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米テキサス州ダラスの市庁舎で行われた警官狙撃事件の犠牲者追悼イベントに出席するダラス警察のデービッド・ブラウン署長(中央、2016年7月11日撮影)〔AFPBB News〕
犯人殺害にロボット投入、一線越えたダラス市警 全米で湧き上がる倫理問題、米軍が全米の警察に横流し
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47363
2016.7.15 堀田 佳男 JBpress
これからの殺人犯はロボットによって殺害されるのか――。
米テキサス州ダラスで7日に起きた警察官狙撃事件で、ダラス市警は殺人ロボットを投入して犯人を殺害した。陸軍の元予備役マイカ・ジョンソン(25)は、意図的に白人警察官の殺害を企てて犯行に及んでいた。
なぜ市警はロボットを使って犯人を殺さなくてはいけなかったのか。米国ではいま殺人ロボットの使用について、倫理問題が浮上している。
簡単に経緯を説明したい。
■爆弾装着ロボットで犯人殺害
現地時間7日夜、ダラス市内で白人警察官に対する抗議デモが行われていた。今月に入ってから、ルイジアナ州(5日)とミネソタ州(6日)で白人警察官による不条理とも思える黒人男性の射殺事件が起き、全米で抗議活動が行われていた。
7日午後9時頃、ダラス市内でデモの警備にあたっていた警官が次々に銃弾に倒れた。5人が死亡し、7人が負傷している。当初、容疑者は複数いると報じられたが、結局単独犯による犯行だった。
同夜ジョンソンは駐車場ビルに立てこもり、膠着状態に入った。8日未明、市警は爆弾を装着させたロボットを投入し、遠隔操作によって犯人を爆死させるのだ。
デイビッド・ブラウン署長は8日の記者会見で、「犯人は限られた場所から狙撃していた。ロボットを使用する以外、選択肢はなかった。他の選択肢は警察官を死の恐怖に直面させる」とロボットの投入を正当化した。
ジョンソンは黒人で、白人警察官に対する感情的な憤りがあったことは容易に察しがつく。もちろんジョンソンの犯罪は正当化できないが、5日と6日に起きた他州での射殺事件でも、警察当局の正当化は極めて難しい
一連の事件は、米社会が抱えるいくつかの重要な問題が再び浮かび上がらせた。人種問題、銃規制問題、警察による過剰行動問題、そして殺人ロボット使用による倫理問題である。
ここで問題提起したいのは、たとえ殺人事件を起こした犯人であっても、人間がロボットに殺害されていいのかという論点である。
ブラウン署長が殺人ロボットの投入を決めたのは、市警がすでにロボットを所有していたからにほかならない。市警は犯人の立てこもりが起きてから、慌てて米軍にロボットを借りたわけではない。
2015年5月、ダラス市警は殺人ロボットを複数台購入したことをウエブサイトに載せている。ロボットはノースロップ・グラマン社製のアンドロス(Andros)という機種で、重量は220キロ。1台約15万ドル(約1540万円)だ。
■米軍が全米の警察に横流し
本来は爆発物処理を目的にしたロボットで、殺人ロボットというわけではない。米軍がイラクなどで爆弾処理をするために使用してきた機種だ。ただ米軍では、爆発処理だけでなく攻撃目的で使うようになっていた。ダラス市警が使用したのと同じである。
実は国防総省(ペンタゴン)は同ロボットの余剰品を全米の警察に売却しており、ダラス市警も入手したのである。
米軍の余剰品を警察に横流しする慣行は、「1033プログラム」と言われ、すでに20年ほど続けられている。今回、使用されたロボットは遠隔操作され、カメラや可動式アームが備わっていた。
それでも市警はすぐにロボットを投入したわけではない。立てこもりが起きてから数時間、ジョンソンと交渉を続けている。投降を呼びかけたが犯人は聞かず、銃撃戦を繰り返した。さらなる被害者がでることを避けるため、殺人ロボットを投入したというわけだ。
将来的には、米軍が敵と戦うために使用していた兵器が、国内で、しかも市民に使われるということである。市民といっても犯罪者に使用されるわけだが、今後は人工知能(AI)を備えたロボットが犯罪の現場で使われる可能性がある。
殺人ロボットが生身の人間を殺傷するようになるかもしれないのだ。
殺人ロボットと言われて想起されるのは、無人攻撃機ドローンである。米軍はパキスタン、イエメン、アフガニスタン、イラクなどで過去何年か頻繁に使用している。
ロンドンに本部を置く「調査報道ジャーナリズム協会」が米政府に情報公開を促して公表された情報によると、前出の4カ国だけで総計1万人近くの死亡者が出ている。その中にはテロリストだけでなく一般人も入る。
今後は殺人ロボットだけでなく、ドローンを含めて、米軍で使用された兵器が国内の警察で使用されるかもしれない。
サウスカロライナ大学法学部のセス・スタウトン助教授はこう述べる。
■司法の新しい章を開いた警察
「警察が容疑者を殺害するために遠隔操作ロボットを使うことは知らなかった。これは明らかに、警察が司法の新しい章を開いたということ。しかも殺人ロボットである点が法学的にも倫理的にも新しい問題を提示することになる」
たとえ凶悪犯であっても、ロボットによって殺害された場合、裁判は開かれないケースも出てくるというのだ。しかも将来、AIロボットが導入され、ロボットの意思によって犯人が殺害された場合、責任の所在はどうなるのかといった問題もある。
首都ワシントンに本部を置く非営利団体サンライト基金のアレックス・ハワード氏は「警察はロボットを使って犯人を含む市民を殺傷すべきではない。連邦議会はこの点を注視しなくてはいけない」と述べる。
米国と日本では、警察の犯罪者に対する処遇が違う。米警察は犯人を銃撃することにほとんどためらいがない。むしろ警察は自衛という意味からも、犯人に銃を向ける傾向が強い。読者の方もよく知る事実だ。
米国内には約3億丁と言われる銃が出回っており、犯罪者と相対した時は、まず銃を所持しているとの考え方がある。先に撃たなければ撃たれる危険性が高いのだ。
ただ、米国にも国家が人を殺害してはいけないとの考え方がある。死刑を廃止している州はその典型と言える。
それでも犯罪現場において、複数人を死傷させているような凶悪犯であれば、多くの国民は現場で殺害されても致し方ないと考える。それが共通認識だろう。
今後ロボットによって犯人が殺害されるという非情な現実に、法的にも感情的にも国民はどう向き合い、どう折り合いをつけていくのか、議論は始まったばかりだ。
たとえば犯人の息子が「父はロボットに殺されました」と語り続けていかなくてはいけない無情さは、笑い話では済まない。それとも、人間ではないので憎しみの感情を抱かなくていいと考えられるだろうか。
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