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ドイツのメルケル首相が、シリア内戦を逃れてきた数十万人の難民にドイツの国境を開放するという重大な決断を下してから、4日でちょうど1年がたつ。写真はイタリアのマラネッロで8月撮影(2016年 ロイター/Max Rossi)
独メルケル首相が支持率急低下でも続投目指す理由
http://diamond.jp/articles/-/100900
2016年9月3日 ロイター :ダイヤモンド・オンライン
[グライフスバルト(ドイツ) 1日 ロイター] - ドイツのメルケル首相が、シリア内戦を逃れてきた数十万人の難民にドイツの国境を開放するという重大な決断を下してから、4日でちょうど1年がたつ。この決断によって首相はいま、その指導力に批判や疑問が投げかけられている。
押し寄せる移民や難民を受け入れた際、「対処できる」と気軽に約束した首相の頭には、どのような考えがあったのか。
姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)からの絶え間ない批判や支持率低下に直面する中、首相は来年4期目目指し立候補するのか。そして、今月の地方選を切り抜けられるのだろうか。
首相がプレッシャーを感じているとすれば、表に出さないようにしているのだろう。ドイツと欧州、そして世界にとっての劇的な変化が進行中かもしれないが、メルケル首相に変化はみられない。堅実で少し退屈だが、何事にもうろたえることなく、何より勤勉だ。首相のファンにとって、これらの性質は最大の美点と言える。
だがCSUや、反移民の立場を表明している反ユーロ政党「ドイツのための選択肢(AfD)」などにとって、首相は頑固で、普通のドイツ人が感じている懸念に鈍感だ。
「首相の移民政策にはみんなとても不満を持っている」。首相が選挙活動で訪れた北部グライフスバルトに住む無職のヘルムート・シュレーダーさん(61)は言う。「あんな重大なことを、たった1人で決めてしまったなんて。ドイツは王国ではないのに」
■両極化する人物像
有権者の言葉が示すように、移民問題とそれに対するメルケル首相の対応で、それまで愛情を込めて「ムッティー(ママ)」と呼ばれていた首相の求心力や安心感は変貌し、困惑や怒りを呼んでいる。
今週実施された世論調査では、首相が来年の連邦選挙後も4期目を続投することに反対との国民の割合が、全体の50%に上昇した。3分の2が、移民問題への対応に不満を示したという。
にもかかわらず、首相の4期目出馬は濃厚だ。第二次大戦以降に4選を果たしたのは、1990年にドイツ再統一を実現させたヘルムート・コール首相だけだ。
メルケル首相は続投に対する意志を公にしていない。CSUが連立支持と引き換えに、移民政策を変更するよう圧力をかけていることが背景にある。
だが首相の顧問らは、出馬の可能性は高いとみる。難民、英国の欧州連合(EU)離脱決定後の欧州、そして国内経済立て直し、といった課題がまだ解決していないと考えているからだ。ある顧問はこう話した。「もし首相が、いまの状態で4期目を務めたくないと言うなら、それは職務怠慢に当たる」
昨年難民問題で混乱はあったものの、首相率いる中道右派キリスト教民主同盟(CDU)は、中道左派の社会民主党(SPD)を支持率で2桁リードしている。
メルケル氏個人の人気は、急落したとはいえ他国の指導者を大きく上回る。国内の右派には他に有力な後継者もいない。
それでも、最近1年間のメルケル首相はこれまでになく不安定にみえる。
移民や難民が押し寄せることを見通せなかったことや、EUとトルコとの難民問題対策に不備があったことを首相は認めた。
■大きな間違い
英オックスフォード大学の歴史学者で作家でもあるティモシー・ガートン・アッシュ氏によると、メルケル首相の政治的な手腕は昨年、低下したようだという。アッシュ氏は「メルケル氏は、ドイツが欧州の主要国だからというだけでなく、氏個人の評判や蓄積した経験を考えても、欧州に不可欠な指導者だ」と主張する。
ただ「政治では、10年が上限だというのが世界的な慣行になっている」と言う。「任期が伸びれば伸びるほど、間違いを犯す可能性が高くなる。仏ド・ゴール元大統領、独コール元首相、英サッチャー元首相、トルコのエルドアン大統領、ロシアのプーチン大統領しかりだ。同じことがいま、実用主義で慎重なメルケル首相にも起きようとしている」と話す。
政治的余震も続いている。4日に実施される北東部メクレンブルク・フォアポンメルン州議会選挙では、難民政策に反対するAfDが、州議会選としては初めてCDUを上回る支持を得る見通し。2週間後の首都ベルリンでは、CDUの支持率が歴史的低水準に落ち込むと予想されている。
メルケル首相の顧問は「いずれの選挙も、CDUにとってあまり良い結果とはならないだろう」とみるが、「それでもわれわれは前進しなければならない。首相は、国内と欧州で直面している難問から注意をそらすことはないだろう」と話した。
(Noah Barkin記者 翻訳:田頭淳子 編集:加藤京子)
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