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[真相深層]プーチン式統治 まん延
トルコ・東欧、政権の独裁色強まる
トルコのエルドアン大統領がクーデター未遂事件を機に一気に強権に走っている。反対派の排除やメディア弾圧に訴え、経済界の締め付けにも乗り出した。独裁色を強めるその手法はロシアのプーチン大統領の統治スタイルに似ている。
首脳会談でトルコのエルドアン大統領(右)はロシアのプーチン大統領を10分も待たせた(9日、サンクトペテルブルク)=ロイター
9日のトルコ・ロシア首脳会談。エルドアン氏をサンクトペテルブルクに迎えたプーチン氏はいらついているように見えた。エルドアン氏とほとんど目を合わせようとせず、スーツの袖をいじったり、足を何度も動かしたりする様子をテレビが映した。
プーチン氏は権威を誇示するために会談で相手を待たすことで有名。この日は逆に10分も待たされた。「会談に出向いたエルドアン氏は、待たすことで権威を維持しようとした」と欧州の外交筋は分析した。米欧をけん制する思惑から両者は接近を演出したが「似たもの同士はウマが合わない」の典型例となった。
「民意」を盾に
エルドアン氏はクーデター未遂事件後に軍人や裁判官ら2万人を逮捕、拘束。公務員ら8万人を解任・停職した。メディア130社の閉鎖も命じた。事件の捜査を口実に、米国に住む政敵、ギュレン師の支持者や政府に批判的な公務員らを一掃。エリート層を自らに忠実な人物に入れ替える狙いとみられている。
一連の強硬策は「ツァー(皇帝)」と呼ばれるほど絶大な権力を握るプーチン氏の手法と重なる。2000年の就任からプーチン氏は政治に影響力を持つ新興財閥(オリガルヒ)勢力を一掃し、出身母体の旧ソ連国家保安委員会(KGB)時代の仲間らで中枢を固めた。メディア支配やテロなど危機を理由に権力を拡大する構図も同じだ。
両者は民主主義を利用している面もある。ともに投票で選ばれた。それぞれロシア帝国(ソ連)とオスマン帝国のような「大国」の復活を掲げる。敵の存在を訴え、愛国心をあおって支持を伸ばす。「ポピュリズム独裁」と呼ぶ声もある。
トルコで事件後に政府が動員したデモは、クーデターを阻止した高揚感と裏切り者に対する怒り、そして強権を批判する米欧への不満が渦巻いていた。エルドアン氏はそんな“民意”を盾に強権を正当化している。
14年のロシアの雰囲気も似ていた。プーチン氏は隣国ウクライナで起きた政変を「米国の陰謀」として、クリミア半島を武力で併合した。「ソ連崩壊以来の勝利」で国民を熱狂させた。その後も新たなネット規制などで統制を強めている。
欧州では「マフィア国家」という言葉が話題だ。生みの親であるハンガリーの社会学者、バーリント・マジャル元教育相によれば、プーチン氏らの統治は、トップに忠誠を誓う“ファミリー”からなるマフィアの組織に近い。政府、議会、司法・治安当局、メディア、産業界までファミリーの支配が進む。
マジャル氏は「ファミリーの力はイデオロギーではなく、富にある」と言う。プーチン氏はオリガルヒの資産を没収し、KGB出身者らに分配した。プーチン氏に従わない企業は生き残れない。
トルコでも、司法当局がギュレン師に近いとされる経営者、数百人の拘束を命じた。エルドアン氏はプーチン氏のように経済人にも忠誠心を求める構えだ。
物言えぬ欧米
東欧にも強権統治が広がる。マジャル氏はハンガリーを例にマフィア国家の概念をまとめた。同国のオルバン政権は反移民など国民感情に訴える手法で議会の3分の2を確保。司法の権限縮小やメディア規制は欧州連合(EU)から再三批判を受けている。バルカン半島のモンテネグロやマケドニアでも同じ傾向があるとマジャル氏は言う。
背景には米欧の指導力低下がある。トルコは過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦や中東から欧州に流入する難民対策の要衝で、欧米は協力を仰がざるをえない。エルドアン氏は欧米を試すように、強権を誇示しているところがある。
ブルッキングス研究所のシェフツォワ上席研究員は「プーチン大統領を含む世界の独裁者は欧米のトルコへの対応を見ている」と指摘する。強権国家が勢いづき、民主・自由主義を柱とする冷戦後の秩序が揺らぎかねない。
(モスクワ=古川英治)
[日経新聞8月26日朝刊P.2]
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