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家庭で容易に麻薬密造、米国で広がるオピオイド危機
小規模密造者の登場で違法薬物取引は別次元に
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窓から太平洋が見える3階建ての賃貸マンションに住んでいた夫婦は処方薬に似せた麻薬を密造していた PHOTO: LAURA MORTON FOR THE WALL STREET JOURNAL
By
JON KAMP AND ARIAN CAMPO-FLORES
2016 年 10 月 7 日 09:58 JST
【サンフランシスコ】太平洋を見下ろす3階建て賃貸マンションに住んでいた夫婦は、気さくで意欲的な人たちだった。妻は街を散策してフェイスブックに自撮り画像を投稿していた。夫は小さな音楽レーベルを設立し、自宅で開業した。
家主だったアン・マクグレノン氏は「いい人たちだった」と振り返る。「奥さんはとても優しかった。旦那さんはやり手だった」
だが当局によると、この夫婦(カンデラリア・バスケス被告とキア・ゾルファガリ被告)には暗い野心があった。米麻薬取締局(DEA)によると、夫婦は自宅だった6号室で、処方薬に似せた麻薬を密造していたのだ。処方薬オキシコドン(オピオイド系の鎮痛剤)の錠剤に似せて夫婦が作っていたのは合成オピオイドのフェンタニルを主成分にした麻薬だった。
自宅に錠剤製造用の圧縮機
DEAによると、ゾルファガリ被告は自宅に錠剤製造用の圧縮機を置いていた。当局の宣誓供述書によると、夫婦はワシントン、ノースカロライナ両州を含む全米各地のバイヤーに密造した麻薬を販売。サンフランシスコの連邦大陪審はフェンタニルの製造・流通を共謀した罪で2人を6月21日に起訴した。夫婦は無罪を主張している。
米国では今、こうした小規模な麻薬密造場所が増えている。合成オピオイドを利用すれば麻薬が自宅でも容易に製造可能であるという認識が広まっているためだ。麻薬の需要が急増していることも背景にある。警察当局は、こうした現象が違法麻薬取引の零細化を助長する危険があると指摘。大規模麻薬組織の撲滅に苦労する当局にとって、やっかいな状況が新たに加わった格好だ。
合成オピオイドのフェンタニルの製造・流通を共謀した罪で起訴された妻のカンデラリア・バスケス被告と夫のキア・ゾルファガリ被告(写真はフェイスブックからのスクリーンショット)
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処方薬やヘロイン、フェンタニルのような合成薬を含むオピオイド系薬物の乱用は危機的な状況に達している。米疾病管理予防センター(CDC)によると、2014年にはオピオイド系薬物の過剰摂取により全米で2万8000人余りが死亡した。これは10年前の数字の2倍以上だ。
死亡件数は前年比128%増
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が州ごとの直近の統計を収集したところ、危機的状況はさらに悪化していることが分かった。効き目がヘロインの最大50倍といわれる合成薬物フェンタニルが特にまん延している。2015年の薬物の過剰摂取による死亡件数は10州で計1万2244件となり、前年を21%上回った。だが、フェンタニル関連の薬物に限ると、同じ10州で死亡件数は前年比128%増の3883件にのぼる。メーン、ニューハンプシャー、バーモント、ロードアイランド、コネティカット、ペンシルベニア、メリーランド、ノースカロライナ、ケンタッキー、オハイオの10州だ。
DEAや地元の捜査当局によると、カリフォルニアやテネシー、ユタを含む州でフェンタニル系の錠剤密造について、十数件の捜査が進められている。
‘恐ろしいのは、これが氷山の一角にすぎないということだ’
—DEAサンフランシスコ支部特別捜査官ケイシー・レティグ氏
これらの密造者はいわゆる麻薬組織の「大物」ではない。バスケス被告やゾルファガリ被告などは既知の麻薬カルテルとのつながりはない。だが、必要なすべての材料を手に入れている。違法ではあるものの、ネット通販では誰でも調合剤や錠剤製造用の圧縮機を注文することができる。
1キロ分の錠剤で1000万ドル
DEAによると、中国の製造業者から購入できるフェンタニルは1キロあたり約3500ドルで、錠剤にすれば100万粒が製造できる。末端価格は1粒で約10ドルのため、1キロのフェンタニルから1000万ドルの売り上げが得られることになる。しかも新規参入の障壁は低い。DEAによれば、粉に圧力をかけて錠剤にする圧縮機は約1000ドル。処方薬に似せた印をつけるための型打ち機は約130ドルで購入可能だ。
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見た目では区別がつかない偽造麻薬(上)と本物の処方薬(下)
DEAサンフランシスコ支部の特別捜査官ケイシー・レティグ氏は「恐ろしいのは、これが氷山の一角にすぎないということだ」とし、「売人は何でもかんでも圧縮して(錠剤に)しているのかとの疑問が湧く」と話す。
こうした小規模なフェンタニル密造者の登場は違法薬物取引が別の次元に入ったことを物語っている。フェンタニルが米国の街角で取引されているストリートドラッグとして表面化したのは10年前で、ヘロインへの混合物としてだった。当時、連邦当局はメキシコのトルーカに製造元をつきとめた。DEAによると、そこは中国のサプライヤーからフェンタニルの材料を入手していた。メキシコ当局がトルーカの密造業者を2006年に閉鎖すると、問題は徐々に消えていった。
ところが2013年前後に、米当局がオピオイド系処方薬を大量に販売するペインクリニックの取り締まりに乗り出したのとほぼ時を同じくして、フェンタニルが街角で再び売られるようになった。中には中国に直接注文を出すバイヤーもいる。かつてペインクリニックが満たしていたのと同じ需要をさばくため、新たな麻薬密造業者はフェンタニルの粉末を錠剤に変えている。しかもその錠剤は合法的な処方薬と見た目がそっくりであることが多い。
古傷きっかけに鎮痛剤の中毒
バスケス被告やゾルファガリ被告(ともに40歳)は薬物密造に携わるような人物には見えない。
バスケス被告は自身のフェイスブックによると、約10年前にカリフォルニア州エメリービルの近くにあるウエスタン・キャリア・カレッジで医療分野の情報技術を学んだ。友人の一人によれば、フィリピン系のバスケス被告は数年前、高齢者を世話する仕事に就いていた。
同州フレモント出身のゾルファガリ被告は、父親によると、高校とコミュニティーカレッジ(短期大学)でフットボールの選手だった。父親は約50年前にイランから米国に移住した。
父親によれば、ゾルファガリ被告はフットボールでの古傷をきっかけにオピオイド系鎮痛剤の中毒になり、フェンタニルを服用するようになったという。
麻薬を密造した夫婦の自宅(写真はフェイスブックからのスクリーンショット)
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両被告は2013年に結婚。2015年初めにサンフランシスコのサンセット地区にある近代的な賃貸マンションに入居した。ゾルファガリ被告は音楽に情熱を持ち、友人でラッパーのキング・ハリス被告のアルバムに大きな期待を寄せていたという。同年9月、ゾルファガリ被告はヒップホップ音楽のレーベル「プラネット・ゼロ・リコーズ」を設立した。
DEAによると、夫婦はここに引っ越してきてからフェンタニル入りの薬物の密造を始めた。半年の間にゾルファガリ被告はハリス被告の手引きで、1500粒以上のフェンタニル系薬物をある人物に販売した。この人物は現在、DEAの捜査に協力しているため、身元は明かされていない。連邦大陪審はハリス被告も起訴したが、同被告は無罪を主張している。
家宅捜索に乗り込んだDEAの捜査員が夫婦の自宅で見たものは、ガラスケースに入れられた3つの高級腕時計(計7万ドル相当)や、床から天井まで積み上げられたバスケス被告の靴のコレクション(1足1000ドル以上の値札がついたままのも多かった)だった。ベッドルームには4万4000ドルの現金が置かれていた。
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http://jp.wsj.com/articles/SB11248959841534934584204582357311372558968?mod=wsj_nview_latest
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