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仏ドゥシー・レ・ミーヌで、労働法改革法案に反対する製油所職員が油槽所を閉鎖する中、炎上する道路のそばに立つ機動隊(2016年5月25日撮影)。(c)AFP/François LO PRESTI〔AFPBB News〕
デモ隊襲撃でパトカー炎上、パリはもはや戦争状態だ 「労働改定法案」を巡る対立がますます過激に
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46960
2016.5.30 山口 昌子 JBpress
フランスの「労働改定法案」(従業員に極めて有利に定められている現行の労働法を改定しようという法案)への反対運動は過激さを増し、製油所や原子力発電所でのスト決行や、デモ隊によるパトカー襲撃などまで発生している。
(前回の記事)「パリは騒然、フランスの労働者が労働法改正に激怒」
(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46836)
十数カ所の製油所がストを決行し、最大の石油輸入港である仏北部ルアール港の荷揚げ組合もストに突入。その結果、ガソリンスタンドがガソリン不足に陥り、パリを中心に休業中のスタンドが約3500店に上った。
「ガソリンあります」の看板を掲げる店には長蛇の列ができ、店によっては「小型車は20〜30リットル、大型車は40〜50リットル、補給用容器への販売はなし」といった厳しい条件も課している。
それを受けてオランド大統領は5月25日、「フランス人が補給するガソリンは保障する」と宣言し、政府はイラク戦争中(2004年)でも滅多に実施しなかった石油備蓄の3日分の放出を決定した。
パリ郊外ノージャン・シュール・セーヌの原発では、従業員組合が5月25日にスト突入を決議。首都圏の電力不足が危惧されている。
また、パリでも他の大都市でも、食料品をはじめとする物資の不足が目立つ。大型トラック組合の一部が、改定法案に盛り込まれている「時間外手当の大幅カット」に反対してストに突入したからだ。
■炎上するパトカーから危機一髪で脱出
デモ隊はパトカーも襲撃し、炎上したパトカーから男女の警官が危機一髪で脱出。そのシーンを現場から中継したテレビ記者は「これは戦争です!」と思わず口走った。
5月18日、パリの共和国広場で極左グループや学生らが警官隊の「過剰」なデモ警備に抗議して「反警官デモ」を繰り広げた。
そのスローガンがすさまじい。「みんなが警官を憎悪している」「フリック野郎(警官の俗称)、ブタ、殺人者」「ペタン(ナチ占領下の対独政府の首相、フィリップ・ペタン)の再来」など。
警官隊が催涙弾で応酬すると、周辺の通りに四散したデモ隊の十数人が、ちょうど通りがかったパトカーを襲撃。ガラス窓を金属棒でたたき割ると同時に、車の下や車内に火炎瓶を投げ込んだ。車内にいた男女の警官2人のうち男性警官が出てきて、金属棒で殴りかかるデモ隊の1人と対峙。警官は素手で応戦し、その間に女性警官は炎上し始めたパトカーから脱出した。
男は駆けつけた警官らに取り押さえられたが、パトカーは全焼した。もし、警官2人が車内に閉じ込められていたら、焼死していたか重度の火傷を負ったのは間違いない。パトカーを襲撃した18歳から32歳までの極左グループ4人は「意図的殺人行為」で逮捕された。
「労働改定法」への反対デモには、毎回100人前後の「カシャー(破壊屋)」と呼ばれる破壊専門の暴力グループが参加し、店舗のショーウインドーやレジの破壊などを繰り返し、市民からも顰蹙を買っている。
デモ隊に負傷者が出る一方、警官隊にも100人を超える負傷者が出ている。仏中西部ナントでは部隊から離れて1人でいたところを襲撃されて重体に陥った警官もいる。警官を襲ったのは18歳の高校生だ。倒れた警官の頭部を狙って執拗に殴る蹴るの暴力を加えたという。
■撤回したらヴァルス首相の辞任は必至
上院での審議(6月13〜24日)を経て、政府は7月下旬には上下両院合同の最終採決によって法案を成立させることを目指している。だが、7大労組のうち共産党系の労働総同盟(CGT)ら4労組は「断固、法案撤回」を叫んで、デモやストを強化中だ。
与党・社会党内にも「法案は撤回すべきだ」との意見がある。だが、撤回したらヴァルス首相の辞任は避けられない。その場合、1年後に迫った2017年春の大統領選への悪影響は必至である。首相辞任を何としても避けるために、法案成立を目指す以外ないというのが政府の立場だ。
フランスでは2006年にも、「初回雇用契約」を盛り込んだ「機会均等法案」が学生らの猛反発に会った(法案を提出したのはシラク右派政権)。若年層の失業率を低下させるのが目的だったが、かえって「若年層を恒久的な仮契約者にする」として学生や労組などが100万人規模のデモを繰り広げた。法律は公布されたもののデモやストがやまず、結局、撤回に追い込まれたという過去がある(ただし、1年後の大統領選では与党のサルコジ氏が新法案を約束するなどして勝利した)。
今回は、弱者の見方を標榜する社会党が法案を通そうとしていることに、左派支持者は「裏切られた」との思いが強い。社会党左派は公然と法案に反対しており、オランド大統領の支持率は最新の各種世論調査では13〜16%と低下。ヴァルス首相も25%前後と急激に支持率を下げている。
ヴァルス首相は「撤回はありえない」と強硬姿勢を崩していないが、政府と法案反対派の“戦闘状態”はまったく収束する気配を見せない。
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