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【社説】トランプ氏が誤解するプーチン大統領の本質
2016 年 7 月 28 日 14:07 JST
共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏に誰か伝えてほしい。娘のイバンカさんからでもいい。ロシアのプーチン大統領は米国の友人ではないし、ましてやトランプ氏自身の友人でもないということ。
26日にフロリダ州南部のリゾートでトランプ氏が会見を開き、民主党大統領候補のヒラリー・クリントン氏の電子メール流出問題に言及した。「ロシアに伝えたい、もし聞いているなら、行方不明になっている3万通の電子メールをぜひ見つけて欲しい。そうすれば米国メディアから多額の報酬を受けられるはずだ」。トランプ氏はこう呼び掛け、もしロシア側がクリントン氏の私的サーバーから行方不明になっている3万3000通のメールを手に入れたのなら、それを公開すべきだと述べた。「彼らはおそらく手元に持っているはずだ。ぜひそれを公開してもらいたい」
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多くの有権者を代表し、11月の大統領選まで共和党の顔となり続けるトランプ氏。この発言についてさらにコメントを求められると、「もしロシアでも中国でもどこの国でも、あの電子メールを入手しているなら、正直、私はぜひ見てみたい」と付け加えた。
正直を言えば私達も、そしてメディアの誰もが行方不明のメールの内容を見てみたいと思っている。しかしだからといって、大統領候補になっている人物が、クレムリンに対してハッキングを促すかのような発言をするのは問題だ。
トランプ氏の発言を受け、クリントン陣営はすぐに批判的な反応を示した。また、共和党のライアン下院議長もトランプ氏の発言に同意できないとのコメントを発表。そして共和党副大統領候補のマイク・ペンス氏がすぐさまトランプ氏の発言内容を調整した発表文をリリースしたことを考えると、トランプ陣営の中にも今回の彼の考えに納得できない勢力がいた模様だ。
トランプ氏は「ロシアに伝えたい。行方不明になっているクリントン氏の電子メール3万通をぜひ見つけて欲しい 」と語った（英語音声のみ）Photo: AP
「ハッキングの件に関しては連邦捜査局（FBI）が調査を行う」と発表文で表明したペンス氏。「仮にそれを行ったのがロシアで、我が国の大統領選に干渉しようとしているなら、共和党および民主党、そして政府も含めて確実に彼らに深刻な事態をもたらす」と続けた。
ぜひ、そうお願いしたい。しかし過去の中国や北朝鮮によるハッキングに対してオバマ政権が毅然とした態度をとらなかったことを考えると、果たしてそれが可能なのかは疑問だ。
トランプ氏のコメントは決して正当化できるものではない。しかし大統領候補である同氏がプーチン大統領に関して好意的な発言を続けている事実は、より一層と不安を掻き立てる。
トランプ氏はプーチン大統領の独裁的な政治手腕についてこれまで何度か触れており、自分の思い通りに物事を動かす才能―つまり帝国主義や軍事主義と似たようなもの―を評価している。さらにトランプ氏は自身の交渉力があればプーチン大統領を出し抜けるとも思っている模様だ。
ロシアの治安当局らと会合するプーチン大統領
目を覚ませ、とトランプ氏に伝えたい。ジョージ・W・ブッシュ大統領は以前プーチン氏と対面した後、「正直で信頼できる男」だと評価した。その後、ロシアはジョージアに侵攻を開始している。オバマ大統領もロシアとの関係を「リセットする」と話していたが、プーチン氏はその恩を仇で返す形でウクライナに侵攻し、その他にも北大西洋条約機構（NATO）の戦闘機に挑発行為を行うなどしている。
プーチン氏が思い通りにトランプ氏を操っているとの陰謀説もあるが、そんなものがなかったとしても彼は地政学に関する集中講義を受ける必要があるだろう。まだ当選していない一候補であるとしても、トランプ氏の発言は世界中で注目されていて、敵対国はそこに付け入る隙を見い出そうとしているからだ。
メディアはまた、クリントン氏やオバマ大統領に対しても同じような視点から厳しく追及しなければならない。有名な話だが4年前の大統領選の際、共和党候補のミット・ロムニー氏がロシアを米国の「地政学的な敵」と表現した時のこと。オバマ氏はロムニー氏の発言を茶化し、冷戦が20年も前に終結していると指摘した。ロムニー氏の考え方は1980年代の外交知識に基づいていると話したオバマ大統領だったが、結果的に正しかったのはロムニー氏の方だ。
クリントン氏が国家機密を私的な電子メールでやりとりしていた件についても、軽視できない。当時の彼女は国務長官だったのだ。この行動はクリントン氏自身のみならず、米国全体を危険にさらし、プーチン大統領に付け入る隙を与えたことになる。トランプ氏の誤解に満ちた問題発言に勝るとも劣らないほどの愚行であったと言えるだろう。
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トランプ氏「信用できず」＝民主ケーン氏が痛烈批判−米大統領選
２７日、米ペンシルベニア州フィラデルフィアで開かれた民主党全国大会で、演説する副大統領候補のティム・ケーン上院議員（ＡＦＰ＝時事）
【フィラデルフィア（米ペンシルベニア州）時事】米民主党の副大統領候補指名を受けたティム・ケーン上院議員（５８）は２７日の指名受諾演説で、共和党候補の実業家ドナルド・トランプ氏（７０）について、「私を信じろ」と言うだけで実際には全く信用できないと痛烈に批判した。大統領候補なら、いかに物事を成し遂げるかを語るべきだとして、トランプ氏の資質に強い疑問を投げ掛けた。
トランプ氏は、選挙集会で「皆さんは知らないだろうが」「私を信じて」という言葉を頻繁に使う。ケーン氏は演説で、トランプ氏が対メキシコ国境に壁を造るといった大きな約束をするときは必ず「私を信じろ」と言うと主張。口調までまねて聴衆の笑いを誘った。
さらに、トランプ氏が多くの約束をする割には「実行すると言ったことをどのように実現するかは、決して述べない」と非難。「トランプ氏のこれまでの実績を考えれば、信じない方が身のためだ」とこき下ろした。（2016/07/28-17:47）
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民主党ケーン副大統領候補、すぐトランプ氏を批判 指名受諾演説
「ドナルド・トランプの口から出てくる言葉は一つとして信じることができない」
米民主党から副大統領候補の指名を受けたティム・ケーン上院議員の受諾演説（英語音声のみ）Photo: AP
By JANET HOOK
2016 年 7 月 28 日 14:31 JST
米民主党の副大統領候補に指名されたティム・ケーン上院議員（バージニア州）は27日、党全国大会が開催されているペンシルベニア州フィラデルフィアの会場で指名受諾演説を行った。国政デビューを飾ったケーン氏はさっそく共和党の大統領候補であるドナルド・トランプ氏に矛先を向け、「ビリーブ・ミー（私を信じろ）」というフレーズに頼って政策の詳細を語らないトランプ氏の選挙運動を批判した。
ケーン氏は「ドナルド・トランプの口から出てくる言葉は一つとして信じることができない」とし、「われわれの国は、口先がうまくて空約束しかしない、自画自賛の解体作業員の手に委ねるにはあまりに偉大すぎる」と述べた。
目立つ存在ではなかったケーン氏が全国的な注目を浴びることになったのは、民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン氏の副大統領候補に選ばれたためだ。だが、演説の中で使われた強い調子の言葉には、副大統領候補に託されている従来の役割――対抗馬の攻撃――を進んで果たそうという意思が表れていた。ケーン氏は大きな政治的資産であるスペイン語の能力も披露した。
クリントン氏のどんな点を尊敬しているかについてケーン氏は、クリントン氏と自分は「コンパネロス・デル・アルマ」（ソウルメート）だとし、クリントン氏を「リスタ」と表現した。ケーン氏の翻訳によると、「心構えができており、試練にも耐え、岩のように堅固で、あらゆることに意欲的で、決して引き下がらない」人物だそうだ。
党大会3日目に副大統領候補の指名受諾演説を行ったティム・ケーン上院議員 ENLARGE
党大会3日目に副大統領候補の指名受諾演説を行ったティム・ケーン上院議員 PHOTO: T.J. KIRKPATRICK FOR THE WALL STREET JOURNAL
民主党大会は党の分裂を示すような波乱の幕開けとなったものの、ケーン氏が受諾演説を行った3日目の夜にはクリントン氏支持で一致団結する党に変貌していた。上院の外交委員会と軍事委員会に所属するケーン氏の演説は、世界的指導者としてのクリントン氏の技能や経験に光を当てるプログラムの中で行われた。
ケーン氏の初仕事は全国の視聴者に向けて、自分を紹介することだった。ミネソタ州で生まれ、カンザスシティの周辺で育ち、イエズス会の男子校で教育を受けた。「そこで自分の信仰は不可欠なものになった」と話した。
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「社会正義のために戦いたいと思っていた」とケーン氏は語った。中米ホンジュラスにあるイエズス会のミッションスクールで働いた経験に始まり、公民権を専門とする弁護士、リッチモンド市長、バージニア州知事、そして上院議員へと上り詰めた経歴を披露した。
クリントン氏が副大統領候補に選んだのは、人種的な多様性を訴えることのできるフリアン・カストロ住宅都市開発長官でも、党内のリベラル派との橋渡し役ができるエリザベス・ウォーレン上院議員（マサチューセッツ州）やシェロッド・ブラウン上院議員（オハイオ州）でもなかった。クリントン氏は以前、国家を運営する準備ができている人物を副大統領候補に選ぶと話していた。
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【社説】クリントン氏のご都合主義、信頼できぬ貿易政策
共和、民主両党が自由貿易に反対する理由をケイトー研究所のダン・イケンソン氏が解説（英語音声のみ）Bloomberg News.
2016 年 7 月 28 日 13:58 JST
米フィラデルフィアで開催されている民主党全国大会で自由貿易に反対する声が高まるなか、バーニー・サンダース、エリザベス・ウォーレン両上院議員は25日の演説で保護貿易主義を大会の公式テーマに押し上げた。クリントン氏は28日までにこのショーに加わるのだろうが、貿易政策での迎合ぶりは信頼性を欠く政治を意味するもので、自身が政治家としてドナルド・トランプ氏より優れているとの主張に疑念を生じさせている。
サンダース、ウォーレン両氏の進歩主義と、関税権を主張するトランプ氏の訴えが広がる中、自由貿易主義は分が悪く、ワシントンのリーダーシップも見えない。ティム・ケーン上院議員も21日に自由貿易主義を取り下げたが、それはクリントン氏のランニングメート（副大統領候補）に確定した後に過ぎない。
クリントン氏は国務長官時代にTPP交渉に貢献し、約45回にわたりTPPを支持する演説をしている。だが民主党の指名候補争いでサンダース氏をかわすため、昨年10月になって大筋合意したTPPへの反対を表明。中国やアウトソーシングその他の脅威に対する姿勢の硬化は遊説で定番の話題となった。TPP反対はオバマ大統領が打ち出した最後の大型施策に反する行為だが、全国大会に集まった民主党員は気にしていないようだ。
さらに顕著なのは、誰もクリントン氏の発言を額面通りに受け取っていないことだ。貿易政策で裏切ったとの批判が左派からも右派からも聞かれる一方、企業のトップはクリントン氏の言動がフェイントであり、選挙後はTPPの承認を働きかけるとみている。
クリントン氏は以前にも、貿易について偽善的行為を指摘されたことがある。夫のビル・クリントン大統領は1990年代に北米自由貿易協定（NAFTA）と対中国最恵国待遇を推進し、ヒラリー氏は2003年に出版された著書でこれらの措置を支持している。
07〜08年の民主党予備選でクリントン氏は、NAFTAという「過ち」について再交渉する意向を示し、議会の承認待ちだったコロンビアとの自由貿易協定（FTA）を撤回させると言明したほか、米韓FTAが成立すれば「米国の雇用をリスクにさらす」と米労働総同盟産別会議（AFL-CIO）の集会で話した。その後、国務省ではコロンビアおよび韓国とのFTAを承認するよう議会に働きかけ、NAFTA再交渉については自身の個人電子メールのサーバーよりも速いスピードで消し去った。
民主党はかつてないほど保護貿易主義を求める圧力に屈している。クリントン陣営はトランプ氏が6月に打ち出した「米国第一主義」の演説を受け、トランプ氏の発言が「向こう見ず」であり、「支離滅裂なアプローチ」が「米経済をリセッション（景気後退）に陥れる」との声明を発表。そうした詳細以外は「ヒラリーの最高のアイデア」を盗んだものであり、「ヒラリー・クリントンの政策ファクトシートをトランプ氏の原稿表示装置に丸写ししたようだ」と付け加えている。
おそらく今回クリントン氏は民主党と共に本当に左に傾いており、その発言は本気なのだろう。その場合、貿易重視政策にしても成長重視政策にしても、トランプ氏に対して特に優位には立っていない。
それとも、クリントン氏は再びトライアンギュレーション戦略（政治スタンスを三角形にたとえて自分は左右の頂点を結ぶ底辺の上にある頂点だと主張する戦略）に出ているだけなのだろうか。今年クリントン氏の新たなスタンスが役立っている点といえば、サンダース・ウォーレン派の懐柔くらいしかない。保護貿易主義でトランプ氏ほどの点数をあげるのは無理だ。保護貿易主義は、トランプ氏が80年代から関心を持ち続けている数少ない政策議論のひとつである。同氏のTPP反対論は、単一争点で投票する有権者の大半を囲い込んでいる。
これに対し、クリントン氏はTPPの見通しにダメージを与えている。反対派の主張の正当性を確認するだけだとしても、大統領に就任した場合に議会の承認を得ることが一段と難しくなりかねない。現在好きにさせている反TPPの党幹部に歯向かう意思もないとあってはなおさらだ。
クリントン氏はかつてTPPについて、米国が競争力を維持するうえでも、アジア太平洋地域における中国の影響力拡大に対抗する存在としても、重要だと主張していた。この考えが今も変わっていなければ、貴重なチャンスを自ら損ねていることになる。クリントン氏は、経済改革の中心にTPPを据える日本の安倍晋三首相を困らせてもいる。
世論調査では有権者の10人に7人近くがクリントン氏は信用に値しないと回答しているが、その理由は同氏の政治家としてのキャラクターと同様に明快だ。クリントン氏は当選するためにはどんな発言も行動もいとわないだろう。たとえそれが、親貿易派のファーストレディーから反貿易派の大統領候補、親貿易派の国務長官から反貿易派の大統領候補、そして親貿易派であろう大統領への「進化」を意味するにしても。
応援団に言わせると、クリントン氏は博識で信頼できる候補だが、裏付けとなる証拠は極めて乏しい。
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