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[グローバルオピニオン]中国の改革、世界に恩恵
米エール大シニアフェロー スティーブン・ローチ氏
中国は景気減速懸念があるものの、世界経済成長率への寄与度は依然として最大だ。2016年の中国の成長率が政府目標に沿い、国際通貨基金(IMF)の予測(6.6%)をわずかに上回る6.7%に達すれば、今年の世界成長率(3.1%、IMF見通し)に対する中国の寄与度は39%近くに上る。この貢献は欧米やインドなど他国をはるかにしのぐ。
中国経済は1980〜2011年の年平均成長率10%からは大幅に減速している。しかし、中国指導部の言う「新常態(ニューノーマル)」への移行後も、世界の成長は引き続き中国に依存している。
中国中心に世界の成長が続くことは3つの重要な意味を持つ。まず、世界成長率が長期的な潜在成長率である3.6%程度より低くなる場合、中国の減速が世界経済に与える影響は増幅される。中国を除くと今年の世界成長率は約1.9%まで低下する。
第2の影響は中国経済の「ハードランディング(急激な悪化)」が、世界経済に深刻な影響を及ぼす可能性だ。中国の成長率が1ポイント低下するごとに、世界成長率は0.2ポイント近く押し下げられる。対外貿易に対する波及効果を含めると世界成長率への影響は約0.3ポイントだろう。中国の成長率が現在の6.7%の半分になると世界成長率を約1ポイント押し下げることになる。そうなれば、世界の本格的な景気後退は避けられそうにない。
最後に、中国の構造改革が成功すれば(私はその可能性が高いと考える)、世界に好影響がありそうなことだ。製造業が主導する輸出や投資中心の経済からサービス業や消費主導の経済への転換が進めば、世界は大きな恩恵を受ける。中国の内需は主要貿易相手国にとって輸出主導の成長の源泉になるからだ。もちろん、中国が急速に拡大する国内市場への自由で開かれたアクセスを認めることが条件だ。中国の構造改革の成功は世界的な需要のエンジンを始動させる可能性がある。
中国は今年上半期に6.7%程度の成長を達したものの、下半期には民間の固定資産投資の減速、弱い外需、不動産市況の一段の悪化といった逆風に直面するかもしれない。
しかし、政策の余地が限られる先進国とは対照的に、中国には経済を下支えする政策の余地がある。また短期的な景気循環の圧力と長期的な構造改革のトレードオフに苦しむ主要先進国と異なり、中国は両方の課題に同時に対応できる能力も持つ。
中国の指導層が多面的な政策を維持し、改革に焦点を合わせる限り、世界経済はその恩恵を受けることができる。世界はかつてないほど中国の成功を必要としている。
((C)Project Syndicate)
Stephen Roach 香港駐在のモルガン・スタンレー・アジア会長などを経て現職。著書に「アメリカと中国 もたれ合う大国」。70歳。
[日経新聞9月5日朝刊P.7]
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