http://www.asyura2.com/16/kokusai15/msg/860.html
Tweet |
俺たちに無抵抗でいろと?怒れるフランスの警官たち
ますます苛酷で危険になる警官の仕事
2016.10.31(月) 山口 昌子
フランスで警官が3夜連続デモ、相次ぐ警官への暴力に抗議
http://afpbb.ismcdn.jp/mwimgs/a/b/600w/img_ab8bc456b9a0cd5e489417cdbe456ae1228877.jpg
仏パリで、警官への相次ぐ暴力に抗議するデモに参加する警官ら(2016年10月20日撮影)。(c)AFP/BERTRAND GUAY 〔AFPBB News〕
フランスの警官の怒りが「目いっぱい」(各紙の見出し)に達している。
フランスでは10月中旬からパリを中心に、連日、「正当防衛の規定改正」「警官襲撃に対する罰則強化」などを政府に訴える警官たちの抗議デモが続いている。フランソワ・オランド大統領が10月26日にエリゼ宮(仏大統領府)で警察の労組代表者と会談して事態収拾を図ったが、怒りは収まりそうもない。
パトカー襲撃事件がきっかけに
事の発端は、10月8日にパリ郊外エソーヌ県ヴィリイ・シャティヨンで2台のパトカーが十数人の暴徒に襲撃され、警官4人が重傷を負った事件である。ヴィリイ・シャティヨンは治安の悪い地域だ。パトカーは、付近に設置された交通違反対策の監視カメラが破壊されないようにパトロールをしている途中だった。
4人の警官のうちの2人は火炎ビンによって手と顔に重度の火傷を負った。1人(女性、39歳)は1週間後に退院したが、1人(男性、28歳)は危篤状態でパリ市内の病院に入院中だ(10月27日時点)。
暴徒は全員が覆面をしており、パトカーを取り囲んで警官を内部に閉じ込め、窓ガラスを叩き割って火炎ビンを車内に放り込むなど「計画的な殺人」(デモに参加の警官)だったとされる。犯人は現在も逃走中で、1人も逮捕されていない。
事件から3日後の10月11日、フランス全土の警察署の前で 数百人の警官が沈黙の抗議デモを実施し、重傷警官への「連帯」と、自衛手段や取り締まりの強化を訴えた。警官はピストルを携帯しているが、デモ隊はもとより武装強盗への発砲も「正当防衛」に該当するか否かを厳しく問われるため、「発砲しにくい状態」(デモ警官)にあるという。
10日後の同18日深夜には、パリ・シャンゼリゼ大通りを約500人の警官や治安部隊員が私服でパトカーなどに乗りサイレンを鳴らすなどしてデモを展開。一気に国民の注目を集めた。
以後、パリを中心にマルセイユ、リール、ストラスブールなどフランス各地の主要広場や裁判所前などで、数百人単位の警官のデモが連日、展開されている。
デモではベルナール・カズヌーブ内相への「辞任要求」が叫ばれ、三色旗が振られ、国歌ラ・マルセイエーズが歌われ、沿道からは拍手や声援が飛んている。ストラスブールでは消防隊員もデモに参加した。
労組や上層部への強い不満も明らかに
フランスの警官など公務員は、デモの届け出と許可が義務付けられている。特に警官に対してはデモやスト規制が厳しい。
今回の一連のデモは、無許可で行われている。警官の労組とも無関係だ。処分の対象になるため顔を覆っている者もいるが、中には処分覚悟で堂々と制服姿で参加している警官もいる。彼らの怒りが頂点に達していることが伺える。
警官の労組は事態を見捨てておけなくなり、10月21日に「毎火曜日の13時から13時30分までパリ裁判所前で沈黙のデモを実施し、正当防衛の規定の見直しを訴える」という声明を出した。しかし、デモに参加したパトカー勤務の警官らは、「労組の幹部は出世主義者」(ルモンド紙)などと指摘し、労組への不信感を表明している。下級警官たちが労組や上層部に強い不満を抱いていることが、図らずも明らかになった。
ジャンマルク・ファルコン国家警察総長は日曜新聞「ジュルナル・デュ・ディマンシュ」(10月23日付)との会見で、火炎ビンを投げられて重傷を負った警官の場合、発砲は「正当防衛」に当たると指摘。ただし、正当防衛に関する「改革案には反対」と言明した。内務省やエリゼ宮へのデモも検討されたとの報道もあるが、ファルコン総長は「言語同断」として、実施した場合は、解雇など厳しい制裁を行うことを強調した。
10月19日にファルコン総長がエソーヌ県の警察署を訪問して警官代表と会談したときは、警察署を後にする総長の車を警官たちが取り囲み、フロントガラスに抗議ビラを張り付けたり、「辞任」の要求や激しいブーイングを浴びせている。
「警官たちに犠牲者が出ても、襲撃犯らに発砲して騒ぎを大きくなるのは回避したいというのが上層部の本音だ。事なかれ主義以外の何物でもない」と、現場の不満は募るばかりである。
ますます危険で苛酷になる警官の仕事
フランスでは2015年1月の風刺週刊紙「シャルリー・エブド」襲撃事件や同年11月のパリ同時多発テロ事件などで、警官や治安部隊の負担が増えている。警官夫婦がIS(イスラム国)の指令を受けたテロリストに殺害される事件も発生し、警官の仕事はますます危険で苛酷になりつつある。
「シャルリー・エブド」襲撃事件では、同紙の編集長の護衛を務めていた警官と、事件直後に現場に駆け付けた警官の2人が犠牲になった。
事件を受けて急遽制定された「2016年6月3日の法律」では、警官の武器使用に関する規則が改定され、非番の時も武器所持が可能になった。しかし、「正当防衛」に関しては「慎重な態度」が求められている。
パトロールなどに当たる現場警官からは、「一般市民と警官の正当防衛の基準がほぼ同様なのはおかしい」との不満が出ている。宝飾店の店主が武装強盗に襲われて発砲し、犯人の1人の背中に命中して殺人罪に問われた事件がある。現状の法律では、警官も正当防衛で発砲した結果、傷害罪や殺人未遂、殺人罪に問われる可能性が大いにあるのだ。
警官の不満が極右政党を後押しする?
オランド大統領は、「シャルリー・エブド」襲撃事件後の2015年10月に、エリゼ宮で警察労組の代表者と会い、2016年度に警官を1600人増員することを約束した。また、すでに発表済みの8300人の増員も改めて確約した。
カズヌーブ内相も、2016年度の警察の予算を1660万ユーロ増額すると同時に、小銃や銃弾チョッキを含む装備の充実などを約束している。
だが、こうした施策では、対テロ部隊の一部が恩恵を受けたにすぎない。
世論調査では、警官や治安部隊などの多数が、来春の大統領選で極右政党「国民戦線」(FN)に投票するという結果が出ている。オランド大統領の支持率が十数パーセントと低迷している中、与党・社会党のジャン=クリストフ・カンバデリス第一書記は、警官のデモは「FNの後押し」につながると述べた。警官側はそんなことはないと否定しているが、オランド政権への不信、不満は高まる一方である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48245
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。