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ロシアでKGBが復活する公算大 2018年大統領選に向け、着々と布石打つプーチン(JBpress)
http://www.asyura2.com/16/kokusai15/msg/475.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 10 月 03 日 00:17:30: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

かつてKGBのスパイたちが足しげく通ったレストラン「アラグビ」(写真)が今年、旧ソ連時代のままの姿で再開された〔AFPBB News〕


ロシアでKGBが復活する公算大 2018年大統領選に向け、着々と布石打つプーチン
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48018
2016.10.3 小泉 悠 JBpress


 KGB(国家保安委員会)と言えば旧ソ連の秘密警察であり、かつてはプーチン大統領も所属していたことで知られる。

 「スパイ機関」というイメージが強いが、実際のKGBの権限ははるかに多岐にわたっている。国民の監視から国境警備、外交や外国との貿易まで、あらゆる分野にKGBの影響力は及んでいたと言っていい。

 ソ連崩壊の引き金となった1991年8月のクーデターも、首謀者は当時のウラジーミル・クリュチコフKGB議長であった。

 それゆえに、初代ロシア大統領となったボリス・エリツィン氏はKGBを危険視し、いくつもの省庁へと分割して解体してしまった。

■かつての陣容でKGBが復活する

 ところが、そのKGBが復活するのではないか、という観測がロシア内外で持ち上がっている。バラバラにされた旧KGB系省庁を再統合し、かつてのKGBとほぼ同じ陣容の組織が復活するのではないかというのである。

 その意味するところを理解するために、ソ連崩壊後にKGBがどうなったのかをもう少し詳しく見ていこう。

 KGBはいくつもの総局や局(その中身は時代によってやや変化する)から構成される機関であった。

 なかでも「花形」と言えるのは、やはり外国に対するスパイ活動を担当していた第1総局であろう。かつてのプーチン大統領が所属していたのもここだが、ソ連崩壊後は対外諜報庁(SVR)として独立させられた。

 一方、第2総局は国内におけるスパイの取り締まりなどを担当しており、第1総局とはちょうど盾と矛のような関係にあったと言える(例えばパトルシェフ安全保障会議書記が第2総局出身である)。

 第2総局はロシア全土に支部を持っていたために規模が大きく、のちにいくつかの局とともにFSB(連邦保安庁)となった。実際にはその過程で幾度かの離合集散が起こっているのだが、概ねKGB最大の後継組織であると考えていい。

 かつてKGBの代名詞であったルビャンカ広場の庁舎をFSBが受け継いだことからも、この点は明らかであろう。プーチン大統領も短期間だが、FSB長官を務めたことがある。

 このほかには、政府要人の警護や秘密通信システムの運営を担当していた第9総局はFSO(連邦警護庁)、地下核シェルターの建設・運営を担当してた第15総局はGUSP(大統領特別プログラム総局)、通信傍受や検閲を担当していた第16総局はFAPSI(連邦政府情報通信局)、国境警備隊はFSP(連邦国境庁)という具合に、KGBは機能別に細かく切り刻まれてしまった。

 一方、プーチン大統領は2000年の就任当初、これら旧KGB系機関を再び繋ぎ合わせようとしていた節が見られる。

■出ては消えた統合の動き

 実際、2003年にはFSPとFAPSIがFSBに再統合され、これによってFSBは国境管理や通信傍受などを行う能力を回復した。

 だが、SVRやFSOの再統合は容易ではなかった。

 当時の報道によると、両者はすでに大きな政治力を有しており、FSBの傘下に入ることに抵抗したという事情であったようだ。

 例えば当時のSVRはFSBのほぼ2倍もの予算を与えられており、予算規模で見れば「格下」のFSBへの統合にはうまみがなかった。

 一方、FSOは要人の安全確保の名目で強力な捜査権限や盗聴能力を持ち、またモスクワなど一等地に多くの土地利権を有しているとされる。彼らにしてもまた、FSBへの統合はこうした利権を取り上げられることにほかならなかった。

 そして、これ以降、旧KGB機関の構成には大きな変化は見られなくなり、FSBを中心としてSVRやFSOが並存する体制が続いてきたのである。

 ところが今年9月19日、ロシアの『コメルサント』紙は、FSB、SVR、FSOを統合する構想が進行中であると報じた。統合後の新組織の名称はMGB(国家保安省)になるという。

 これが実現すれば、K(委員会)がM(省)に変わっただけで、ほぼかつてのKGBの陣容が復活することになる。

 さらに『コメルサント』の報道によると、ロシアの特捜部に相当するSKR(ロシア捜査委員会)が元の母体である検察へと吸収されるほか、国家非常事態省も解体されて軍と内務省に吸収されるという。

■肯定もしないが否定もしない大統領府

 もちろん、これは『コメルサント』の掴んだネタであって、現状ではこのような政策が公式に打ち出されたわけではない。しかし、大統領府や情報機関はこの件についてコメントを避けており、否定も肯定もしないという立場を貫いている。

 さらにMGB創設の報道が出た直後の9月22日、プーチン大統領はナルイシキン下院議長をSVR長官に任命した。同人がSVR長官に任命されるという報道は夏頃からすでに持ち上がっており、本人は否定していたものの、結局は報道が正しかったことになる。

 問題は、ナルイシキン氏をSVR長官に任命したことの意味であろう。

 ナルイシキンはプーチン大統領をとりまくサンクトペテルブルグ閥の1人であり、かつてはKGBの協力者であったとされる人物である。

 したがって、もしプーチン政権がSVRをFSBに統合しようと考えているのであれば、ナルイシキン長官は都合がよい。FSOでも今年5月、16年もの間長官を務めていたムーロフ氏が退任しており、人事面ではKGB復活の障害はかなり取り除かれているように見える。

 ただ、MGB構想を実現するにしても、その後のナルイシキン氏をどうするのかという問題は残る。

 FSBへの統合を承認するためだけにSVR長官に据えられたとすれば、ナルイシキン氏にとっては屈辱的な人事であろうし、かといって彼がMGBのトップとなれば、旧KGBの生え抜きにとって面白くない話になる。

 もっとも、プーチン大統領は2018年の大統領選を見据えてかつての側近たちを次々と更迭したり閑職に回すなどしており(最近のサプライズはKGBの同僚だったイワノフ大統領府長官が更迭されたことであろう)、今回のナルイシキン人事もその一環という可能性は大いにある。

 また、前述の『コメルサント』の記事では捜査委員会が検察に吸収されるとあるが、捜査委員会の創設を主導したバストルィキン捜査委員長の更迭も決めている。この意味でも、『コメルサント』のいう情報・治安機関の再編が実際に検討されている可能性は高い。

 2018年の大統領選が1年半余りに迫り、その前倒し実施も取りざたされる中で、ロシアでは権力の再編がさらに活発化することになりそうだ。

 

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