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北朝鮮市民の模範的生活、“演出”だったと暴かれる 波紋を呼ぶ映画「太陽の下」、妨害工作はMoMAに対しても
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47392
2016.7.20 古森 義久 JBpress
ロシア人の映画監督が、北朝鮮の対外宣伝工作の実態を暴いたドキュメンタリー映画を作り、米国のニューヨーク近代美術館(MoMA)主催の国際映画コンクールに出品した。だが、主催者側の一方的な自粛により参加を拒まれていたことが判明した。
この映画は、北朝鮮の8歳の少女とその家族の北朝鮮政権への忠誠ぶりを描きながら、同時にその言動がすべて北朝鮮当局による強制である実態を暴いている。
映画は米国、韓国、日本の一部で公開され、北朝鮮国内での外国メディアの取材活動がいかに政治操作されているかという実情をさらけ出すこととなった。
■カメラが暴く「演出」の実態
ロシアの著名な監督ヴィタリー・マンスキー氏が作った「太陽の下」(Under the Sun)は、約100分のドキュメンタリー映画である。撮影はすべて北朝鮮内部で行われ、“模範的市民”とされるリーさん一家の生活が映し出されていく。特にカメラが追いかけるのは、一人娘の8歳のジンミさんの言動だ。
ジンミさんの父は繊維の模範工場の技師、母は豆乳製造の模範工場の労働者で、一家は平壌市内の高級マンションに暮らしている。
マンスキー監督は映画の制作にあたり、すべて北朝鮮政府の意向や指示に従うという約束で、2014年に撮影を始めた。だが、政府から紹介されたリーさん一家の「設定」に次第に疑問を覚え、その言動はすべて「やらせ」であると確信するにいたった。つまり、撮影スタッフに常に同行していた北朝鮮政府の工作員が、撮影の前にリーさん一家にこと細かに指示を出していたのだ。
そこでマンスキー監督はひそかにカメラを回し、政府工作員がリーさん一家や他の市民に動きやセリフを指示する様子も撮影していく。
映画では、かわいい容貌のジンミさんが当局から特別に選ばれて、北朝鮮の共産主義青年団に入団を認められたという「シナリオ」に基づき、マンションでの家族との食事やピアノの練習、学校での友だちとの交流など、ジンミさんの日常生活を追う。
だが、すべて本番撮影の前に、工作員が、ジンミさんをはじめとする子供たちに「いっぱいに笑って」「金正恩元帥への恩義を大きな声で叫べ」などと指示していた。また、ジンミさんの共産主義青年団への入団が決まると、彼女の両親の同僚がそれぞれの職場でお祝いをする。その際の「祝辞」などもすべて事前に工作員が振り付けを指示していた。カメラはそれらの様子をとらえている。
また、ジンミさんの父親は実は政府メディアの記者であり、母親も工場で働く労働者ではなく官僚であることが、映画の中で明らかになる。
最後にカメラは、ジンミさんが北朝鮮の建国の祖とされる金日成主席の誕生日の「太陽節」の祝賀行事に備えて、金一族礼賛の歌や詩を朗読する光景を追う。そのジンミさんの言動も、もちろんすべて工作員が命令を下している。
ところが、ジンミさんは緊張から言葉を発せなくなる。すると工作員はジンミさんにさらに圧力をかけ、「好きな言葉を考えなさい」「好きな詩を思い出して口にしなさい」と迫る。ジンミさんはしばらく沈黙した後、大粒の涙を流しながら、「敬愛する金正恩元帥様の教えに従い、忠実に国に尽くすように育ちます」という言葉を、苦しそうに発するのだった。
■北朝鮮関係筋からの圧力に屈した美術館
マンスキー監督はこういう内容の暴露映画を北朝鮮当局には知らせずに製作し、2015年秋、ロシア国内の一部で公開した。
北朝鮮当局はそれを知り、ロシア政府を通じて映画の破棄を求めた。だが、マンスキー監督は2016年に入って映画を香港国際映画祭に出品し、審査員賞を受賞してしまう。
2016年2月には、同監督を支援する米国関係者らが、ニューヨーク近代美術館主催の国際映画コンクールに出品しようとした。しかし、理由不明のまま不参加の扱いとなった。
ところが、この6月になって近代美術館当局は「2月の映画祭で『太陽の下』を不参加にしたのは当美術館としての正式の決定ではなく、間違いだった。その措置を取り消して、謝罪する」と発表した。
美術館側の説明によると、同館の管理者の一部が北朝鮮関係筋からの圧力に屈して、自主規制の形で「太陽の下」の不参加を勝手に決めてしまったのだという。
その判断には、かつてソニーが北朝鮮からサイバー攻撃などを受けたことが念頭にあったようだ。2014年にソニーは、北朝鮮の金正恩氏の暗殺工作を描いた「インタビュー」という映画を制作した。内容はフィクションだったが北朝鮮は激怒し、ソニーにサイバー攻撃など激しい報復を仕掛けたのである。
美術館のこの「訂正」と「謝罪」は、6月下旬に「ニューヨーク・タイムズ」によって詳しく報道された。
日本からも、一般メディアの代表や学者、研究者などがよく北朝鮮に招かれ、北朝鮮側の指示に従って特定の人物たちと「会話」をし、特定の施設を「見学」して、その様子が日本で伝えられることが少なくない。だが、そうした招待は、まぎれもなく北朝鮮による対外プロパガンダ工作の一環である。映画「太陽の下」は、その実態を改めて暴き出したというわけだ。
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