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英南西部ブリストルに出現した、米大統領選で共和党の候補指名を確実にしたドナルド・トランプ氏(左)と英ロンドン前市長のボリス・ジョンソン氏がキスを交わす壁画(2016年5月24日撮影)。(c)AFP/GEOFF CADDICK〔AFPBB News〕
ブレグジットが決まれば、英国を穏便に離脱させろ EU離脱ドミノを防ぐための報復的対応の愚
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47108
2016.6.16 Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年6月13日付)
欧州の政府高官と話をすると、何度も耳にする意外な議論が1つある。もし英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱を決め、それが成功と見なされたら、ほかの加盟国も追随したくなるかもしれない、この危険は芽のうちに摘み取らねばならない――というものだ。
このような思考は、ブレグジット(英国のEU離脱)が経済的にうまくいく可能性があることを暗に認めるものだ。具体的には、こうした主張を展開する人は、ブレグジットが成功したら、親欧州派から、彼らが最も強力な主張と考えているものを奪うと心配している。つまり、未知に対する不安だ。
離脱派に傾いた最近の世論調査の変化は、残留陣営が展開している不安作戦がうまくいっていないことを示唆している。もし「プロジェクト・フィアー」――EU残留を訴える運動に付けられた呼び名――が英国で目に見えて失敗したら、よその国が採用することはできない。欧州統合支持派はその場合、EUを是とする前向きな議論を展開せざるを得なくなる。これは多くの人が難しいと思っていることだ。だからブレグジットは、加盟国が次々と英国の後に続いてEUから出ていくことを決めるドミノ効果を引き起こす恐れがあるという。
そのため、ブレグジットの成功は是が非でも阻止しなければならない。フランスでは、一部政府高官が英国に対する報復的な対応を提唱し、少なくとも、単一市場を含めたすべてのEU条約からきっぱり決別させるべきだと唱えている。こうした人は、EU離脱にあたり、世界最大の自由貿易圏に対する優遇アクセスを英国に与える甘い取り決めに反対している。
経済的な影響が穏便なものになるという前提は現実的なのか。もしそうだとすれば、ほかのEU加盟国は見せしめにするために、英国に報復すべきなのか。前者は「恐らくイエス」、後者は「絶対にノー」というのが筆者の答えだ。
ブレグジットは経済的な悪影響を伴うが、残留陣営が言っているほど劇的なものにはならないと筆者は考える。そして、そう、ほかのEU加盟国は報復すべきでない。それは英国以上にEU自身を大きく傷つけることになるからだ。
英財務省、イングランド銀行、先進国クラブの経済協力開発機構(OECD)、国際通貨基金(IMF)が皆、ブレグジットの重大な経済的影響を示していると称する研究結果を出したことは筆者も知っている。問題は、こうした研究は将来の貿易パターンについて、そしてより重要なことに、経済が長期的にどう適応するかについて、かなり具体的な仮定に基づいていることだ。こうした仮定はすべて臆測に満ちており、ほぼ確実に間違っている。
また、20年以上前に単一市場が始まったときと同じように、英国経済はいずれこの新しい体制に適応するはずだ。
マクロ経済のモデリングには、多くの有用な役割がある。だが、未知なる政治的決断が長期にわたって及ぼす経済的影響を測ることができるふりをすることは、方法論とその根底を成す数学的前提の乱用だ。
もちろん、明確な経済的悪影響は多々あるが、それを相殺する影響もある。通貨ポンドは下落し、英国の膨大な経常赤字の減少につながるかもしれない。住宅価格は低下するかもしれないが、これは良いことにもなり得る。また、もしシティー(ロンドン金融街)がビジネスを多少失ったとしても、それは必ずしも経済全体にとって悪いことではないだろう。
経済理論に従えば、国家の富は究極的に、そのスキルと資源、政策の質に左右される。ブレグジットがそれを変えるとは思えない――英国が北朝鮮の何らかのバージョンになろうとしていると考えない限りは。
短期的には、ブレグジットは負の経済的影響をもたらす。唐突な体制変更になるし、そうした変更は摩擦損失を生むことがある。だが、短期的な経済損失に関する懸念が、欧州における国の長期的な戦略的ポジションに関する決断の妨げになるのを許すことは、狂気の沙汰だ。
他国におけるブレグジットの政治的影響に関する懸念の前提は、だから正しい。では、他国はどう対応すべきなのか。ほかの加盟国が追随するのを思いとどまらせるために、英国の体制移行にかかる経済的コストを膨らませることを目指すべきなのだろうか。
それは無責任であり、逆効果だろう。1つには、EUは英国に対して貿易黒字を出している。それ以上に重要なことに、EUはすでに、トルコと結んだ道義的に卑劣な難民協定でソフトパワーの評判を失うことに忙しい。もしEUがここで離脱に対して加盟国を罰し始めたら、たちの悪い体制という評判を得ることになる。
ドイツには、旅人の旅路を遅らせようとすべきではないということわざがある。筆者が助言するなら、英国を平穏に去らせ、好条件の取り決めを与え、戦略的に考えろ、というものになる。EUはなお、多くの政策分野で英国を必要とする。また、英国が将来、EUに戻ってくることを決めないとも限らないだろう。
残留陣営が勝った場合、ほかのEU諸国の政府はデビッド・キャメロン英首相と結んだ合意を守ると筆者は見ている。EUはどんな状況下でも、英国が「絶えず緊密化する同盟」から免除されることを許す条約変更を受け入れるべきではない。そんなことをすれば、欧州連合の趣旨そのものが荒唐無稽なものになってしまう。特にフランスで条約変更への意欲がないことを考えると、それが起きる危険はないと思える。
だが、国民投票の結果がどうなろうとも、英国が欧州の未来を形作るうえで積極的な役割を果たす可能性は極めて低い。
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