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[ポジション]シェール、再び原油安招く
生産性向上、高まる競争力 OPECの判断に影響
米国のシェールオイルが再び原油相場の下げ圧力となっている。年初の原油安で多くの業者が採算割れに陥り、生産も急減したが、技術の向上で低い原油価格でも採算が合うようになった。石油輸出国機構(OPEC)が今月下旬の会合で増産凍結に合意し、相場が上がればシェールも増産に転じる可能性がある。OPECの判断にも響きそうだ。
米指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は日本時間の2日、1バレル43ドル台の3週間ぶり安値圏で推移した。ロシアのノバク・エネルギー相が「50ドル近辺であれば増産凍結について主要産油国と協議する必要はない」と発言したことで売られた。石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之氏は「シェール増産を警戒している面もある」とみる。
「原油が40ドルで30%以上の利益率がある掘削地点が、前年の3200から4300に増えた」。米シェール大手のEOGリソーシズは、2016年4〜6月期決算発表で明らかにした。コスト削減に加え、探査や掘削技術の進歩が寄与した。
シェールの生産性向上は著しい。米エネルギー情報局(EIA)によると、主要地区で新たに掘削を始めたリグ1基当たり生産量は7月が日量564バレルで、14年1月の2倍。丸紅経済研究所の美甘哲秀所長は「掘削手法やシェール層を砕くための薬剤で技術革新が続いている」と指摘する。
みずほ総合研究所の井上淳主任エコノミストが現在の生産性から算出したシェールの採算コストは1バレル40ドル前後。14年上期の60ドル超に比べて大幅に低下している。EIAによるとシェール掘削のリグ稼働数は5月を底に2カ月連続で増え、7月は300基になった。
近年、原油価格は米シェール増産で下がり、採算悪化によるシェール減産で再び上昇する流れを繰り返している。シェールの生産性向上で米減産という価格上昇シナリオの前提が崩れ「原油安は長期化する可能性が高まっている」(井上氏)。
「長い目で見れば、増産凍結による原油価格の維持は自らの首を締める可能性がある」。米ゴールドマン・サックスはOPECに警鐘を鳴らす。増産凍結で相場が上向けばシェール生産が増え、シェア低下につながるとみている。
生産性向上が続いても増産には時間がかかるとの見方もある。野村証券の大越龍文シニアエコノミストの試算では、年内に増産に転じるにはリグ稼働数が9月末までにさらに100基増える必要がある。「金融機関のシェール企業への融資姿勢の厳しさを勘案すると現実的でない」(大越氏)
そもそもOPECが14年11月の総会で生産調整を放棄し増産に走ったのは、シェールからのシェア奪還が目的だった。シェールの実力をどう推し量るかが、OPECの増産凍結を巡る判断にも影響しそうだ。
(田上一平)
[日経新聞9月3日朝刊P.17]
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