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ロシアが歓迎する中国の「赤いツーリズム」
共産主義ゆかりの史跡が豊富、物価の安さも魅力
第2次世界大戦の対日戦勝71周年記念日に元ソ連海軍士官を囲んで記念撮影する中国人観光客（9月2日、モスクワ） ENLARGE
By AMIE FERRIS-ROTMAN
2016 年 10 月 31 日 15:04 JST
【モスクワ】中国とロシアの最近の親密な関係は、モスクワのノボデビチ墓地の光景を見れば歴然だ。
毎週、大型バスに乗り込んだ中国人観光客が訪れ、ロシアに亡命した中国共産党の指導者・王明の墓参りをする。近くにはロシアの著名な作家や作曲家、政治家の墓もある。
上海で会計士をしている39歳のチェン・リンさんは「レーニンやスターリンのこと、彼らがこの国をどうやって作ったかを学んでいる」と話し、ルーブル硬貨を台座の側面にすべり込ませた。死者があの世でお金に困らないようにという習慣だ。
ロシアはウクライナ侵攻やシリア内戦をめぐって西側諸国との関係が悪化し、経済制裁や原油価格低迷で経済も打撃を受けている。ただ、中国人観光客が記録的に増えているのはロシアにとって歓迎すべきことだ。ルーブル安や団体旅行に査証（ビザ）が不要なこと、共産党の歴史をたどれることが人気を呼んでいる。
モスクワの赤の広場で自撮り写真をとる中国人観光客 ENLARGE
モスクワの赤の広場で自撮り写真をとる中国人観光客 PHOTO: AMIE FERRIS-ROTMAN FOR THE WALL STREET JOURNAL
習近平国家主席の指導のもと、中国共産党ゆかりの史跡を訪ねる「紅色旅遊（レッドツーリズム）」は国内外で活況を呈している。中国とロシアは2015年6月、毛沢東の生誕地・韶山で正式にレッドツーリズムのルート開拓で合意した。
北京と独ハンブルクに拠点がある中国出境遊研究所（COTRI）のウォルフガング・アルト氏は「ロシア旅行は政治的に正しいと考えられている」と指摘する。またテロ攻撃を受けたフランスやベルギーに比べ、「ロシアを非常に安全な旅行先と見られている」と同氏は話す。
市場調査会社ユーロモニターの6月の発表によると、今年は110万人強の中国人観光客がロシアを訪れ、昨年に比べ約16％増となる見通し。そうなれば、中国からの旅行先としてロシアは16位に浮上し、米国やフランスにまだ及ばないものの、英国を上回ることになる。
中国人の人気旅行先
左： 2016年に予想される中国人旅行者の数（単位：100万人）右：ロシアを訪れる中国人観光客は年々増加している（単位：1000人）
https://si.wsj.net/public/resources/images/WO-BB978_RUSCHI_16U_20161030151805.jpg
昨年の観光客のおよそ半分は、モスクワやサンクトペテルブルクといった史跡の豊富な都市があるロシアの欧州側を訪ねたとみられる。
ロシアの航空会社アエロフロートは2014年と15年に中国便の旅客がそれぞれ15％と14％増加したと発表。ロシア観光局は16年には一段と増加し、少なくとも昨年観光客が支出した10億ドル（約1045億円）程度に達すると述べた。
アルト氏によると、特に年配の観光客はロシアに親近感があるという。 「彼らは子どもの頃にロシアの歌を歌った思い出がある。若い世代は親孝行のために一緒に旅行するようだ」
レーニンらが指導した1917年のロシア革命から100周年となる来年は、中国人観光客が大挙して押し寄せると同氏は見込む。ドイツでは社会主義理論を構築したマルクスやエンゲルスの生誕地への観光客増加に身構えている。
アドベンチャーツアー会社のロシアン・ディスカバリーによると昨年、約20万人の中国人が共産主義に関連するツアーに参加したという。例えば、レーニンの足跡をたどるコースは生誕地のウリヤノフスクから、彼が勉学したカザン、十月革命の舞台となったサンクトペテルブルク、防腐処理を施した遺体が霊廟（れいびょう）に安置されるモスクワをめぐるという。
4000キロメートルに及ぶ国境を接するロシアと中国は、東西関係の緊張が高まるたびに距離を縮めてきた。10月1日にはロシアのプーチン大統領が中華人民共和国の建国67周年の祝辞の中で、両国関係はかつてないほど良好だと語った。習主席は6月、両国は「永遠の友人」だと述べた。
中国・杭州で先月開かれた20カ国・地域（G20）首脳会議では、プーチン氏が習氏へのお土産にロシアのアイスクリームを1箱贈ったが、いまやロシア製アイスクリームは中国で飛ぶように売れている。
共産主義の歴史へのノスタルジアに加え、格安で買い物ができる資本主義的な動機も人気の秘密だ。派手な装飾をしたモスクワのショッピングモールでは、香港より値段が安いという中国語の看板が目を引く。
山東省から来た観光客は、持ち切れないほど大量の買い物袋を抱えながら「歴史もいいが、これが大きな魅力だ」と語った。
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