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サウジ、米資産の売却は困難−米テロ制裁法に反発でも
「テロ支援者制裁法案」を支持する人々
2016 年 10 月 5 日 15:28 JST
2001年9月11日に米国で起きた同時多発テロの犠牲者とその家族がサウジアラビアを訴えることを可能にする法律が成立したことで、サウジが米国資産を売却することへの懸念が広がっている。だがアナリストらは、世界最大の経済大国である米国に対するサウジの投資戦略が急に変わる公算は小さいとみている。
新しい法律は、サウジにテロ攻撃の法的責任を負わせるもので、米国にあるサウジの資産が差し押さえられる可能性がある。両国間の緊張が高まる中、サウジは米国資産の売却や移動のほか、米国の金融政策の動きに左右されないよう、長年続けている米ドルとのペッグ制を見直すかもしれない。
しかし、そうするには大きなリスクが伴う。サウジの投資の評価額に影響を及ぼすほか、輸入インフレなど為替変動に関連するリスクを大幅に高めるからだ。
クレディ・スイスの中東部門トップ、ファド・イクバル氏は「この法案はセンチメントに重くのしかかるだろう。だがサウジの投資戦略には何の影響も及ぼさないだろう」と述べた。
米議会は先週、「テロ支援者制裁法案」を成立させた。これで米国市民はテロ攻撃を受けた場合、外国政府を相手取って訴訟を起こすことができるようになった。
サウジの外貨準備高は8月末時点で約5600億ドル。その大部分はドル建て資産と推定されている。アナリストらによると、同国は米国で数十億ドル相当の不動産なども保有している。
サウジ政府に近い関係者はこの法案に反対するよう議員に働き掛けた際、サウジは米国資産が脅かされていると判断したら、これらの資産を売却、または移動する可能性があると述べた。サウジのジュベイル外相は今年に入り、同法案は世界の投資家の信頼を損なうとの懸念を示した。
サウジは数カ月前から、財政強化のために米国債など投資商品の一部を売却している。だがアナリストらは、現在の世界の経済情勢では選択肢が少ないため、サウジがお決まりの反応を示すことはないと予想している。また、急に資産を売却すれば、これらの資産価値に影響を及ぼすとみている。原油安の影響への対処に苦戦している中で、サウジには余裕がほとんどない。
サウジは昨年、原油販売収入の減少によって980億ドルという過去最高の財政赤字を計上し、国内での支出削減を余儀なくされた。そこそこの経済状態を維持するために、外貨準備にも手をつけた。同国の外貨準備高は14年半ば以降で4分の1近く減った。
クレディ・スイスのイクバル氏は「新しい法律はまだ成立したばかりで、差し迫ったリスクはないだろう」とみている。
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