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[真相深層]サウジ動かす多彩な4人
脱・原油依存へ改革急ぐ 若き権力者・副皇太子支える
サウジアラビアが国家財政に占める原油への依存度を下げるため、経済改革に動き出した。国営石油会社の株式上場や政府系ファンドの拡充など収入源を多様化する。中心にいるのは、30歳すぎの若さで強力な権限を握るムハンマド副皇太子。その決断力に注目が集まるが、背後には信頼する4人の側近が支える。
「影の石油相」
サウジのサルマン国王は8日、ファリハ保健相を石油鉱物資源相に任命する人事を発表した。石油相は実力派のヌアイミ氏が20年以上務めてきたが、高齢で引退説が流れていた。その後任に抜てきされたのがファリハ氏だ。石油鉱物資源省をエネルギー産業鉱物資源省に改組し、水資源や電力部門まで管轄する。
ファリハ氏は50代半ば。180センチメートルを超す長身で精悍(せいかん)な風貌、分析力と部下の統率力に定評がある。国営石油会社サウジアラムコの最高経営責任者(CEO)を経て、保健相兼アラムコ会長に就いていた。
サウジではサルマン国王直系のムハンマド副皇太子が国防相ポストにありながら経済、政治両面で大きな力を握る。その若き指揮官が厚い信頼を寄せる側近の一人がファリハ氏だ。昨年石油政策の実質的決定権を得た副皇太子の助言役としてロシア訪問や、米英エネルギー担当相との会談などに同行。「影の石油相」とも呼ばれていた。
王族に媚(こ)びず、歯に衣(きぬ)着せない発言をするファリハ氏は当初「生意気な男」と受け取られたようだ。だが石油から新エネルギーまで幅広い知識で信頼を得ると「今や副皇太子の前で唯一足を組んで座れる側近」とささやかれる。
ファリハ氏と並ぶ経済面の重要側近がファキーフ経済計画相だ。副皇太子はファリハ氏の助力を得て、向こう15年の経済改革の目標を示した「ビジョン2030」計画を発表し、財政負担軽減や「脱石油依存」政策の加速を明示した。アラムコの上場はその目玉だ。上場後の時価総額が2兆ドルともいわれるアラムコの資産内容を査定し、18年までの実現を目指す。
ファキーフ氏も省庁の壁を越え、ビジョンとりまとめに貢献した。イスラム金融で頭角を現したアルジャジーラ銀行会長や西部の商業都市ジッダの商工会議所会頭などを歴任。金融に明るい知識面とサウジ経済界の人脈の豊富さで評価が高い。
副皇太子は改革で最初の5年を重視する。5月末〜6月をメドに民営化や人材育成の具体案を示す「国家改造プログラム」の作成を指示した。「妙案捻出へライバル意識むきだしのファリハ氏とファキーフ氏を競わせている」(サウジ王族に近い関係者)とされる。
外交では国際法に詳しいジュベイル外相がカジを取る。米同時テロの際に駐米大使を務めたが、実行犯19人のうち15人がサウジ国籍だったことが判明した後、緊迫した両国関係の維持に奔走。テロ対策で対米協力を流ちょうな英語でアピールした。
対米関係は中東と距離を置くオバマ政権でぎくしゃくしたが、経済改革では米企業の協力も受けており「外交・軍事の対米協調で今後ジュベイル氏の役割が増す」と在中東の外交官はみる。
イランの専門家
50代が多い側近の中で30代と若いのがトライフィ文化情報相だ。主な担当は政府の広報だが、イラン問題の専門家の一面もある。英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで国際紛争やイラン問題を専攻。ペルシャ語にたけ、メディア面から融和政策を提唱してきた。副皇太子はそこに着目しているとの声がある。
サウジは1月に宗派問題で対立するイランと断交、域内に波紋を広げた。だがイランとの緊張関係は資金調達や民営化政策にマイナスに働く。最近、サウジなど湾岸協力会議(GCC)加盟国と、イランとの関係が指摘されるイエメンのイスラム教シーア派武装組織が和解に向け接触し始めた。経済改革を円滑に進めるためイランとの緊張緩和へ情報相の出番が巡ってくる可能性もある。
大胆な方針やイランへの強硬姿勢で型破り、暴走気味との風評もあるサウジ副皇太子。だが、個性あふれる側近に耳を傾け政策を決める一面にも注目する必要がある。
(編集委員 中西俊裕)
[日経新聞5月25日朝刊P.2]
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