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キューバ・ハバナで米ホテルチェーン、スターウッドホテル&リゾートが経営に着手した「フォーポインツ・バイ・シェラトン」ホテル(2016年6月28日撮影)。(c)AFP/YAMIL LAGE〔AFPBB News〕
ベネズエラの危機がキューバに波及 米国との国交回復の歓喜もつかの間、よみがえるソ連崩壊の記憶
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47505
2016.8.2 Financial Times :JBpress
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年7月27日付)
ベネズエラの危機が、最も親密な同盟国のキューバに波及している。キューバ政府は、電力供給を制限したりそのほかの物資でも不足が生じたりするかもしれないと警告を発しており、旧ソビエト連邦の崩壊直後にこの島国にトラウマ(心的外傷)をもたらした経済的困窮の再来を危惧する声も出ている。
米国との国交回復の歓喜からわずか1年で、景気回復の期待はしぼんでしまった。首都ハバナの市街では、人々が言葉にこそ出さないものの懸念や苛立ちを覚えていることがはっきりと感じられる。
「これで前に進んでいけると思ったちょうどそのときに、何もかもがまたするりと逃げてしまった」。ハバナで年金生活を送るミリアム・カラバサさんはこうこぼす。「もうごめんだ、やってられない、とみんながきれてしまうことが心配です。そうなったら、どうなってしまうのか」
官公庁は退庁時間を繰り上げる。エアコンのスイッチを切り、窓を開けて扇風機を回す。もともと不足している街灯がさらに少なくなり、ハバナなど都市部では人や車の往来が目に見えて減っている。
「すぐに良くなりそうなものは一つもないよ。悪くなる一方だ」。自動車整備士のイグナシオ・ペレスさんはこう語る。「道路は舗装されない。学校のペンキが塗られない。ゴミは回収されないし、公共交通機関も改善しない。ないないづくしだ」
ラウル・カストロ議長は7月、この問題の規模を端的に示す発言をしていた。議会に対して「必要最小限の支出以外はすべて」やめなければならないと述べたのだ。議長によれば、悪いのは「商業面での主要なパートナーの一部が原油安のために直面している限界・・・およびベネズエラと契約している原油供給の一定の縮小」だという。
燃料消費は今から12月にかけて28%カットされ、電力消費も同じぐらい減らされる。また、輸入額が国内総生産(GDP)の17%に相当する中央計画経済のこの国で、輸入も25億ドル、率にして15%削減される見込みだ。
ベネズエラは15年間にわたって現金(金額は明らかにされていない)と、キューバのエネルギー需要の半分に相当する1日当たり約9万バレルの石油を供給してきた。キューバ政府はその見返りに、医療など高度な技術を要するサービスを提供した。ベネズエラの援助は、旧ソ連からの補助金が1991年に途絶えた後の経済のブラックホールからキューバを救い出すのに一役買った。
しかし、今日のベネズエラは深刻な物資の不足と激しいインフレに苦しんでおり、今年の経済成長率はマイナス10%になると見られることから、ニコラス・マドゥロ大統領も援助を削らざるを得なかった。通信社ロイターが入手したベネズエラ国営石油会社PDVSAの内部データによれば、キューバへの石油出荷昨年に比べて2割減少している。
「今の状況では、(キューバの)国内総生産の今年の伸び率はマイナスに落ち込み、2017年はマイナス2.9%になるだろう」。かつてキューバの中央銀行に勤務し、現在はコロンビアにあるハベリアナ大学カリ校で教壇に立つパベル・ビダル氏はそう語る。「ベネズエラとの関係が完全に崩れてしまったら、GDPは10%減る恐れがある」
ベネズエラからの援助は旧ソ連からの支援に比べればかなり少ないが、ベルリンの壁が崩壊した後の「特殊な時期」が話題になると、キューバの人々の間にはつらい思い出がよみがえる。モノ不足があまりに深刻だったために野良猫を捕まえて食べたことを、多くの人が覚えているのだ。
キューバの官報「グランマ」のカリーナ・マロン副局長は今月、1994年にあったような街頭での抗議行動が起きる恐れがあると警告した。
「悪条件がそろった究極の嵐がやってこようとしている・・・燃料の供給カット、エネルギーの供給カットといったこの現象だ」。マロン氏はキューバ・ジャーナリスト組合の会合でこう発言した。「1993年や1994年の状況に再度見舞われたら、この国はもたない」
1990年代に社会不安を鎮めるために結成されたいわゆる即応部隊は、警戒態勢に戻っている――。同部隊の隊員の一人は匿名を条件にそう語った。
カストロ氏にしてみれば、景気の減速は、自らの政権下でスタートさせた限定的な市場志向の改革に深刻な打撃をもたらす。特に、長年の懸案で、潤沢な外貨準備というクッションを必要とする通貨ペソの自由化にとっては大きな痛手となる。
しかし外国企業は、この危機のために経済開放がむしろ加速するかもしれないと期待を寄せる。あるスペイン人投資家は次のように述べている。「ベネズエラの問題は、キューバで改革が進む可能性を高めている。キューバ政府は、動かなければいけないときにしか動かない」
ただ、キューバ政府は資源をどのように配分するのかという複雑な問題がある。この国は観光に大きく依存しており、観光客のほとんどは電気が通じていてエアコンも使えるホテルに泊まりたいと思っている。
一方、キューバでは総労働力の10%に相当する50万人ほどの人々がレストランや宿泊施設、そして先日容認された民間企業に雇用されている。これらが商売に励むためには電力が必要だ。
カストロ氏は、一般家庭は当面停電を免れると話しているが、与党共産党の改革委員会を率いるマリノ・ムリーロ氏は、ハードカレンシー(交換可能通貨)を稼ぐ観光業やニッケル産業こそ停電を免れるだろうと述べている。
問題はこれだけではない。キューバは医療サービスをアルジェリア、アンゴラ、ブラジルなどベネズエラ以外の国にも輸出しているが、これらの国々も歳出を削減すると見られるのだ。キューバは2014年に医療サービスで約80億ドルを稼いだ。輸出額の40%に相当する水準だ。
「何らかの影響が出てくることは否定できない。中には、今よりひどいものもあるだろう。しかし、備えはできている」。カストロ氏はそう語っている。
アナリストらの間には、カストロ氏の警告は米国の制裁緩和後に膨らんだ期待をそぐことに寄与するかもしれないとの見方がある。確かに、「特殊な時期」のころのような耐乏生活に完全に逆戻りすることは考えにくい。今のキューバは当時と異なり、増えている外国からの送金、医療サービス、観光業、さらには生まれて間もない民間セクターなど収入源が多角化している。
しかし、「(キューバ国民の)過半数はまだ、国家からの給料にかなり依存している。この給料は、実質ベースで言えば1989年当時の3分の1でしかない」と前出のビダル教授は言う。「(国民は)極度に脆弱な状況にある」
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