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デービッド・キャメロン首相の辞意を報じる英国の新聞の一面(2016年6月24日撮影、資料写真)。(c)AFP/Daniel SORABJI〔AFPBB News〕
英国のEU離脱、米国では「よくやった」の声も 改めて問われるEUの存在意義
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47221
2016.6.29 古森 義久 JBpress
英国が国民投票でEU離脱を決めたことに対して、米国の一部では「英国が民主主義によって国家主権の回復を果たした」として歓迎する意見が登場し始めた。
経済や金融の観点からだけ見るのではなく、英国があくまで独立した主権国家として自国民の意思でEU離脱を決めたことを評価し、「米国は英国と“特別な関係”を改めて強化すべきだ」と主張している。
米国政府は英国のEU離脱には明確に反対する立場をとってきた。オバマ大統領も、英国がもし離脱する場合、米国との貿易交渉などで「行列の末尾に並ぶことになる」と警告していた。産業界でも経済界、金融界を中心に英国のEU離脱に反対する声が強かった。
しかし一方で、この数日の間に、米国内の保守派を中心に「英国がEUを離脱したのは、むしろEUの専横や硬直性に原因がある。英国は今回の選択によって主権国家としての独立を取り戻した」と評価する声が聞かれるようになってきたのである。
この背景にあったのは、米国のEUへの不信感だ。つまり、EUの経済政策が社会主義的な方向に動き、安全保障でも米国から離れつつあることへの不信感が米国で広まっていた。
■離脱は「英国の主権国家としての前進」
米国で英国のEU離脱を歓迎あるいは支持する意見としては、以下のような実例がある。いずれもここ数日の間に公表された主張である。
【ジョン・ボルトン氏(元国務次官)】
<英国はEUを離脱し、米国はその離脱を支持せねばならない>
<ブレグジット(英国のEU離脱)勝利は真の大衆革命だ>
(ボストン・グローブ紙などへの寄稿論文の見出し)
「英国は長年、EUに国家主権を譲り渡し、国際的にも自主性、自律性を弱めてきた。その衰退は米国の利益にも反する。だから米国はブレグジットを歓迎し、支持すべきだ」
「EUが進める『共通外交安保政策』(CFSP)は、EU各国が共同の外交政策や安保政策を推し進め、新たな多極グローバル秩序の構築を目指している。CFSPは、英国と米国の連帯を弱め、北大西洋条約機構(NATO)の実効性を抑えることになる」
「英国議会が成立させる立法の約60%は、EUの官僚機構が作成した法令を自動的に採択させられている。EUの要請と英国の要望との立法面でのギャップは、多くの英国国民に主権の喪失を感じさせてきた」
【ジョージ・ウィル氏(有力政治評論家)】
<歓迎すべき英国の国家的地位の復活>
(ワシントン・ポスト紙への寄稿論文の見出し)
「英国のEU残留派は、もし離脱すれば多くの困難が英国を襲うと唱えたが、効果はなかった。EUはいまや化石のようになり、その存続自体が問われている」
「私たちは自分の土地で、自分の法律で、自分の価値観と自分自身のアイデンティティの下に生きていく。こんな意思表明がフランス国内でも広がってきた。イスラムの攻撃と移民の侵入がフランスの歴史を変えたというのだ」
「残留支持派の識者たちは『英国の離脱は孤立主義への後退だ』と述べる。だが、離脱こそが英国の主権国家としての前進なのだ。国家の地位の復活こそが、国家主権に基づく対外的な活動強化の大前提だからだ」
【ウォール・ストリート・ジャーナル社説】
<英国が独立を宣言する>
<欧州への新しい米国の取り組み>
(6月24日付、26日付の社説の見出し)
「英国の離脱はEUにとって、経済の成長と競争を促す市場に戻ることを促す警鐘とすべきだ。EUは1980年代後半から、規制強化、増税、過剰な環境保護、競争抑制などにとりつかれた超国家組織となり、生まれ変わろうとしなかったからだ」
「英国の離脱は米国にとって米英間の『特別な関係』を再強化し、NATOの再活性化を図る好機となる。“EU独自の安全保障体制の構築”という無駄な試みも止めることができる。米国は英国との二国間の自由貿易協定を目指すべきだ」
「過去の何世紀にもわたって英国が世界で強力な存在だったことは偶然ではない。英国はEUからの独立宣言によって、覚悟を決めた民主主義国がどれほど多くのことを達成できるか、改めて実証するだろう」
■「脅し」によって独立への思いが強くなった
日本のニュースメディアは、米国では官民ともに英国のEU離脱を否定的にとらえているかのような構図を伝えている。だが、以上のように歓迎し、EUのあり方に疑問を投げかける識者たちも存在するのだ。
最後に、そうした米側の識者たちが共鳴した、英国の歴史学者の意見を紹介しておこう。英国の著名な歴史学者アンドリュー・ロバーツ氏が、国民投票の1週間前にワシントンの有力な学術財団の賞を受けた際の演説からである。
「自国の法律の60%がブリュッセルのEU本部で作られる現在のシステムを続けるのか、それとも英国国民が自ら法律を作るのか。6月23日の国民投票で、英国民がそれを決めるのだ」
「英国内でテロを煽るイスラム系伝道師やテロ容疑者を追放する権利を取り戻すのか、それとも、EUの法律に基づいて、そうした人物たちを英国の資金で国内に居住させたままにするのか。国民投票は、英国民がそれを決めることでもある」
「英国国民は、EU官僚機構やIMF(国際通貨基金)、世界銀行などから、EUを離脱すると貿易や金融がひどい損失をこうむるぞ、と長い間脅かされてきた。だが、それらの脅しによって、英国国民は萎縮することなく、むしろ独立を強く求めるようになった。この世界にはカネよりも重要なものがあるのだ」
アンドリュー氏はこのように述べたうえで、米国人の聴衆に向かって「自由を求める人々にとって自立した政府が何を意味するのかを知っている米国人は、どうか英国の独立の大義の下に結集してほしい」と結んだ。
日本の視点として、今回の英国のEU離脱には、経済や金融の次元を超えるこうした動因が存在することも認識しておくべきだろう。
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