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米大統領選最大の問題は、どちらが勝っても「日本経済に不利」なこと ヒラリーだからと安心してはいけない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50090
2016.11.01 町田 徹経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■トランプの可能性は潰えていない
第45代のアメリカ合衆国大統領を選ぶ選挙は、投票日(8日火曜日)まで残り1週間という大詰めにもかかわらず、勝者を予測しづらい混戦が続いている。
10月上旬から中旬にかけて、“放言”が武器のドナルド・トランプ氏(共和党)が、過去に納税していなかった問題や女性を蔑視した発言を次々に暴かれて、大きく失速した時期もあった。
だが、同月末になって、FBI(連邦捜査局)が打ち切ったはずの捜査を再開し、ヒラリー・クリントン前国務長官(民主党)の陣営も盤石ではなくなったというのだ。
アメリカは世界最大の経済大国で、大統領選の結果は世界や日本の経済を大きく左右しかねない。
しかも、どちらの候補も、日本経済にとってアゲインストの政策を数多く用意しているという。いったいなぜそんな事態になったのか。これまでの両候補者の言動をもとに、我々の経済やくらしへの影響を探ってみよう。
今回の選挙戦で、米大統領選の恒例となっている「オクトーバー・サプライズ」(投票まで約1カ月を残すのみとなった10月に、結果を左右するような“事件”が起こること)に先に見舞われたのは、トランプ候補だった。
3度のディベート(テレビ討論会)のタイミングを狙ったかのように、過去の損失を理由に長年にわたって連邦税を納付していなかった問題や、有名人ならば女性は何でもさせてくれるという趣旨の女性蔑視発言などが続々と暴露され、トランプ氏は謝罪や釈明に追われた。同氏の支持率は目に見えて低下した。
ただ、トランプ氏支持は「世論調査に現れる数字より高い」らしい。というのは、同氏支持者には低所得の白人男性が多く、彼らのほとんどが体裁の悪さから表向きトランプ氏の支持者であることを隠しがちだそうだ。
ところが、彼らの本音はトランプ氏の主張にそっくりなので、いざ選挙になればほとんどの人がトランプ氏に投票するというので ある。
■日本はTPPを進めているが…
米大統領選挙は、全米50州及び首都ワシントンDCに割り当てられた選挙人(538人)票の過半数(270票)を得た候補者が勝つ仕組みだ。政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、クリントン氏は10月26日時点で272票と過半数を確保、トランプ氏のそれ(126票)を引き離して有利な闘いを進めている。
しかし、それほど大きく過半数を上回っているわけではないので盤石とは言えず、最後まで予断を許さないというのが大方の見方となっている。
そして、FBIは先週金曜日(10月28日)、クリントン氏が国務長官在任中に私用メールアドレスを公務に使っていた問題に関連して、「新たなメールの存在が判明した」ため、捜査を再開すると発表した。
クリントン氏は緊急記者会見を開いて「訴追の懸念はない」と訴えたものの、トランプ氏は「これは(ニクソン元大統領が辞任に追い込まれた)ウォーターゲート事件を上回るものだ」と攻撃姿勢を強めており、事態は一気に流動化しかねない情勢という。残り1週間、米大統領選の行方から目が離せない状況なのだ。
では、トランプ、クリントン両氏はそれぞれが大統領になった場合、どのような経済政策を採るのだろうか。
3度に及んだディベートや遊説の際に、両候補がそろって反対を表明したのが、日本や米国、豪州など12カ国が参加に合意した環太平洋経済連携協定(TPP)の批准問題だ。トランプ氏は「米国を第一に置く貿易交渉が必要。国益を保護しない貿易協定は拒絶しなくてはならない」と強硬な批判を展開。
この主張に引きずられる形で、国務長官時代は推進役だったクリントン氏も「米国の雇用や賃金上昇につながらない貿易協定には反対する。TPPにもこの基準を適用する」と“軌道修正”してしまった。同氏は今なお「大統領になってもTPPには反対する」との姿勢を崩していない。
■不思議な議論
両候補は、中国の過剰生産能力の縮小が遅れている問題に批判的な点でも一致している。
トランプ氏は「中国のダンピングで米国内の鉄鋼業の雇用が壊滅状態だ」として、関税の大幅引き上げの必要性を示唆。一方のクリントン氏は「中国の鉄鋼ダンピングは違法だ」「通商当局は許してはいけない」とダンピング提訴などの対応を視野に入れた発言をしている。
さらにトランプ氏は同盟国に対しても攻撃的な発言を繰り返している。
「我々は日本、ドイツ、韓国、サウジアラビアなど多くの国を守っているが、彼らは対価を支払っていない」とか、北米自由貿易協定(NAFTA)は「世界史上で最も悲惨な取引だ」といった調子で、不法移民の流入問題があるメキシコとの間には「国境に壁を建設する」と言って憚らない。
これに対し、国務長官経験者だけに、同盟国に関するクリントン氏の発言はそれなりに穏当だ。「日本や韓国とは相互防衛協定を結んでおり、我々はそれを順守するということを再確認したい」と、トランプ氏と一線を画している。
安倍晋三首相は9月下旬にニューヨークで、クリントン氏の求めに応じて会談し、安全保障面での関係強化の重要性で一致したという。だが、TPP問題となると、クリントン氏のガードは堅く、2人はそれぞれの基本的な立場を主張するにとどまったようだ。
こうした状況では、現職のオバマ大統領がその任期中に、議会からTPPの批准を取り付けない限り、国際的なブームになりかけていた自由貿易協定の締結ラッシュが下火になり、世界経済が貿易の拡大という成長の糧を失うことになりかねない。
米国社会の格差拡大は依然と比べ物にならない深刻な問題だ。それゆえ、トランプ氏は実質所得の伸びの低さに苦しむレッドネックの不満に乗じて選挙戦を展開してきた。
クリントン氏も、伝統的な民主党の支持基盤である労働組合の「自由貿易が雇用を奪う」という不満に耳を傾けざるを得ない。結果として、両候補とも非論理的な保護主義に与している。
増税か、それとも減税か。この問題は、両候補が対照的な処方箋を描きながら、最終的に雇用拡大に繋げると主張している、不思議と言えば不思議なテーマである。
■「15%」と「4%」
トランプ氏は、連邦法人税率を35%から15%に下げる巨額減税をテコに「小さな政府」を目指す一方で、企業の投資を促して成長率を4%に高め、毎月20万人程度の雇用創出に繋げるという。
半面、クリントン氏は富裕層に対する増税で巨額の財源を確保して「大きな政府」になり、雇用創出のためのインフラ投資や社会保障政策を拡充するという。法定の最低賃金の引き上げを掲げることも忘れていない。
さらに、選挙戦でリードしているクリントン候補が、金融やエネルギーの分野で、規制強化を公約していることも見逃してはならないだろう。
トランプ氏は、「過度な規制が経済活動を停滞させている」と述べており、リーマンショック以来続いてきた金融機関への規制強化に批判的だ。石油やガスを巡る産業政策でも「米国には巨大な資源が眠っている。エネルギー産業を再生させて税収を増やすべきだ」と、規制緩和をテコにこうした分野の再生を目指すとしている。
一方、クリントン氏は過去にウォール街の金融界から莫大な献金を受けてきたことから、保守系メディアであるFOXテレビなどから「ミセス・ウォール街」と皮肉られている事態を解消しようとしてか、「強欲なウォール街と戦う。規制を強化して巨大金融機関を解体することも辞さない」と非常に厳しい姿勢をみせている。
繰り返すが、トランプ氏の躍進の原動力も、クリントン氏がトランプ氏に負けずに支持票として取り付けようと躍起なのも、米国で拡大し続けた格差に対する不満票だ。
トランプ氏の放言の多くは、低所得の白人労働者の本音を代弁するものだ。
クリントン氏がTPPやウォール街を見捨てる発言を連呼する背景にも、バーニー・サンダーズ氏ら党内左派や労働組合への配慮があって、格差拡大を不満とする票を取り込もうという狙いが秘められている。
だが、両候補の「不満票」狙いの政策は見当外れで、合理的な根拠に基づかないという問題がある。これらの政策は、世界や日本経済の先行きを大きく歪めるリスクを抱えている。
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