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[英EU離脱]担当3閣僚、権限曖昧で縄張り争い
交渉入り遅れも
【ロンドン=小滝麻理子】欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国で、その準備を担う省庁間に不協和音が生じている。国民投票で離脱派を率いたジョンソン外相と、新設ポストに就いたデービスEU離脱担当相、フォックス国際貿易相が外交権限などを巡って縄張り争いを繰り広げている。メイ首相は2017年以降にEUと交渉入りする構えだが、主要3閣僚の争いが長期化すれば外交に悪影響が出かねない。
「外務省の抜本的なリストラが必要だ」――。8月中旬、英紙テレグラフは、フォックス氏がこうした趣旨のメールをジョンソン氏に送付したと報じた。フォックス氏はメールの宛先にメイ氏も加え、外務省の経済外交担当チームを自分の傘下に引き渡すよう要求したとされる。
外務省に対しては、デービス氏も新設の離脱担当省を強化するために欧州外交に強い人材の提供を求めたが、ジョンソン氏は少人数しか応じなかったという。ある主要官庁の職員は「3閣僚に振り回されて、離脱に向けた仕事にちっとも着手できない」とぼやく。
7月13日に発足したメイ政権で最大のサプライズとなったのが「離脱3人組」と呼ばれるジョンソン氏、フォックス氏、デービス氏の起用だ。交渉のカギを握るポストに離脱派を並べることで、国民投票後の世論や与党・保守党内の融和を図る狙いがあった。ところが現時点では、3者の綱引きばかりが目立つ。
背景には3閣僚の役割分担が明確ではない事情がある。ジョンソン氏がEU各国を含む2国間の外交、デービス氏が離脱戦略作り、フォックス氏が新興国などとの外交という大まかなくくりはあるものの、離脱交渉や外交全体の主導権が誰にあるのかはあいまいだ。
政府は7月下旬、英南部にある迎賓館を今後は共用にすると3閣僚に通告。従来は外相の専用施設だった。これも英外交の「顔」が誰なのかを巡る論争に拍車をかけた。
もっとも今の事態はメイ首相の想定の範囲内との見方もある。メイ氏は3人の争いを「感心できない」と周囲に語ったとされるが、目立つ発言は控えている。実は3閣僚の閣内の序列は、メイ氏の信頼が厚いハモンド財務相やラッド内相よりも下だ。離脱交渉の最終決定権限もメイ氏が主催する閣僚級会合にある。離脱派を重用する姿勢をアピールしつつ、3閣僚の権限を巧みに分散・制限していることがわかる。
それでも3者の権限争いが長期化すれば、離脱交渉や英国の国際的評判に悪影響を及ぼすリスクがある。英サンデー・タイムズ紙は、当初は17年前半とみられた離脱交渉入りが、準備の遅れにより来年秋ごろにずれ込む可能性があると報じた。米通商代表部のフロマン代表は「EUとの関係がはっきりしない限り、英国との貿易や投資交渉を進めることは難しい」とクギを刺しており、内輪もめに費やせる時間は限られる。
政権支持、国内融和姿勢で高く
【ロンドン=小滝麻理子】欧州連合(EU)離脱を決めた6月の英国民投票の結果を受けてキャメロン前首相が辞任し、メイ政権が発足してから1カ月余りが過ぎた。メイ首相は直近の世論調査で5割近い高支持率を得た。国民投票で分断された国内の融和を訴える姿勢が好感されている。
調査会社ユーガブによると、国民の48%がメイ氏を支持。国民投票で離脱派を率いたジョンソン外相(41%)、残留を主張していた野党・労働党のコービン党首(29%)を上回った。別の調査会社コムレスでもメイ氏への支持率は42%にのぼり、内相だった1年前よりも13ポイント上昇した。
ユーガブの調査では国民投票で離脱に投じた人の支持率は63%と、残留を支持した人の支持(40%)を上回った。メイ氏自身は残留派だったが、首相就任後は「離脱は離脱だ」と国民投票の結果を尊重する姿勢が受け入れられている。公教育の立て直しなど、中間層の生活改善に向けた施策も評価が高いようだ。
もっとも真価を試されるのはこれからだ。スイスで夏季休暇をとったメイ氏は、9月以降はEU離脱に向けた準備に本格的に着手する必要がある。離脱通知時期を「2017年以降」とするメイ氏に対し、EU諸国は早急な交渉入りへ圧力を強める構え。英経済の不透明感が強まるなか、離脱交渉への道筋が見えなければ、国内の離脱派と残留派の双方から不満が高まる可能性がある。
[日経新聞8月21日朝刊P.4]
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