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「トランプ旋風から見えるもの」(くらし☆解説)
2016年11月11日 (金)
出石 直 解説委員
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/256753.html
8日に投票が行われたアメリカの大統領選挙で共和党のトランプ氏が民主党のクリントン氏を破り、次の大統領に選ばれました。出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。
【今回の選挙結果、どう見ますか?】
一言で言ってビックリでした。以前、この番組で“青い州“と”赤い州“というお話をしました。過去の選挙結果をもとに、民主党が強い州が”青い州“、共和党が”強い州“が赤い州と呼ばれています。そしてどちらが勝つかわからない激戦州、この青でも赤でもない州の行方が勝敗の鍵を握っているとお話しました。
しかし今回の選挙結果を見てみますと、激戦州だけでなく“青い州”も赤い州になってしまいました。これがトランプ氏の勝因だと思います。例えばペンシルベニア州、フィラデルフィアやピッツバーグがある州ですが、ここでは24年前の1992年の選挙から6回連続で民主党の候補が勝利した“”青い州でしたが、今回はトランプ氏が制しました。絶対勝たなければならない“青い州”を取りこぼしてしまったのはクリントン陣営にとって大誤算だったと思います。
【選挙前はクリントン氏が優勢と伝えられていたのに、なぜこうした結果になったのでしょうか?】
メディアも多くの専門家も完全に読み違えてしまいました。アメリカ社会で今、起きていること、アメリカ国民が考えていることを、十分に掴むことができかったのだと思います。
【“隠れトランプ”という言葉も聞かれましたよね。】
本当はトランプ氏を支持しているけど、支持しているとは答えなかった人達がかなりいたことは間違いありません。なぜ隠れトランプなのか、なぜ隠れていたのかですが、アメリカにはポィティカル・コレクトネスpolitical correctnessという言葉があります。
“政治的正しさ“とでも訳しましょうか。差別や偏見は正しくないという考え方です。
例えば警察官は男性だけなく女性もいますからポリスマンではなくポリス・オフィサー、黒人はブラックではなくアフリカン・アメリカンと呼びましょうというのがポリティカル・コレクトネスです。アメリカは差別や偏見に非常に敏感な社会ですので、こうした考え方が広く浸透しています。「移民を追い出す」とか「イスラム教徒の入国は禁止」といったトランプ氏の発言は明らかにポリティカル・コレクトネスに反しますので、表立ってトランプ氏を支持しているとはなかなか言えなかったのだと思います。
事前の世論調査と選挙結果がかなり違ってしまったのは、こうした事情があったからではないでしょうか。
【誰に入れるかと聞かれても本音は言えなかったということですね。】
その通りです。本音で答えると「政治的に正しくない、差別主義者だ」とみられてしまうので、建前で回答していたのではないでしょうか。
では実際に、どういった人達がトランプ氏に投票したのか、アメリカの主要メディアが行った出口調査を見てみましょう。
トランプ氏に投票した人とクリントン氏に投票した人にはいくつかの際立った違いがみられます。
【男女】まず男女別では、男性の53%がトランプ氏に、女性の54%がクリントン氏に投票しています。あまり差がないようにも見えますが、前回2012年の選挙では共和党のロムニー氏に入れた男性は48%でした。男性票はかなりトランプ氏に流れたようです。
【女性のクリントン支持が意外に少ないですね。】
女性の4割以上(42%)がトランプ氏に投票しています。女性初の大統領を目指したクリントン氏ですが、女性票を掴み切れなかったことが敗因のひとつではないかと思います。
【人種】次に人種別に見てみますと、総人口の7割を占める白人の6割近く(58%)がトランプ氏に投票しています。
ここで注目して頂きたいのは、アメリカで人口が急激に増えているヒスパニック、アジア系といった非白人でも3割近く(29%)がトランプ氏に投票していることです。
マイノリティ層に強いと見られていたクリントン氏ですが、黒人(88%)を除くとマイノリティを抑えきれていなかったことがわかります。
【居住地】住んでいる地域によってもはっきりと支持が分かれました。
人口5万人以上の都市部に住んでいる人では、6割近く(59%)がクリントン氏に投票しているのに対して、地方の小さな町や村では6割以上(62%)がトランプ氏に票を投じています。州単位ではなく行政府単位で細かく見ていきますと、都市部ではクリントン氏、農村部ではトランプ氏という傾向がはっきりと見て取れます。アメリカは広いので都市部だけは州全体をおさえたことにはなりません。これもクリントン氏の票が伸びなかった理由のひとつだと思います。
【学歴】興味深いのはこちらです。
大卒以上の白人では、クリントン氏に入れた人が45%、トランプ氏が49%とそれほど差がないのですが、大学を出ていない白人では、トランプ氏が67%、クリントン氏が28%とはっきりとした差が見られます。学歴が低いから貧しいと一概に決めつけることはできませんが、“プア・ホワイト”と呼ばれる人達、移民に仕事を奪われていると危機感を抱いている人達がトランプ氏を強く支持したことが伺えます。
【経済】それを裏付けるようなデータもあります。
こちらはアメリカ経済について聞いた質問です。アメリカの経済は「非常に良い」、「良い」と答えた人の8割前後がクリントン氏に入れているのに対して、「悪い」と答えた人の8割がトランプ氏に投票しています。
こうして見てきますと、
▽現状に満足している、アメリカは正しい方向に進んでいると考えている都市部に住む比較的豊かな層はクリントン氏に、
▽反対に現状に満足しておらず、政治も経済も悪い方向に進んでいる、変えていかなければならないと感じている白人労働者層の多くがトランプ氏に投票したことがわかります。
【トランプ旋風と呼ばれましたが、今回の選挙結果は、アメリカの政治や経済に対する人々の不満の表れと考えて良いのでしょうか?】
アメリカの政治や経済が良いか悪いかというよりは、良いと感じているか、悪いと感じているかで、アメリカの世論が大きく割れたのが今回の選挙だったように思います。アメリカの正式名称はUnited States of America ですが、今のアメリカは United ではなくDivided States of America だと言う人もいます。白人と非白人、豊かな層と貧しい層、都市部と農村部など、社会の分断と対立が進んでいるというのです。
当選を確実にしたトランプ氏は、クリントン氏の健闘を称え「今こそ分断の傷を修復し、ともに結束していく時だ」と呼びかけました。一方で、全米各地でトランプ氏に抗議するデモが行われるなど反発も広がっています。
激しい選挙戦で分断された世論を統合し融和に向かうことができるのかどうか、Divided からUnited に、結束したアメリカを取り戻せるかどうかが、これがこれからの焦点だと思います。
- 欧州でも既存政治批判する政党が勢力増す可能性〜来年、仏や独での大統領選挙などへの影響も注目されて…/nhk 仁王像 2016/11/11 20:08:59
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