クリントン氏の私用メール問題、5つの新事実 米国務省監察官の報告書で分かったこと 2016 年 5 月 26 日 12:17 JST WSJ 米国務省の監察官は25日、ヒラリー・クリントン前国務長官が個人のメールサーバーを公務で使っていた問題で報告書を発表し、同省当局者が事前に相談を受けていれば使用を認めていなかっただろうし、認めるはずもなかったと、同氏の対応を厳しく批判した。 クリントン氏は以前から、国務長官在任時に私用メールサーバーを使用していたことについて、事実上認められていたと主張してきており、報告書の内容とは矛盾する。監察官は、個人メールの利用は法律違反ではなかったとしながらも、職員は業務では政府の情報システムを使用しなければならないというのが国務省の明確な方針だったと結論付けた。 報告書は「国務省職員は日常業務の遂行に当たっては同省が承認した情報システムを使用しなければならない。非承認のシステムを利用した場合、セキュリティー上の重大なリスクがあるからだ」と指摘。一方、クリントン氏の選挙活動で広報担当を務めるブライアン・ファロン氏は「私用のメールサーバーを使っていたのはクリントン氏だけではなかった。公文書を適切に保存し公開するという点で、同氏は最大限の協力を行った」と述べた。 報告書で明らかになった新事実5点を以下に示そう。 1.監察官はクリントン氏の電子メール1通を新たに発見した クリントン氏は長官退任からほぼ2年後に約3万通のメールを国務省に提出し、それが保存していた公務関連メールの全てだと宣誓証言した。全体で約6万通あったメールのうち、残り3万通は完全に私的なメールだとして消去されている(クリントン氏の電子メールデータベースはここ[英語]で見られる)。 しかし監察官は、クリントン氏と最も近い長年の側近フーマ・アベディン氏の間でやり取りされたメールを新たに発見した。同メールでは、アベディン氏がクリントン氏に対し、国務省の迷惑メールフィルターでブロックされないようにするため、個人のメールアカウントの利用をやめるよう進言した。このやり取りは、クリントン氏が国務省に提出したものには含まれていなかったが、国務省のシステムの中から発見された。同氏は、「別のアドレスを作成しましょう。個人のメールにアクセスされるリスクは冒したくない」と返信し、個人メールの利用への懸念を示した。 国務省は、このメールがなぜこれまでに一般公開された5万5000通のメールに含まれていなかったのかを明かしていない。同省は特別に機密性の高い少数のメール以外は公開したとしていた。クリントン氏の広報担当者はコメントの要請に応えなかった。 2.クリントン氏のサーバーに不正侵入が図られたことがあった 監察官は、クリントン氏のスタッフが電子メールのセキュリティーについて2回、懸念を示していた事実を見つけた。1回は2011年のことで、技術スタッフが私用メールサーバーに「誰かが侵入しようとしたが、果たせなかった」と、メールで注意を喚起した。そのスタッフは同じ日遅くに「再び攻撃を受けたので、サーバーを遮断した」と伝えた。また2011年に、クリントン氏のスタッフ2人が「メールがハッキングされる」のを心配していると書いている。 3.国務省職員は、クリントン氏のメールのやり方に懸念を示していた 何人かの国務省当局者は、クリントン氏の私的なメールサーバーの利用は公文書保存上のガイドラインに沿っていないのではないかとの懸念を提起した。情報資源管理局(BIRM)の職員2人は、クリントン氏のメールを保存すべきかどうかをBIRM局長と話し合った。報告書は「この2人の職員によれば、局長はクリントン氏の個人のメールサーバーについては同省法務部門が調査して承認していたとし、この問題はこれ以上議論しないことになったと述べた」と記している。 4.クリントン氏と同氏の側近らは調査に協力しなかった クリントン氏と同氏の幹部スタッフは、監察官の調査への協力を拒否した。拒否したのは、チェリル・ミルズ、ジェーク・サリバン、フーマ・アベディンの各氏ならびに技術スタッフ、国務省の元職員など。国務省当局者によると、国務省の元職員には監察官の調査に協力する法的義務はない。クリントン氏の幹部スタッフは国務省に対する民事訴訟で証言することになっており、クリントン氏が証言するかどうかも、裁判官が今後判断する。幹部スタッフには、機密情報の取り扱いに誤りがあったかどうかの捜査の一貫として連邦捜査局(FBI)が話を聞いている。 5.コリン・パウエル氏も私用メールを利用していた 報告書によると、国務省職員の間ではたまに個人メールを利用することが広がっていたが、個人のメールばかりを使用していたのはクリントン氏、コリン・パウエル元国務長官、ジョナサン・スコット・グラション元ケニア大使の3人だけだった。監察官は、「パウエル国務長官の時代には情報セキュリティーに関する方針は固まっておらず、当時の国務省はその重要性について熟知していなかった」と述べた。 http://jp.wsj.com/articles/SB10183435217094733641104582089412368958098
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