2016年11月10日(木) 米大統領にトランプ氏 世界にも衝撃・警戒 共和党 8年ぶりに政権交代 〖ワシントン=洞口昇幸〗8日に投開票された米大統領選は現地東部時間9日未明(日本時間同日夕)、共和党候補で実業家のドナルド・トランプ氏(70)が、当選に必要な「大統領選挙人」(総数538)の過半数となる284人を獲得し、勝利を決めました。投票日直前まで世論調査で優勢傾向にあった民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官(69)に競り勝ちました。この結果に、世界にも衝撃が走りました。 トランプ氏の勝利で民主党から共和党への政権交代となり、来年1月20日から8年ぶりに共和党政権が発足することになります。2009年から2期続くオバマ現大統領(民主党)は、米国の憲法規定で3選出馬は禁止されています。 トランプ氏は、移民やイスラム教徒などへの差別的な発言を繰り返し、排外的な政策を唱えてきました。経済政策では、法人税の大幅減税による国内雇用の創出を主張。日本など同盟国に軍事同盟維持の費用負担増を課す意向も示しています。一方で環太平洋連携協定(TPP)に反対の姿勢です。 米メディアの報道によると、クリントン氏はトランプ氏に電話し、敗北を認めました。トランプ氏はニューヨークで勝利演説し、「全ての米国民のための大統領になる。われわれの偉大な国のために団結しよう」と訴えました。 トランプ氏の勝利に世界の反応はさまざまで、トランプ氏が「国境に壁を建設する」と述べていた相手国のメキシコ政府は警戒感を強めています。 欧州からは、米国の関与の低下を警戒する声がでています。 大統領選と同時に行われた米連邦議会の上下両院選は、引き続き共和党が両院とも過半数を占めました。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-10/2016111001_01_1.html 2016年11月10日(木) 米大統領選挙の結果について 志位委員長が談話 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-10/2016111001_02_1.jpg (写真)志位和夫委員長 日本共産党の志位和夫委員長は9日、アメリカ大統領選挙の結果について次のような談話を発表しました。 ◇ 8日おこなわれたアメリカの大統領選挙で、共和党のドナルド・トランプ氏が勝利した。 トランプ氏の勝利は、格差と貧困の拡大、中間層の没落などに苦しむアメリカ社会の矛盾と行き詰まりの一つの反映にほかならない。それはまた、多国籍企業中心のグローバル資本主義の陥っている深い矛盾を示している。 トランプ氏は、移民問題などいくつかの危惧される発言を行っているが、新大統領として、今後どのような政策を提示するのか、注視していきたい。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-10/2016111001_02_1.html 2016年11月10日(木) 大接戦米大統領選 トランプ氏の勝利 懸念・期待 迷いながら選択 激戦州の有権者の声は 米大統領選挙が実施された8日、激戦州の北東部、南部の投票所を訪ね、有権者の声をききました。民主党のクリントン候補、共和党のトランプ候補それぞれに入れた人たちから出てくる言葉は、格差の拡大など現状に対する懸念や怒り、それを打開する方向への期待が入り交じっており、迷いながらの選択であることをうかがわせていました。 (ノースカロライナ州ロッキーマウント=遠藤誠二、ペンシルベニア州フィラデルフィア=洞口昇幸) ノースカロライナ州の町、ロッキーマウントに向かう高速道路をまたぐ路上では、「トランプ」と書かれたポスターを掲げ有権者にアピールする市民の姿をみかけました。 投票所では、クリントン、トランプ両陣営の運動員が、投票の仕方や候補者の紹介などを訪れる有権者に説明していました。 アフリカ系の中年女性、リンダさんは、「今回の選挙の争点は、人口の1%の人たちに富が集中する経済システムを変えるかどうかです。一部の大企業がもうけをあげるのではなく、庶民がまともにくらせるようにしてほしい。トランプ氏は自身の利益のことしか考えていない」と話します。 たいして白人の中年女性は、「経済、移民、同性婚。選挙の焦点はたくさんあったが一番の問題は、女性候補者による私的メールの使用など犯罪まがいの行為。今回はトランプ氏が勝利し政治をかえる絶好の機会。もしクリントン氏が大統領になったら弾劾にかけられるべきだ」と言い切りました。 「歴史をつくろう」 ペンシルベニア州最大の都市フィラデルフィア。投票場に向かう道すがら、「投票済」を表すシールを胸元などに貼り付けた通行人が目立ちました。 歩道にはチョークで、「歴史をつくろう」「投票場はこちら」などの文字が。環境保護団体の人たちが市民に投票を呼び掛けたり、投票場の場所を知らせたりするイベントを路上でくりひろげていました。 投票を終えた白人の男子大学院生(23)は、「クリントン氏にそんなに多くは期待していないが、どちらに大統領の資質があるかで選びクリントン氏に入れた。トランプ氏の政策には中身がなく、(経済やテロで)不安感を持つ人々をあおるだけです。とにかく中間層や勤労世帯の暮らしを良くしてほしい」。 白人の看護学生のクイン・クレッグさん(22)は「クリントン氏の外交政策、中東のシリアに関連する公約で、危険な部分があると思います。でもトランプ氏と比較して、クリントン氏が大統領になった場合の政策決定のほうが、最悪な事態を避けられると思いました」と迷いながらの選択であったことを語ります。 「答える必要ない」 ロッキーマウント、フィラデルフィアの双方ともトランプ支持という有権者の口は概して重く、「支持した理由は」という質問に、「答える必要はない」と怒る人もいました。 経済格差広がり、中間層消滅 既存政治への不信・怒りを反映 接戦となった米大統領選挙を制したのは共和党候補のドナルド・トランプ氏でした。政治経験の全くないアウトサイダー(部外者)候補のトランプ氏が民主党候補のクリントン前国務長官を抑えて勝利した背景にあるのは、経済成長や繁栄から取り残された有権者の既存政治に対する怒りや不信です。 「雇用がなく、人口は減り、地方都市は荒廃するばかりだ。このままでは未来がない」(トランプ氏を支持する30歳男性)。「医療や教育を受けられない人々が多すぎる。こんな国を次の世代に残せない」(クリントン氏支持の46歳女性)。各地の取材で出会った有権者が共通して語っていたのは“このままでは米国が立ち行かなくなる”という切迫した危機感でした。 米国の経済政策研究所(EPI)によると、2009年から13年にかけて富裕層上位1%の収入の伸び率は残りの99%の約25倍になりました。これまでにない経済格差が広がり、中間層が消滅し始めています。 中高年の自殺増加 今春発表された研究によると、米国民の現在の自殺率は過去30年で最も高くなっています。特に中高年で増加しており、専門家は背景に「貧困や絶望」があると指摘します。若い世代でも、学費ローンを利用した大学生の4人に1人が滞納や債務不履行の状態です。努力すれば夢を実現できるというアメリカンドリームは消え去ろうとしています。 「腐敗した既存政治がつくったのは貧困だけだ。特権を持ったワシントンの連中に、置き去りにされた中間層の声を聞かせよう」 トランプ氏は自らが既存の政治家でないことを強調し、国民の不満や怒りを吸い上げました。「強い米国を取り戻す」という公約のもと、工場の海外移転や鉱山の閉鎖などによって失われた雇用を回復すると力を込めて訴えました。 同氏はイスラム教徒の入国禁止やメキシコ国境への壁建設、女性蔑視など過激な発言・暴言で物議を醸しました。また法人税の大幅減税や経済活動のいっそうの規制緩和を提案するなど、国民や労働者の利益にかなった経済政策を掲げたわけではありません。 それにもかかわらず勝利したことは、現状を変えてほしいと願う有権者の不満や怒りの根深さを示しました。 クリントン氏は「すべての人のためになる経済が必要だ」と語り、富裕層や大企業が利益を上げれば庶民に回るという「トリクルダウン理論」を批判しました。オバマ政権の政策の継続を掲げ、富裕層や大企業への増税、学費ローンの負担軽減、最低賃金引き上げ、製造業の雇用回復などを公約しました。 しかし上院議員や国務長官を務め、ウォール街から多額の献金を受け取る同氏が、有権者の目に既得権益を代表する政治家と映ったことは否めません。国務長官時代に私用メールを公務に使った問題も影響し、さらに苦戦を強いられました。 変革求める運動も 今回の選挙は候補者の暴言や中傷で、米国史上で最も険悪な論戦になったとされます。一方で予備選段階では格差是正を正面に掲げたサンダース上院議員が善戦し、変革を求める運動が広がりました。 「政治的大変革が必要だ」と訴えたサンダース氏の論戦は、ウォール街の高額報酬や企業献金、低すぎる最低賃金、国民皆保険の欠如など、米国の直面する課題を争点に押し上げました。 サンダース氏の主張に共感した20〜30代の若者が大挙して運動に加わり、うねりとなった運動が今後どういう展開をみせるのか。注目点の一つです。 (ワシントン=島田峰隆) http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-10/2016111003_01_1.html 2016年11月10日(木) 主張 トランプ氏当選 格差と既存政治への強い憤り 米共和党のドナルド・トランプ氏が、大方の予想を覆して、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官を破り、接戦のアメリカ大統領選を制しました。既存政治への米国民の強い憤りと不満の強さを表したものです。この声に、次期大統領がどのようにこたえていくのか、注目されます。 二大政党への痛烈な批判 予備選を含めた年初からの選挙戦は「中間層の反乱」と評されました。生活と国の将来に不安を募らせる多くの国民が、格差の拡大、地方経済の深刻な疲弊、テロと戦争の悪循環など、現実に対する不満と怒りの声を上げました。既存の二大政党に強いノーのメッセージを発したことも特徴です。 共和党では“トランプ旋風”自体が、従来の共和党の枠を突き崩す出来事でした。トランプ氏は、党内で政治経歴を積み上げてきた人物ではなく、いわば「過激発言」で関心を集めてきた実業家です。支持層には白人層が多く、所得があまり高くない層、大都市部以外に住んでいる層などが多いと指摘されます。 トランプ氏は、従来の米国政治とそれをすすめてきた政治家を激しく攻撃し、クリントン氏を、深刻な現状をつくりだした張本人だと非難しました。海外への雇用移転を批判して環太平洋連携協定(TPP)に反対したり、ヘッジファンドの税逃れを批判したりするポーズも示しました。自身の政策を「アメリカ第一」と表現し、支持を集めました。 民主党の側でも、「社会主義」の名のもとに格差是正を強く求めたバーニー・サンダース上院議員が、多くの「ミレニアル世代」(30歳以下の若者たち)の支持をひきつけ、旋風を引き起こしました。ウォール街との緊密な関係を指摘されるクリントン陣営の政策にも影響を与え、富裕層優遇税制の是正、学費負担軽減など、経済の公正な運営のために政府の役割を求める方向が、同党選挙政策の基調となりました。もともと無所属議員としての経歴の長いサンダース氏の健闘も、同党への有権者の強い批判が背景となりました。 肝心の政策論戦は、「歴史的な醜悪さ」(ニューヨーク・タイムズ紙)と形容されたように、双方の非難合戦の様相を呈し、深まりませんでした。移民やイスラム教徒を敵視し、女性や障害者など少数派をあざけるトランプ氏の選挙戦術は、米社会の深刻な分断をあおることにもなり、批判を受けています。米国社会の深刻な分断を克服するために、次期大統領としてどのような姿勢を示すかが問われます。 オバマ政権8年後の米国のかじ取りを次期大統領がどう構想するのかも、国際的な関心事です。しかし、トランプ氏の外交政策の具体的内容は不明のままです。 外交戦略をどう具体化 トランプ氏は、選挙の論戦で、イラク侵攻はもともとすべきではなかったとして、同戦争を支持したクリントン氏を批判しましたが、過激組織IS対策については軍事対応の大幅強化を主張しています。同盟国への財政負担の大幅拡大を求めているのも特徴です。一時は日本や韓国の核武装を容認する発言をし、物議をかもしました。 来年1月20日の就任までの間、トランプ氏が外交戦略をどういう方向で、どう具体化していくのか、注目されます。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-10/2016111001_05_1.html 2016年11月10日(木) きょうの潮流 この国には、支配者層の政治にとことん嫌気がさし、本当の変革を求めている、そのために立ち上がってたたかうつもりがある、そういう何百万もの人たちがいる、ということを私たちは示した―▽米大統領選挙の民主党予備選でヒラリー・クリントン氏と競り合ったバーニー・サンダース氏が雑誌『世界』の最新号で語っています。格差や不平等の是正を求めた「民主的社会主義者」の主張は若者を中心に支持をひろげ、1300万票を集めました▽政治革命を呼びかけたサンダース氏は、ホワイトハウスのアウトサイダー(部外者)だと。第45代の米大統領に選ばれた共和党のドナルド・トランプ氏も政界のアウトサイダーを自負しています▽過激な発言や個人攻撃をくり返してきた不動産王が、なぜ大統領にまで上り詰めたのか。そこには貧富の拡大や生活への不安、陰りゆく大国の現状を変えられない従来の政治にたいする米国民の強い怒りと、変革の要求があります▽とはいえ、メキシコとの国境に壁をつくる、イスラム教徒の入国を禁じるといった人種差別や、女性をおとしめる暴言を平然と口にする人物の当選に、世界は驚きとともに戸惑いも。日本でも一時、株価が千円以上急落するなど世界経済の先行きも不透明です▽今年の米世論調査では民主、共和の二大政党の支持率は3割を切り、無党派層が増えています。ひろがる不満と矛盾。変革の道に諦めるなどという贅(ぜい)沢(たく)はない、というサンダース氏。その思いは世界共通でしょう。 http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-10/2016111001_06_0.html
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