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スイス、条件付きの移民制限をEUに提案へ─大統領 英国離脱プロセス、3つの謎 10のシナリオ 欧米急進化を阻む救世主は 
http://www.asyura2.com/16/kokusai14/msg/395.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 6 月 27 日 16:44:51: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

World | 2016年 06月 27日 12:37 JST 関連トピックス: トップニュース

 
スイス、条件付きの移民制限をEUに提案へ─大統領=新聞

[ウィーン 26日 ロイター] - スイスのヨハン・シュナイダー・アマン大統領は、ツァイトゥング紙とのインタビューで、移民制限に関する欧州連合(EU)との交渉で、特定地域・業界で移民を制限できるようEU側に提案する考えを示した。

スイスは、人口の約25%を外国人が占めるが、2014年の国民投票では、3年以内に移民の受け入れに上限を設ける提案が可決された。ただ、全面的な移民制限は、労働者の自由移動を相互に認めるEUとの協定を破ることになる。

同大統領は「(イタリア語圏の)ティチーノ州で、多くのタクシー運転手が失業中なのに、移民のタクシー運転手が全体の平均を上回る数いるという状況」を例として挙げ、特定地域の特定業種や業界で移民を制限できるようEUと交渉する方針を示した。

EU側は、相互協定が定める労働者の自由移動を妨げることは何であれ受け入れない方針を示している。両者の協議は、EU離脱の賛否を問う英国民投票後に持ち越されていた。

今後EUは、英国のEU離脱への対応で手いっぱいとなり、スイスとの交渉が早期にまとまる可能性は低いとみられている。

大統領は「夏の休暇前に大まかな道筋をつけたい」との考えを示した。
http://jp.reuters.com/article/swiss-eu-immigration-idJPKCN0ZD09A

Column | 2016年 06月 27日 07:24 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:視界不良の英国離脱プロセス、3つの謎=吉田健一郎氏

 6月24日、みずほ総合研究所・上席主任エコノミストの吉田健一郎氏は、英国に求められるのは「秩序立った離脱」だが、同国政府の意思決定プロセスの混乱が予想されることなどから、先行きは極めて不透明だと指摘。写真は、ロンドンの国会議事堂広場に立つウィンストン・チャーチル元首相の像。6月撮影(2016年 ロイター/Stefan Wermuth)

吉田健一郎 みずほ総合研究所 上席主任エコノミスト

[東京 24日] - 23日に英国で行われた欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票は、離脱票が約52%と残留票の約48%を上回った。今後の英国離脱プロセスはどのように進むのか。みずほ総合研究所・欧米調査部の上席主任エコノミスト、吉田健一郎氏に、日本経済への影響と併せて、予想されるシナリオを聞いた。

同氏の見解は以下の通り。

<今後の離脱プロセスは>

英国に求められるのは「秩序立った離脱」だが、先行きは極めて不透明だ。視界不良の理由は主に3つある。第1に、英国の欧州連合(EU)に対する離脱通告がいつ正式に行われるのかが分からない点だ。

EU脱退を定めたEU条約第50条では、すべての手続きは通告を受けて始まることになっている。だが、EU離脱派の中には、英国に対する不利益が減るようEU側と水面下で非公式交渉を進め、道筋がついたところで正式に通告すれば良いという意見が多い。

また、EU条約第50条の第1項には、「いずれの構成国も、その憲法上の要件に従って連合から脱退することを決めることができる」とあるが、成文憲法のない英国で、この項目をどうクリアするのかが不透明だ。

むろん、国民投票が示した意思は「離脱」だが、通告前に議会で採決する必要が出てくるのかもしれない。その場合、英下院は残留派のほうが多いため、波乱がないとも限らない。

第2の不透明性は、英国とEUの今後の交渉期間とその内容をめぐるものだ。脱退協定の項目は、脱退日はもとより、EU内で働く英国人(また英国内で働くEU加盟国民)の地位・権利問題から、既存の国際協定(EUが他国・他地域と結んでいる自由貿易協定など)での英国の取り扱いなど、多岐に渡る。

さらに、EU条約は、隣国との関係の規定を義務づけているため、並行して新協定の交渉が行われる必要がある。また、そもそも脱退協定は新協定を念頭に置いたものなので、切り離して議論することは難しい。

EU側も安易な妥協はしにくいだろう。2017年には、多くのEU加盟国で選挙が予定されている。3月にはオランダ総選挙、4―5月にはフランス大統領選と6月には同国で下院選挙、秋にはドイツで総選挙がある。EU懐疑派が勢いを増すような英国側のチェリーピック(つまみ食い)を容易に認めるとは思えない。脱退通告前の非公式会合も、EU側が受けてくれるかどうかは不明だ。

第3の不透明性は、上記2つとも関わるが、英国政府の今後の意思決定プロセスである。国民投票の意思としては「離脱」が選択されたが、様々なEU法の適用をどう停止し、EUとの新協定をどうするのか、英国内での議論が当然必要になる。その決定は、議会民主主義の下で、残留派が多い下院において行われることになる。

残留派議員は、離脱後も、人の自由な移動を含めたEU市場へのアクセス維持を極力求めるだろう。しかし、離脱派の勝因は、人の移動、特に移民問題が英国に与える悪影響を前面に押し出した点にある。国民投票結果と議会がどう折り合いをつけていくのかが今後の注目点だ。

もちろん、下院解散も選択肢かもしれないが、英国では2011年に下院議員の5年の任期が原則守られる(首相の解散権を大幅に制限する)「議会任期固定法」が成立し、任期途中の解散総選挙のハードルはかなり高くなっている(議会の自主解散は定数の3分の2以上の賛成が必要)。また、下院選挙では離脱派が勝利するとは限らないことを考えると、解散の可能性はあまり高くないのではないか。

ただ、不透明な状態が長引けば長引くほど、英国経済への悪影響は当然大きくなっていく。したがって、私の予想では、国民投票で離脱の意思が示された以上、やはりそう遠くない時点でEU側に通告し、脱退・新協定交渉に入るのではないかと見ている。

ちなみに、EU条約では、協定の合意がなければ、脱退通告から2年後にEU法の適用が停止されると定められているが、EU加盟全28カ国の合意があれば、交渉の延期は可能だ。協定がないままでの英国離脱は、EUにとっても経済的な打撃が大きいため、2年で話がまとまらずとも、いずれ何らかの妥協点が見出されるのではないかと考えている。

<英国とEUの新協定はどのような姿に>

想定されるシナリオは3つだ。1つはノルウェー型で、欧州経済領域(EEA)に加盟することによって、従来同様に単一市場への自由なアクセスを確保する道だ。残留派の一部は、この選択肢を好むかもしれない。

ただし、EEAは基本的にEU法と同じであり、主権回復を求める離脱派の要望には沿わない。何より、EUの政策決定に関与できないにもかかわらず、EU予算への拠出を求められる。そのため、英国民投票が離脱で決した以上、ノルウェー型は英国には選択しにくいだろう。

第2はスイス型で、これは欧州自由貿易協定(EFTA)に加盟したうえで、EUと各種個別協定を結ぶというものだ。端的に言えば、EU法のチェリーピックである。メリットはオーダーメイドな協定を目指せる点だが、デメリットは交渉長期化だ。スイスとEUの場合、合意までに約10年かかった。また、スイス型には金融サービスが含まれていないことから、英国がこの路線を目指そうとすると、さらに長い年月が必要となる可能性もある。

第3の道はカナダ型で、私はこれが英国にとって一番現実的な選択肢ではないかと見ている。カナダ型は、EUとの包括経済協定(CETA)を目指すもので、社会保障や移民といった政治的にデリケートな問題は含まれておらず、EU予算拠出も不要で、主権侵害の度合いが低い。英国側からすれば、一番ハードルが低い選択肢だろう。

いずれにせよ、ポイントは、EU単一市場へのアクセスというメリットと引き換えに、英国がEU法をどこまで受容するかということだ。メリットとデメリットは、いわずもがな、トレードオフの関係にある。

ただし、同じことは、EU側にも言える。英国との関係維持によって得られる政治経済的メリットと引き換えに、どこまでEU法に関する英国のわがままを許容するかと言うことだ。

<英国EU離脱の日本経済への影響は>

視界不良の状況が長引けば長引くほど、特に金融市場を通じた影響が懸念される。リスク回避で円高・株安がさらに進めば、企業収益が大きくダメージを受けるほか、消費や物価を下押しし、デフレ圧力を強める公算が大きいからだ。

ただし、ドル円相場について言えば、リーマンショック後のように、80円、70円まで円高ドル安が急激に進むシナリオは考えにくい。1つには、リーマンショックは「何も分からない」未知の危機だったが、今回のケースは不透明性が高いとはいえ、「何が分からない」かは分かっている。また、当時の危機を経て、国際的な危機対応体制の整備も進んでいる。

市場の混乱が収まるとすれば、ここから数週間が勝負だろう。前述した通り、英国の離脱交渉は長期化する公算が大きく、市場もこのことをずっと取引の材料にはできないのではないか。

ただ、こうなると問題なのは、円高方向にどんどん進んでいかずとも、今の水準で止まってしまう可能性が高いことだ。円安に戻る理由は現時点では見当たらない。この状態が持続すれば、日本の景気下押し圧力として懸念される。

むろん、経済的に一番大きな打撃を受けるのは震源地の英国であり、次に欧州だ。だが、足腰が弱まっている日本経済が市場混乱から受けるダメージは、米国や中国よりも大きくなる可能性はある。

(聞き手:麻生祐司)

*本稿は、吉田健一郎氏のインタビューをもとに、同氏の個人的見解に基づいて書かれています。

*吉田健一郎氏は、みずほ総合研究所・欧米調査部の上席主任エコノミスト。1996年一橋大学商学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)入行。対顧客為替ディーラーを経て、04年より、みずほ総合研究所に出向。エコノミストとして08年―14年にロンドン駐在。ロンドン大学修士(経済学)。
http://jp.reuters.com/article/column-brexit-process-kenichiro-yoshida-idJPKCN0ZA1HN?sp=true


World | 2016年 06月 27日 13:45 JST 関連トピックス: トップニュース

情報BOX:英EU離脱で想定される10のシナリオ

[ブリュッセル 26日 ロイター] - 英国民投票で欧州連合(EU)離脱派が勝利したのを受け、英国とEUは今後どのような交渉を行うのだろうか。考え得るシナリオをまとめた。()内は各シナリオに対する寸評。

(1)規則通り

キャメロン英首相はEU首脳らとの間で、EU基本条約(リスボン条約)第50条のみが離脱交渉に入る正式な道筋になることで合意している。

首相は保守党が10月に選ぶ次期首相にこの手続きを任せたい意向。EU首脳らは英国が直ちに、あるいは可及的速やかに手続きに入ることを望んでいるが、強制する法的権限は持たない。

最も友好的な離脱シナリオは、キャメロン首相がブリュッセルで開かれるEU首脳会議に出席する28日にも50条を発動する(これはありそうもない)か、首相かその後継者が後日、書簡で発動することだ。

発動後、交渉期限2年の間に友好的な離脱方法がまとまる。EU予算内の資産と負債を分割し、英国外のEU諸国に住む英国人や英国に住む他のEU市民の地位などで折り合うのが理想だ。

さらに理想的なのは、離脱と時を同じくして発効する新条約を結ぶことなどにより、英国とEUが新たに緊密な経済関係を築くこと。こうした条約は残りのEU諸国27カ国のうち20カ国が合意すれば発効が可能となる。まったく新しい関係を築くとなれば、恐らく全加盟国の同意が必要だろう。

また、英国を含む28カ国すべてが合意すれば、2年という交渉期間を延長することもできる。

(話がうますぎる。EUはそんなにやわな相手じゃない)

(2)ごめん、本気じゃなかった

英国は主要政党が内部分裂し、親EUのスコットランドが独立をちらつかせるなど、政治的な大混乱に陥っている。国民投票結果は憲法上の拘束力を持たず、政府と議会は、恐らくは次の選挙の後、国民投票結果を無視する。そうなればEUは元通りになるが、キャメロン首相が2月にEUから勝ち取った特別待遇は破棄されるだろう。

(民主主義の信頼という意味で限界を超えている)

(3)本気だけど、ちょっと待って

EU離脱派は以前からリスボン条約第50条が定める2年間という期限に懐疑的で、英国を移民受け入れなどのEU規則から免責する包括的な協定を結んだ「後に」50条を発動すべきだと公言する者もいる。これほど包括的な協定締結には5年以上を要するのが世界基準で、英国はその間EUに留まり続ける。

EU首脳らにとって、これは悪夢のシナリオだ。終わりのない交渉が始まり、EU全域のEU懐疑派勢力が英国を真似しようとするだろう。

EU側は、英国が50条の定める日程に自らを拘束するまで交渉には入らないと表明している。良いとこ取りは許さないという姿勢だ。

そうなると理論上、こう着状態が延々と続くかもしれない。英国は駄々っ子のように食卓の雰囲気をぶち壊し、そうした中で来年はフランスとドイツで選挙が実施され、EUは7年間の新たな予算協議に入る。

どこかで妥協が必要になり、歩み寄りに向けた動きが始まる。

(妥協はEUのお家芸。このシナリオは排除できない)

(4)本気だった、けど間違ったかな

EU当局者らは、一度50条を発動すれば、出戻りは許されないと主張する。しかし、そこは完全に明確ではない。将来の英国政府が、「離婚手続きに入ってはみたものの、皆が賛同してくれるなら婚姻状態を続けるのが最良だという結論に達した」と言うこともあり得るだろうか。

(シナリオ2を参照。ただし過去のことは忘れよう)

(5)ちょっと手を加えたい

一部離脱派は国民投票での勝利について、英国がEU内にとどまりながらやや距離を置くための、再交渉のテコに過ぎないとの考えを示唆している。そして再び国民投票を実施する可能性があるという。EU指導者らは、「良いとこ取りは許さない」という立場からこの可能性を排除してきた。キャメロン首相は今年、金融規制や移民政策についてEUから譲歩を引き出したが、国民投票結果によってこれは白紙に戻った。従って再交渉は一段低いところから始まることになる。しかし英国を「準加盟国」や「特別パートナーシップ」にするといった案は、以前から欧州で浮上している。

(シナリオ4を参照。しかし妥協の地、欧州においてはいかなる可能性も排除できない)

(6)ノルウェー、スウェーデン型

英国はノルウェーやスウェーデン、アイスランドのように、欧州経済領域(EEA)や欧州自由貿易連合(EFTA)に加盟してEUと緊密な関係を保つ手もある。しかし、これらの国の一部が受け入れているEU予算への拠出や移民受け入れに同意する必要があり、英政府は離脱派市民にこの点を納得させなければならない。英金融セクターにとって非常に重要なEU市場へのアクセスも得られない。より英国独自のテーラーメード型となると、先述のシナリオになる。

(少なくとも今、英国民が望んでいる形ではなさそうだ)

(7)EUは一からやり直し

英国離脱がEUに及ぼす影響があまりに壊滅的なため、EU側はスタート地点に戻り、英国を含む新たな連合の創設に取り掛かる、という極端なシナリオもある。

(間違いなく確率は低い。少なくとも近い将来は)

(8)EUに再加盟

英国はいつでもEUに再加盟できると言う離脱派もいる。しかし長年にわたる交渉や全加盟国の承認など、厳しい道が待ち構えている。英国はユーロへの加盟など、これまで例外を認められていた条件も数多く飲まされるだろう。

(非常にメリットが小さく、しかも遠大なシナリオだ)

(9)スコットランドが独立

スコットランドには、英国から独立してEU離脱を避けたいと望む人々がいる。しかしEU当局者らは、英離脱後の空席に独立後のスコットランドがそのまま収まるわけにはいかない、と述べている。

2014年、スコットランド独立の是非を問う住民投票が行われた時、EUは独立後のスコットランドが加盟を申請することはできるが、セルビアのように「最後尾」に並ぶことになり、ユーロではなくポンドを採用したいとの望みも叶えられない、と指摘していた。

(近い将来ではないが、スコットランドがいずれEUに加盟することはあり得る)

(10)喧嘩別れ

英国の次期政権は一切交渉せずにEUと決別する。50条を発動して2019年に法的に離脱することができる。2年間の通告期間を無視して直ちに離脱し、EU条約の義務を回避することも可能だ。国際法における英国の信頼は損なわれる。しかしEUがこれを防ぐ手立てはない。

EUは貿易面や域内に住む英国人を巡って復讐に出る可能性があるが、欧州経済と欧州市民に辛い影響が及ぶだろう。しかしEU指導者は、離脱後の英国に大きな顔をさせると、他のEU諸国の愛国主義勢力を勢いづかせると恐れている。

(「相互確証破壊」をちらつかせた後に緊張緩和、と言ったところ)
http://jp.reuters.com/article/brexit-ten-scenario-idJPKCN0ZD0CP


 
FX Forum | 2016年 06月 27日 13:00 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:欧米政治「急進化」を阻む救世主はいるか=嶋津洋樹氏

SMBC日興証券 シニアマーケットエコノミスト
[東京 27日] - 欧米主要国では最近、穏健な保守(中道右派)や革新(中道左派)を標榜する政治勢力の後退が目立つ。特に中道左派の退潮は著しく、政権交代や第3党への転落が相次いでいる。

代わって台頭しているのが、移民や外国人の排斥、資本主義の否定、既得権益の破壊など、極端な主張を掲げる政治勢力だ。結果として、左派のみならず、右派でも中道路線は後退し、急進派が勢力を拡大している。

興味深いのは、いずれの急進派勢力が掲げる政策も最終的には財政の拡大に結びつきやすい点である。欧州債務危機をきっかけに強まった世界的な財政健全化や構造改革重視の路線は、低成長の長期化という現実を前に岐路に立たされているようにみえる。

例えば、国民投票で欧州連合(EU)離脱の意思が示された英国では昨秋、労働党党首に鉄道の再国有化などを主張するコービン氏が就任。ブレア氏、ブラウン氏という2人の元首相が進めた穏健化路線は大幅に修正された。

コービン氏は、今回の国民投票ではEU残留派として活動したが、もともとは労働党では少数派のEU懐疑派として知られる。そのような人物が同党の党首を務めているという事実は、中道左派の後退を象徴していると言っていいだろう。

<欧州改革派の頼みの綱、レンツィ伊首相も苦境に>

一方、現在、4年に1度の大統領選の期間中にある米国では、リベラル色が強く、泡沫候補とみられていたサンダース上院議員が民主党の候補者指名争いで善戦。米大統領候補の本命と目されたクリントン元国務長官は最後まで苦戦を強いられた。米民主党内では、党内の穏健派ではなく、サンダース議員や同議員に近いウォーレン上院議員を副大統領候補として指名すべきとの声が出ている。

また、ドイツでは、メルケル首相が党首を務める中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)と連立を組む中道左派の社会民主党(SPD)の支持率が大幅に低下。各種世論調査で、反ユーロを掲げ、難民の受け入れに慎重な右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に猛追されている。

さらに、フランスではオランド大統領の支持率が低迷。そのことに危機感を抱いた中道左派の与党・社会党は2017年の大統領選を前に予備選を実施する方針を固めた。この間、スペインでは反緊縮を掲げるポデモスが共産党の流れを組むウニドスと選挙協力で合意。26日の再選挙では、ポデモスの伸び悩みが報じられているが、フランコ体制の崩壊以降、政権の一翼を担ってきた中道左派の社会労働党(PSOE)も依然として党勢の回復にはいたっていない。

こうしたなか、イタリアでは2014年にレンツィ首相が中道左派の民主党(PD)から誕生。国民的な人気を背景に、イタリア経済の硬直性の象徴として長年批判されてきた破産法を近代化し、解雇法制を整備するなど、構造改革に積極的に取り組んできた。

しかし、直近の地方選では、民主党の地盤とされるトリノで反体制派政党である「五つ星運動」の候補に敗北。主要6都市の成績は首都のローマでの敗北も含め、2勝4敗と振るわなかった。地方選の結果が中央の政治に及ぼす影響は限定的とはいえ、レンツィ首相の求心力が低下し、必要な改革に着手できないリスクが高まっている。

最初にそのことを確認できるのは、10月に行われる憲法改正案の是非を問う国民投票だろう。というのも、レンツィ首相は現在、これまでたびたび国政の停滞を招いたとされる上下両院の平等原則を変更し、上院の権限を大幅に制限する憲法改正を準備しているからだ。

レンツィ首相は国民投票が否決されれば辞任する姿勢を示している。可決されれば、イタリアの構造改革は一段と加速する可能性があるが、直近の地方選は否決のリスクが決して低くないことを示している。仮にレンツィ政権が瓦解するようなことがあれば、欧州における中道左派の退潮を改めて浮き彫りにすることになりそうだ。

<中道左派の模範解答はカナダのトルドー政権か>

ただ、欧米主要国の中でも中道左派が躍進している国はある。カナダのトルドー首相が率いる自由党は2015年10月の総選挙で躍進し、約10年ぶりに政権を奪還。直近の世論調査では支持率の一段の上昇さえ報じられている。

カナダは2016年2月までの半年間で約2.5万人のシリア難民を受け入れ、今後10年間で名目国内総生産(GDP)の3%に当たる600億カナダドル規模のインフラ投資を実行する計画だ。カナダの例は、欧州や米国で批判される難民・移民の受け入れに対する寛容さや、明示的な財政政策の拡大が、必ずしも支持率の低下につながらない可能性を示している。

ただし、トルドー首相は準備に余念がない。例えば、シリア難民の受け入れにあたっては、飛行場での保安検査を徹底するなど、安全対策を強化したほか、入国してからの金銭的な生活支援、語学を含む教育、雇用の斡旋などを充実させたと報じられている。

また、インフラ整備の拡大で目先は財政の悪化が避けられないが、公約では2019年に財政収支を均衡させる方針である。なお、中間層や小規模企業を対象に所得税減税や法人税減税に踏み切ったものの、その財源の一部は富裕層に対する増税で賄われている。

カナダはドイツほどではないが、フランスやイタリア、スペインなどの欧州主要国に比べて財政状態が良好で、大胆な政策を打ち出しやすいというアドバンテージがある。それでも、入念な準備と対象をはっきりとさせたうえでの政策実行は、付加価値税や公共料金の引き上げ、失業保険や年金の削減などの財政収支改善策をほぼ一律に進めた欧州主要国とは大きく異なるだろう。

むろん、難民に対する金銭的な支援や富裕層のみを対象にした増税は、国民の不公平感を強め、場合によっては支持者の離反につながりかねない。それは特に中道路線を標榜する政党にとって大きな打撃となり得る。

しかし、カナダの自由党は中道路線を維持しつつも、コアの支持者に的を絞った政策を実施。そのことで、既存支持者の離反を最小限に抑えていると考えられる。自由党の支持率が上昇しているのは、トルドー首相の実行力が変化を求める新たな支持者の獲得につながっているからだろう。

何事も万人を満足させることは難しい。しかし、欧米主要国では近年、支持率の上昇を狙って多くの国民に良い顔をする政党が多かった。特に中道左派は社会保障や年金の維持・拡充を旗印とし、実際に多くを実現させてきた。

ところが、リーマンショック後、世界景気の拡大ペースは大幅に鈍化。欧州債務危機は、低成長下での歳出拡大が続かないことを示したと言えるだろう。中道左派の退潮が中道右派よりも深刻なのは必然に思える。中道左派にとって、カナダの自由党のようなメリハリのある政策は1つの模範解答だろう。

ちなみに、中道左派の退潮は必ずしも中道右派の追い風になっていない。それどころか、このまま低成長が続けば、中道右派も退潮を免れない。実際、冒頭で触れた通り、中道左派の退潮で最も恩恵を受けているのは、既存政党を否定する勢力である。その典型が米大統領選の共和党候補者に事実上決まったトランプ氏であり、フランスで台頭する国民戦線(FN)、英国のEU離脱を強く主張した独立党(UKIP)だろう。

そうした政党は難民や移民などの外国人が国民から仕事を奪ったと主張する。しかし、彼らがいなくなれば、その分、家も車も必要なくなる。労働者ばかりではなく、彼らの需要も消えるはずで、単純に、国民に仕事が回ってくるとは考えにくい。低成長を打破する政策を打ち出せるか否かが、中道右派の躍進のカギになるだろう。

*嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントを経て2010年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネージャーとして、日米欧の経済、金融市場の分析に携わる。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-hiroki-shimazu-idJPKCN0ZD07P

 

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コメント
 
1. 2016年6月27日 19:59:20 : C6iWfPIeZE : xP0J5a8B6Sc[4]
スイスは加盟国じゃないから何言っても関係ない。

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