World | 2016年 08月 3日 17:47 JST 関連トピックス: トップニュース 焦点:リオの大気汚染で深刻な健康被害、五輪選手にも影響かhttp://s2.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20160803&t=2&i=1148127338&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXNPEC720EC 8月1日、5日にブラジルのリオデジャネイロでオリンピックが開幕する。ブラジル政府は、オリンピック開催地に立候補した時、リオ市内の大気環境は世界保健機関(WHO)の基準値内で、問題はないとアピールしていた。だが、これは真実ではなかった。写真はリオデジャネイロで撮影(2016年 ロイター/Ivan Alvarado) 《【リオデジャネイロ 1日 ロイター】》 - 5日にブラジルのリオデジャネイロでオリンピックが開幕する。ブラジル政府は、オリンピック開催地に立候補した時、リオ市内の大気環境は世界保健機関(WHO)の基準値内で、問題はないとアピールしていた。だが、これは真実ではなかった。同国が開催地の権利を勝ち取った2009年も、そして今も、この基準値はまったく満たされていない。 リオ市内の大気汚染はかなり深刻で、競技選手のパフォーマンスに影響が及ぶとの研究結果も出ている。さらに、リオでは大気汚染が引き起こす呼吸器官系の疾病などで死亡する人の数が毎年数千人に達しているという推計値もある。 WHOは、粒子状物質「PM10」について、大気1立方メートル当たり年平均20マイクログラムの環境基準値を設けているが、ブラジル政府の環境保護局(INEA)データによると、2010年から2014年までの間、リオ市内のPM10の年間平均値は52マイクログラムだった。 サンパウロ大学の病理学者であるパウロ・サルディバ氏は、リオ市内の大気は「オリンピック開催に適した状態でないことは明らかだ」と述べ、PM10による大気汚染が健康に与える被害は、他の汚染物質よりも深刻だと指摘する。同氏は、WHOが2006年に大気環境基準値を厳格化した時、基準値設置委員会のメンバーの1人だった。 一方、ブラジルのオリンピック組織委員会のタニア・ブラガ氏は、大気の状態はPMのデータだけで判断できないと主張。リオ市内の大気中の二酸化窒素や二酸化硫黄など他の汚染物質は、WHOの基準値の範囲内にあると述べている。 サルディバ氏がWHOの手法で分析したところによると、リオ市内では2014年に大気汚染が原因で約5400人が死亡したと推計される。これは、犯罪が多いことで知られる同市の2015年殺人死亡件数(3117人)を上回っている。 また、マサチューセッツ大学アマースト校のジェイミー・ムリンズ資源経済学教授が約65万6000人のトラック競技選手を対象に8年にわたり行った調査では、PM10がWHO基準値を10ユニット上回るごとに競技選手の能力は0.2%低下するとの結果が出ている。 <残念な現実> 政府当局データによると、2008年のオリンピック開催時の北京市のPM10は82マイクログラムと、リオ市内の値をかなり上回っていた。2012年のオリンピック時のロンドンは23マイクログラムだった。 オレゴン州立大学のスタチ・シモニッチ教授の研究によると、各都市のオリンピック開催時のPM10値は、アテネ(2004年)が44マイクログラム、シドニー(2000年)が24マイクログラム、アトランタ(1996年)が28マイクログラムだった。同教授は、リオデジャネイロの高いPM10の値について、残念な現実だが、他の発展途上国と共通していることだと述べた。 ロイターは、サルディバ氏の研究チームと協力してINEAのデータを分析するとともに、リオ市内の複数の場所で、別の大気汚染物質である微小粒子状物質「PM2.5」の値を測定した。INEAによると、2011年以降、リオ市内のPM2.5はWHOの年間基準値を83%上回っている。 調査では、オリンピック公園とオリンピック村の前、コパカバーナビーチのバレーボール競技場付近、オリンピック競技場の外などで1時間当たりのPM2.5を22回測定した。 WHOは1時間当たりのPM2.5基準値は設けていないが、24時間平均(25マイクログラム)と、年平均(10マイクログラム)の基準値を設定している。 PM2.5の値が最も高かったのはオリンピック競技場で、競技が行われる午前の同じ時間帯に行った6月30日の測定でPM2.5はピーク時で65マイクログラムに達した。同日のコパカバーナビーチの値は57マイクログラム、オリンピック村は32マイクログラムを記録した。 サルディバ氏や専門家は結果について、選手や観客、地元住民が高水準のPM2.5にさらされていることを示していると指摘する。 リオデジャネイロのエドゥアルド・パエス市長は、鉄道並みの大量輸送を可能にする公共交通システム「バス・ラピッド・トランジット(BRT)」を構築し、地下鉄路線を拡大したことで大きく評価されている。市当局者は、公共交通システムの改善により、二酸化炭素排出量は劇的に減少すると指摘。BRTにより既に市内を走る小型バスが750台が減少したとしている。 それでも、市内の自動車保有台数は年間10万台のペースで増え続けている。 前出のサルディバ氏は、市内を走る自動車の数を踏まえると、公共交通システムを劇的に拡充しない限り、大気汚染の問題を解決するのは無理だとの見方を示した。 *見出しを変更して再送します。 (Brad Brooks記者、 翻訳:伊藤恭子 編集:加藤京子) http://jp.reuters.com/article/olympics-rio-air-idJPKCN10E0OM?sp=true
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