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米大統領選「負託なき勝者」を待つ混乱 政府と議会、政策で合意できない事態も
終盤を迎えた米大統領選、両候補にとって鍵となるのは? WSJワシントン支局長のジェラルド・F・サイブが解説する(英語音声のみ、英語字幕あり)Photo: AP
By GERALD F. SEIB
2016 年 10 月 25 日 10:12 JST
米大統領選の選挙戦から小さな事実を紹介しよう。税制調査団体「タックス・ファウンデーション」の試算によれば、ヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏がそれぞれ主張する税制では連邦政府の歳入に10年で6兆ドル(630兆円)の違いが生じる。6億ドルではなく、6兆ドル。これは日本の国内総生産(GDP)よりも大きい額だ。
今年の大統領選ではこのような情報が話題になることはほとんどない。そしてそれこそが選挙戦の最大の問題だ。政策に関する真剣な討論が候補者間でほとんど行われていないため、選挙戦後の大統領は政策に対する責任を負わなくてもいい状況が生じてしまっている。
先週のこのコラムでは、大統領選を「ゴミ箱が燃えているよう」だと表現したが、誰もこの表現に異議を唱えなかった。しかし本当の問題は、国の機能不全に国民が怒りを覚えた2016年が終わり、議会と政府がコンセンサスを得られない中で一歩踏み出そうとする2017年に訪れる。
国民から遠い大統領選
今年の大統領選で最も重要な話題はトランプ氏の女性問題とクリントン氏の私用メール問題だ。一般国民にとって重要な問題ではないため、大統領選はどこか遠い場所で行われているような錯覚を覚えることが多い。
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その中で議会選と大統領選が相反する結果に終わる可能性は高い。2016年に選挙民を分断したイデオロギーの違いはこのまま議会にも反映され、この先数年はこの状態が続くことが予想される。
問題の発端は両大統領候補にあるが、すべての責任が彼らにあるわけではない。少なくともクリントン氏は詳細まで詰めた政策集を作ろうと努力をし、陣営のウェブサイトには40以上の資料が数カ月前から掲載されている。クリントン氏は24日の集会で自身の重要政策に触れ、超党派の努力によってそれを実現すべきだと呼び掛けた。
しかし、クリントン氏が自身の重要政策をどれほど本気で考えているかには疑問が残る。一時は環太平洋連携協定(TPP)や、カナダで採掘された原油を米メキシコ湾岸に輸送する「キーストーンXL」パイプラインの建設を支持する姿勢を見せていたが、今はその両方に反対している。大学の授業料を政府が負担する計画にも触れているが、それは共和党の予備選挙でバーニー・サンダース上院議員に対抗する形で拡大されたものだ。
トランプ氏が主張する政策は、よく言っても大ざっぱなものだ。彼の選挙戦術は細かい政策の内容よりも本人の姿勢を売りにしている。どの政策もトランプ氏が真剣に達成したいと信念を持っているようなものではない。
トランプ氏は22日、真面目な演説をし、自身の反体制的な立場によって党の垣根を越えた政策をまとめ上げ実現できると述べた。だが投票日も近い10月になってから初めてそのような演説をするのは遅すぎる。しかもトランプ氏はすぐに元の口調に戻り、性的嫌がらせを受けたとして自分を批判した女性を選挙が終わり次第訴えると述べ、真面目な演説を台無しにした。
共和党はポピュリストであるトランプ氏を大統領候補に指名したが、同じ党を率いる可能性が高いのは典型的な保守派のポール・ライアン下院議長だ。ライアン氏は事実上トランプ氏を拒否している。そのような政党がどのような政策アジェンダを持てるのだろうか。
有権者は党派の垣根を超えるか
候補者の素質が批判される一方で、メディアが各陣営の政策がテーマになるような取り上げ方をしなかった点も忘れてはいけない。メディアがトランプ現象に執着した結果、抗議するためにトランプ氏の集会に現れて退場させられた人のように、内容のある政策議論も同様に消し去られてしまった。クリントン氏の政策に関する資料について読者がまったく知らなかったとしても、少なくともクリントン氏の責任ではない。
米大統領選と議会選の結果によってはワシントンでイデオロギーの混乱状態が生じ、政府と議会がそれぞれ有権者から相反する負託を受けたと考えることにもなりかねない。
現時点では、民主党がホワイトハウスを獲得し、議会下院は共和党が多数となることが予測される。上院はきれいに議席を分け合う形になり、どちらの党も責任を負わないような状況になるだろう。まるで絵に描いたような行き詰まった政府の図式だ。
それだけではない。上院の議席を確保する共和党議員は、トランプ氏から距離を置くことが勝因となるだろう。仮にトランプ氏が大統領に当選しても、大統領に借りがあるわけではない。
より重要なのは、上院議員選に出馬する共和党議員がクリントン氏の暴走を阻止するために自らへの投票を呼びかけていることだ。クリントン氏が大統領に選ばれた場合、彼らはクリントン氏の邪魔をすることこそが自らの使命だと考えるだろう。
かすかな希望があるとしたら、それは有権者が候補者の所属する党に縛られることなく1票を投じる傾向を見せていることだろうか。
大統領選と上院議員選で異なる政党の候補に票を投じる有権者の数は、1998年の52%から2012年には19%まで減っている。結果的に有権者は政界の党派的な分断を強化していた。しかし今年の世論調査によればその傾向は逆戻りし、多くの有権者が大統領選では民主党候補に、上院議員選では共和党候補に投票するとみられている。
当選した人たちはこの傾向を見て、自らも党の垣根を越えて活動すべきだと察する可能性に期待したい。あくまでも可能性の話だが。
(筆者のジェラルド・F・サイブはWSJワシントン支局長)
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjzv5TalvXPAhXFKZQKHd9IAZEQqQIIHjAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11740957682223234214304582394772770892562&usg=AFQjCNFblaiG234lIq3W42CL9Xj_8jQrUw
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