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[衝撃 パナマ文書]納税ガラス張り 英で先行
租税回避行為へ強まる批判
大企業は納税の実態を説明せよ――。欧州を中心に、企業に納税情報の公開を求める動きが強まっている。英国は近く各社に納税方針のネットでの開示を義務付ける制度を施行する見通しだ。さらに「パナマ文書」発覚で租税回避行為への批判は加速、欧州連合(EU)の欧州委員会は納税額の報告義務化を提案した。日本企業も対応を迫られている。
(植松正史)
「現地で対応を検討中だが、税務情報の公開の経験がほとんどない」。英国に複数の子会社を持つオリンパスの担当者は戸惑いを隠せない。英税務当局の歳入関税庁(HMRC)が昨年12月、同国で活動する大企業に対し、納税に関する会社の方針や考え方などの情報公開を義務付ける新制度案を公表したからだ。
ネット公開義務
新制度は英国内で事業を展開し、年間売上高が英国で2億ポンド(約310億円)超か、全世界で7億5千万ユーロ(約920億円)超の企業が対象となる見込みで、該当する日本企業も少なくない。
取締役会で承認した「税務戦略」のネットでの公開義務を定め、違反すれば罰金が命じられる。現在は関連法案の微修正の段階で今年7月にも施行される見通しだ。
PwC税理士法人(東京・千代田)は1月に税務ガバナンス支援チームを新設するなど企業側からの相談受付体制を拡充した。問い合わせは相次ぎ「英国に子会社を持つ日本企業で、既に公開に向けた税務戦略を策定した社もある」という。
同法人パートナーの高島淳税理士は「一般的に日本企業は極端な節税策を取らない一方、情報開示にも消極的だった」と指摘。「新制度をきっかけに税への意識が高まる可能性もある」と話す。
各社が英国の新制度への準備に本腰を入れ始めた4月、タックスヘイブン(租税回避地)の利用実態に関する大量の内部文書「パナマ文書」が発覚。極端な節税策を講じた政治家や富裕層、企業などへの批判が高まり、欧州委員会はEU域内で活動する多国籍企業に国別の利益や納税額などの報告・公開を義務付ける制度の新設を提案した。
加盟国間に温度差があり、提案がどう決着するかは未知数だ。ただ英国の新制度以上の情報開示がEU全体で求められる展開もあり得る。
各社の胸中は穏やかでない。ロンドンの大手税理士法人は「日本企業から『欧州委員会の提案はどうなるのか』との問い合わせが相次いでいる」と明かす。欧州での売上比率が高く、昨年から英国の新制度向けの準備を進めてきたサントリー食品インターナショナルも「情勢が動いており、どう対応すべきか検討中。各国の法規の動向を見定めたい」と困惑する。
国際税務に詳しい太田洋弁護士は「多国籍企業に納税情報の開示を求める流れは以前からあり、突然始まったことではない」と指摘する。欧州は多国籍企業の租税回避策に対する批判が根強く、行政によるチェックや法規制を世界に先駆けて進めてきた経緯がある。
不買運動に発展
2012年には米スターバックスに対し英国での法人税納税額が少ないとの指摘が浮上、大規模な不買運動に発展した。その後もアップルやグーグル、フェイスブックなどの節税策がEUで問題視され、各社は追加納税などに追い込まれた。
デンマークは12年末、国内で事業展開する企業の法人税額や課税所得の公開を決定。現在はネット上のデータベースで12〜14年の情報を提供している。英国は情報開示の強化に先立って昨年、意図的な税逃れと認定した多国籍企業などに高税率を適用する、通称「グーグル税」を導入した。
各国の姿勢が厳しさを増すことに呼応して、企業側にも新しい動きが見られる。税に関する情報をあえて自主的に積極開示する企業の出現だ。
英通信大手ボーダフォンは各国別の利益や納税額、投資額などを含む50ページ以上のリポートをネットで公表。石油大手のBPや、ビール大手のカールスバーグなどは毎年の納税総額を明らかにしつつ、「納税によって地域社会に貢献している」などと訴えている。
企業の租税回避に詳しい一橋大学大学院の吉村政穂准教授(国際課税)は「欧州を中心に、企業に対して税の情報公開の流れが進むのはほぼ確実だ」と予測する。
吉村氏はさらに「日本企業はそもそも税に関する会社の統一方針がない場合が多い」と指摘。「今後、競合他社の公開状況と差が出れば『税の透明性に関して企業の姿勢が消極的だ』と批判されかねない」と取り組みの遅れを危惧している。
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国ごとで異なる税制の隙を突く
▼多国籍企業の租税回避行為 国境をまたいで事業展開する企業が、国によって異なる税制の隙を突いて行き過ぎた節税を行うこと。国内でしか活動できない企業や個人との公平さを損ねるほか、各国の税収を減らす要因になるため問題視される。
例えば、アップルが編み出したとされ、「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」と呼ばれる仕組みが有名。米国やアイルランド、オランダの法規制や条約の特性をフル活用し、米国外の利益の大半を無税で留保できるようにしたという。
スターバックスは1998年の英国進出以降、スイスやオランダの子会社を利用して法人税の大半を“節税”。フェイスブックはアイルランド法人を絡めた会計処理により、2014年の英国での法人税納付を4327ポンド(約70万円)に抑えた。いずれも世論や関係国からの厳しい批判にさらされ、自主的な追加納付や、節税策の見直しなどを余儀なくされている。
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OECDやG20も対策 EUとの整合性 課題に
多国籍企業の極端な節税策を巡っては、経済協力開発機構(OECD)や20カ国・地域(G20)首脳会議などの国際的な枠組みでも対策が進む。
リーマン・ショック後の2009年、OECDがタックスヘイブンのリストを公表。13年からはOECDとG20が連携して具体的な国際課税のルール作りに着手し、「BEPS(税源浸食と利益移転)行動計画」の最終報告書をまとめた。
行動計画は国際間取引への課税ガイドラインなど15項目。多国籍企業が各国の税務当局に、国別の利益・納税額の報告文書を提出する仕組みも盛り込んだ。
ただ「企業の機密情報が流出する危険がある」と反発も強い。米内国歳入庁(IRS)はむしろ、国際間の金融口座のチェック強化を優先させたいなど、各国には温度差もあり、報告内容は各国税務当局内で慎重に扱われることになった。
OECDが各国当局への報告を求める一方、パナマ文書問題を受けてEUが打ち出した案は、納税情報の公開も求めている点が異なる。日米の経済界を中心に「OECDのルールと違う」などと反発も広がっており、今後、整合性が図られるか動向が注目される。
[日経新聞4月25日朝刊P.13]
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