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「史上最大の金買い」が意味するもの
編集委員 志田富雄
2016/7/3 3:30
英国が欧州連合(EU)からの離脱を決めた6月24日。ニューヨーク市場の金先物相場は一時、1トロイオンス1362ドル台(中心限月の8月物)まで上昇し、2年3カ月ぶりの高値を付けました。この日の安値は1252ドル台で、1日の値動きは100ドルを超えています。為替市場でも一時1ドル=99円台まで円高・ドル安が進みましたが、金の勢いは円も圧倒しました。貴金属販売の国内最大手、田中貴金属工業は週明けの27日、金の小売価格を1グラム4775円(消費税込み)と前週末比で107円も引き上げたのです。
英国のEU離脱という「有事」に対する強さは、金>円>ドルという順番になったわけです。
■買越残高、3週連続で最大更新
英国のブックメーカー(賭け業者)も残留を優勢とするオッズ(掛け率)を示し、国民投票の直前には「結局はEU残留を選ぶのではないか」との楽観論が株式・金融市場に流れました。その中で、終始警戒を解かなかったのが金市場です。その証拠に、米商品先物取引委員会(CFTC)が1日に公表した6月28日時点の売買動向では、ヘッジファンドなど非商業部門の買越残高が約939トン(オプション含まず)まで増え、3週連続で史上最大を更新しています。
昨年まで、金の買い越しは2009年11月の815トン台が最高でした。国際相場が1900ドルを上回る史上最高値を記録した11年9月でも買い越しは400〜500トンほどです。昨年12月には米国が利上げに着手したことで02年8月以来の「売り越し」に転じるかと思われたのです。ところが、そこから急速に切り返し、5月には800トンを突破しておよそ7年ぶりに過去最大を塗り替えたのです。
金上場投資信託(ETF)の最大銘柄、「SPDR(スパイダー)ゴールド・シェア」の投資残高も気がつけば900トンを超えています。過去最大だった12年12月の1350トン台から残高を減らし続け、一時は600トン近くまで減少していたのが嘘のようです。
金の国際機関、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の調べでは、世界の金投資需要(ETFを含む)はすでに今年1〜3月で約618トンと前年同期の2.2倍に膨らみ、7年ぶりの高水準を記録しました。金融危機のまっただ中にあった09年1〜3月(626トン)に迫る勢いです。
渦中の英国では目下、「現物売買のオンラインサービスで英国人の金買いが急増している」(ICBCスタンダードバンクの池水雄一東京支店長)といいます。自ら招いた結果とはいえ、英ポンドが31年ぶりの安値に急落し、英国経済がどうなるか分からない不安感にかられれば金にすがるしか道はないのでしょう。
アジア地域での現物買いは総じて静かなのですが、先物やETFを中心に史上最大規模の金買いが進行中なのです。ニューヨーク金先物が900トンを超す買い越しを記録したことで、短期的には過熱感も否めません。当然、調整局面はあるでしょう。それでも世界の先行きが混沌としているかぎり、金を欲しがる投資家は多いと思います。
英国のEU離脱が決まったことで、安全資産とされる主要国の国債も一段と買い進まれました。ただ、主要国の国債利回りは物価上昇率を引いた実質ベースで全体の51%(3月21日時点のWGC調べ)が「0%未満」なのです。WGCは、非伝統的な政策への移行を意味するマイナス金利政策の導入も世界に「著しい不透明感」をもたらしている、と指摘します。
■資産価値を安定させる効果期待
当然、機関投資家は運用に苦慮し、国内でも資産運用に金ETFを組み込む年金や投資信託が増えてきました。もちろん金に利息は付きませんが、資産の一部に金を組み込むことで資産全体の価値を安定する効果は期待できます。冒頭で触れたように、有事の際、金は株式など伝統的な運用資産とまったく違う値動きをする傾向が強いからです。予期せぬショックで保有株式が急落しても、金が値上がりすれば、資産価値の目減りを和らげてくれます。
英国の国民投票が迫った6月、米国の著名投資家、ジョージ・ソロス氏が投資活動の第一線に復帰したことが市場の話題を集めました。同氏が今回、1992年のようにポンド売りを仕掛けたかどうかは不明です。年明けから中国での債務膨張に警鐘を鳴らし、今度はEUに警告を発するソロス氏の言動を踏まえれば、次々と表面化する危機が8月で86歳になる同氏を第一線に駆り立てたのではないでしょうか。長い経験から世界が直面する歴史的な危機を感じ、じっとはしていられないのでしょう。
同氏のソロス・ファンド・マネジメントの資産公表では、米国株の下落を読むプットオプション(売る権利)を増やすと同時に、金ETFや金鉱株が買い増されています。いつ何が起きてもおかしくない差し迫った危機に備える運用資産の見直しといえます。
米国経済の復調→9年半ぶりの利上げ→ドルの信認回復→金の役割後退というシナリオに乗った売却局面は終わり、急速な金の買い戻し局面が始まったのです。足元では中国や欧州経済の先行き不透明感が米国にも波及し、「米国は当面、追加利上げに動けない」との観測も強まっています。
チャート分析を専門とする三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮田直彦チーフ・テクニカルアナリストは、ニューヨーク金先物は11年9月の高値(1921ドル)からの下げが昨年12月の安値(1046ドル)で終わり、反発局面にあると指摘します。当面は13年8月の高値(1433ドル)をめざし、昨年までの下げ幅に対する5〜6割の戻り(1484〜1587ドルまでの上昇)があってもおかしくない、と予測します。
4月の当欄で解説した「金とプラチナの相場逆転」も両者の価格差が再び300ドルを超え、過去最大を更新しました。世界経済が抱える不安を映し、国際商品も金だけが突出して高いのです。
■金は経済不安のバロメーター
かつてソロス氏の盟友だった有力投資家、ジム・ロジャース氏も日本経済新聞の取材に対し「向こう数年間、世界経済に楽観できる要素はなにもない」と悲観的な見方を示しています。史上最大の金買いは、ロジャース氏が危惧する「世界的な債務の拡大」とも裏腹なのです。
熟練の投資家から一般庶民、プロの機関投資家まで幅広い層が史上最大の金買いを巻き起こしています。読者の中には、史上最大の買いが起きているのに金相場は11年9月の最高値から600ドルも安い、と思う人も多いでしょう。私は逆に、米国経済が復調し、ドルの信認が回復したにもかかわらず金相場はまだ1300ドル台で高止まりしている、と考えます。
米インターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指数(米ドルの価値を対主要6通貨で指数化したもの)は昨年一時100台を回復し、70台で推移していた11年から大きく水準を切り上げました。それでも金という不安のバロメーターから見れば世界経済は正常化しておらず、状況は再び悪い方向へ向かっていると読めるのです。
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO04202910Z20C16A6000000/
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