう」。中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報はこう書いた。
トランプ氏の勝利は北大西洋条約機構(NATO)にも衝撃を走らせた。NATOにとって最も脆弱な地域はバルト諸国だ。NATOはバルト諸国へ陽動部隊の循環配備を始め、緊急対応部隊をまとめ上げた。ロシアがオバマ政権のレームダック期間中に新たな「既成事実」をつくりはしないかと恐れ、バルト諸国も最悪の事態に備えて動き出すだろう。
■米ロ関係改善 プーチン氏期待
実際、そうするかどうかは別として、ロシア政府はすでに勝利の叫びを上げ、トランプ氏がプーチン大統領を公然とたたえるのを歓迎している。プーチン氏は米ロ関係改善への期待を表明した。同氏の望みは欧米の制裁解除と(米英と旧ソ連が第2次大戦後の欧州の枠組みを決めた)ヤルタ協定のような取り決めで「近隣(旧ソ連諸国)」もロシアの勢力圏だとトランプ氏に認めてもらうことだ。
中東各国も落ち着かない。トランプ氏は、独裁者を倒すため米政府がイラクやリビアに介入したことをあざ笑った。米政府がイラクの油田を占拠しなかったことも批判し「我々は(イラクに)乗り込んで3兆ドル(約322兆円)使った。大勢の命を失った。それでどうなったかといえば何一つ得なかった。戦利品は勝者のものだったはずだ」と選挙前に語った。
イラクからの米軍撤退で過激派組織「イスラム国」(IS)が伸長する空白が生じたと見て、トランプ氏はオバマ氏をISの「創始者」と呼んだ。トランプ氏はISを「爆撃でたたきのめす」と述べている。大統領に就任する来年1月20日までにイラク第2の都市モスルを奪還できなければ、トランプ氏は米国防総省にIS掃討作戦を最後までやらせるかもしれない。だが、中東にその後も関与する意欲はほとんど示していない。アラブの指導者たちはオバマ氏の政策に衝撃を受けてきたが、それ以上にトランプ氏の行動が予測できず、米国の関与がなくなりそうなことに懸念を深めている。
■仏も離脱ならEU崩壊の可能性
英国の欧州連合(EU)離脱を決めた英国民投票に続くトランプ氏の大統領選勝利は、世界各地のポピュリストを勢いづかせるだろう。とりわけ欧州ではそうだ。次の試練は12月のイタリアの国民投票だ。レンツィ首相が求める憲法改正への支持は得られそうにない。政権交代に追い込まれ、EU懐疑派のポピュリスト政党「五つ星運動」が権力の座に就く可能性がある。
そして、フランスだ。今や来春の大統領選で、極右政党「国民戦線」党首、マリーヌ・ルペン氏が勝つことは考えられないことではない。同氏はフランスのEU離脱を問う国民投票を望んでいる。もし実現すれば、EUは終わりを告げるだろう。
米国が内向き志向を強め、英国がEU離脱へ向かい、フランスが極右思考に傾き始めるなか、欧州の秩序を保つ責任はドイツにのしかかる。ところが、難民危機で立場が弱くなったメルケル首相は「大いに気をもみ発言はするが、事実上全く行動を起こせないだろう」と元駐ドイツ米国大使のジョン・コーンブラム氏は言う。
市民と直接かかわりがなく、複雑で官僚的な組織のEUは、扇動家には格好の標的だ。駐米フランス大使のアロー氏が(今は削除されたが)ツイートしたように「英国のEU離脱決定、今回の選挙と、もはや何でも起こる時代になった。我々の目の前で世界が崩壊している」のだ。
(c)2016 The Economist Newspaper Limited. Nov.12th, 2016 All rights reserved.
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