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Column | 2016年 05月 15日 09:22 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:トランプ版ポピュリズムは勝利するか
Neal Gabler
http://s3.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20160515&t=2&i=1137292095&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXNPEC4C095
5月11日、結局のところ、トランプ氏(中央)はアンドリュー・ジャクソン大統領(左)の再来にはなり得ないだろう。彼は政治家というよりは映画の登場人物、そう、眉をしかめた、いかがわしいグルーチョ・マルクス(右)になってしまう可能性が高い(2016年 ロイター/FILE)
[11日 ロイター] - 共和党の大統領候補指名を確実なものとしたドナルド・トランプ氏は、「ポピュリスト」と呼ばれる。だが彼は、政治的な文脈で言う「ポピュリスト」、つまり経済的格差に対して激しい非難を浴びせる類の人物ではない。彼はそうした他のポピュリストが誰一人やらなかったことを成し遂げた。トランプ氏は大衆文化の分野でたいへん好評だったポピュリズムを、政界で振るわなかったポピュリズムに接ぎ木したのである。
これこそが彼の成功の秘訣(ひけつ)かもしれない。
米国の大衆文化が生まれたのはアンドリュー・ジャクソン大統領の時代だった。大衆はエリート主義の文化に真っ向から挑戦し、その挑戦は今もそのまま続いている。
ポピュリズムは政治よりも文化の世界で台頭した。その理由の一つは、民主主義的な憧れを政治の世界で実現する方がはるかに難しいからである。平等主義が称揚される米国にあっても、富裕層は依然として権勢を振るっている。そこで普通の米国民は、自分たちにできる範囲で権力を握ることにしたのである。
クズのような小説が人気を博した1830年代から、クズのようなテレビ番組が高視聴率を獲得する2010年代に至るまで、大衆文化全般に対して、「大多数の人はたいして賢くも洗練されてもいない」という上から目線の分析が行われてきた。基本的には、大衆がクズを愛するのはもっと良いものを知らないからだ、というわけだ。
もう少し「上から目線」でない説明もある。こうした低所得層向けのエンターテインメントが大受けするのはエリートがそれを嫌うからに他ならない、というものだ。つまり、両親が渋い顔をするのが分かっているからこそ、ティーンエージャーが大音量でラップミュージックを聴くようなものだ。
ある意味では、この一つのエンジンによって米国の大衆文化すべてが動いている。知識人が眉をひそめればひそめるほど、一般大衆は彼らの言う「クズ」を愛した。大衆文化とは常にアウトロー文化なのである。
これは単なるスタイルの話ではなく、本質的なものだ。米国の大衆文化のほとんどはポピュリズムであり、肝心なのはエリートたちの文化を吹っ飛ばすか、少なくともチクリと針を刺すことである。チャーリー・チャップリンであろうが、マドンナであろうが、ビル・マレーであろうが、権力者対アウトサイダーという構図はいつの時代も変わらない。それこそが大衆文化の魅力である。
庶民の上に君臨して威張り散らす者を、大衆文化は庶民に代わって糾弾する。典型的な例を知りたいなら、マルクス兄弟が「オペラは踊る」で作り出したカオスを考えるだけで十分だろう。
マルクス兄弟のグルーチョのように、トランプ氏は破壊の象徴である。グルーチョは横柄さ、エリート主義、自己満足、そして無関心などをやり玉に挙げた(その悪役を引き受けた女優がかわいそうなマーガレット・デュモントだ)。彼は、自分より社会的に高い地位にある人々が幅をきかせる場にカオスを生み出したのである。
それでも、米国の政治はまた別物である。もちろん広範な庶民を代弁すると自称するポピュリストも存在した。なかでも最も著名なのは、おそらくウィリアム・ジェニングス・ブライアンだろう。彼は、1896年、1900年、そして1908年と3度にわたって民主党の大統領候補指名を獲得した。3度ともに敗れたのは偶然ではない。
実際、しばしばトランプ氏が比較されるジャクソンを別にすれば、米国にポピュリストの大統領が存在したことはない。ポピュリストはとにかく大統領選とは相性が悪い。
ポピュリズムが国政レベルで失敗してきたのは、一つにはエリート層が米国の政治プロセスをがっちりと守ってきたからだ(今やトランプ氏がその警備を出し抜いてしまったのだが)。しかしこれには、もっと深い、米国民の精神性に根差した原因も考えられる。
米国の政治は、階級闘争というよりも、むしろ階級を乗り越えることを主眼としている。共和党も民主党も社会的流動性を高めることを公約に掲げている。金と権力は、庶民にとってねたみというよりも希望の対象なのだ。アメリカンドリームとは、つまるところ、「自分もあのようになれる」という考え方である。ああいう大富豪たちがやってきたとされる奮闘努力をすれば、誰でも同じようになれるという話である。
「努力の末の成功」は、超党派的な米国気質の根本である。しかし、特に共和党は「自分もあのようになれる」という発想を後押しすることがうまい。ポピュリズムがめったに勝利を収めないのはそのためだ。「自分もあのようになれる」精神の前では、ポピュリズムは腰砕けになってしまう。成功の方法という点で、この2つは相互に排他的なモデルなのだ。
自他ともに認める大富豪であるトランプ氏は、当然ながらこの「自分もあのようになれる」という政治的姿勢を放棄していない。彼の選挙運動においてもこの考え方は健在だ。健在どころか、トランプ氏はむしろこれを積極的に強調しているとも言える。彼の所有するビル、ゴルフ場、プライベートジェット、そして元スーパーモデルの妻を見れば一目瞭然だ。米国の「勝ち組」が手にした戦利品というわけである。
しかし、トランプ氏にとっては、そういったものが自分の魅力なのではない。それは、彼という人間を信頼すべき根拠なのだ。トランプ支持者は、彼が億万長者であるから応援しているわけではない。彼らは、トランプ氏が計算や礼儀を抜きに、自分の思った通りのことを率直に言葉にするからだと言う。
トランプ氏は本質的に爆弾を投げ込む人間だ。そしてこの国では、大衆文化のなかで、つまり小説、映画、テレビ番組などのなかでエリート層を敵に回している限り、そうした爆弾を投げ込む人間は深く長く愛される。そこで生じるのは現実的な破壊ではなく、米国民の多くが一度は夢に見る仮想の世界の混乱なのである。そのような意味で、米国民は保守的なのだ。
しかし、「自分もあのようになれる」式の政治がかつてのようには機能していない本当の理由は(それがつまり、今年に入って共和党主流派が失速した理由の一つだ)、米国民がそうした発想の信ぴょう性をますます疑い始めていることにある。
社会の流動性は低い。賃金はもう何十年も低迷を続けている。調査結果を見れば、聖なるアメリカンドリームがその影響力を失いつつあることは明らかだ。人々は、宝くじに当選しない限り自分たちが富を築くことはできない、と思い始めている。
トランプ氏はそれを承知しているようだ。彼は政治の世界ではなく、ポピュリズムの最も豊かな土壌である大衆文化の世界から登場した。彼が大言壮語を吐くトークショーでは、彼の裏をかくこともパワーで圧倒することも誰にもできず(彼は「交渉の技術(The Art of the Deal)」の達人だった)、自分におもねる者には「クビだ」と宣言することで、テレビの世界で権力者としての評判を確立した。
トランプ氏は「体重800ポンドのゴリラ」、つまり圧倒的な大物であり続けている。しかし、これが重要な点なのだが、彼は庶民的かつニヒルに振る舞っている。こういったポーズこそ、彼の批判者の多くが毛嫌いする側面だ。
トランプ氏の辞書に社交辞令は存在しない。大衆文化のポピュリストたちは皆そうだ。彼らは自分たちを妥協する人間だなどと思っていない。トランプ氏は自らの勝利を強調しているが、実は自分たちが勝ち組だとさえ思っていない。彼らは、権力層の破壊者を自任しているのだ。
ある意味で、大統領候補としてのトランプ氏は、映画「トランスフォーマー」シリーズを製作した、派手なアクションで鳴らすマイケル・ベイ監督に似ている。トランプ氏も何かを吹っ飛ばすのが大好きなのである。少なくとも彼は間違いなく共和党を吹っ飛ばした。恐らく、米国政治の言論も巻き添えにして。
豪腕指導者としての大言壮語と政界とは無縁な庶民としてのアピールを巧みに組み合わせるトランプ氏は、独裁的ポピュリストである。もちろん、そんな表現があるとすれば、それは形容矛盾である。しかし彼は、もう一つ別の形容矛盾、「エリート主義のニヒリスト」という特質を持っているのかもしれない。
結局のところ、トランプ氏はアンドリュー・ジャクソン大統領の再来にはなり得ないだろう。彼は政治家というよりは映画の登場人物、そう、眉をしかめた、いかがわしいグルーチョ・マルクスになってしまう可能性が高い。そして、彼にあざけられるのは米国の権力層なのである。
*筆者は「An Empire of Their Own: How the Jews Invented Hollywood」、「Life: The Movie: How Entertainment Conquered Reality」の著者。現在はエドワード・ケネディ上院議員の伝記を執筆中。
http://jp.reuters.com/article/column-trump-populism-idJPKCN0Y40IF?sp=true
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コラム:ロシアはいつ壊れるのか 2016年 04月 19日
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http://jp.reuters.com/article/usa-rigs-baker-hughes-idJPKCN0Y42EB
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