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『ニューズウィーク日本版』2016−4・19
P.30〜31
「オバマは知ってた?FTAと税逃れの不適切な関係
アメリカ:米パナマ自由貿易協定は「金持ちの税逃れ」を危惧する声を押し切って締結されていた
各国首脳や大手企業によるタックスヘイブン(租税回避地)の利用実態を暴露し、世界に激震を与えている「パナマ文書」。ところが今から5年以上前に、バラク・オバマ米大統領とヒラリー・クリントン国務長官(当時)は、この問題について警告を受けていた。
オバマは09年に大統領に就任すると、クリントンと共にパナマ、コロンビア、韓国それぞれとの自由貿易協定(FTA)を推進。交渉そのものはブッシュ政権時代に始まったが、米議会の都合で塩漬けになっていたものだ。
反対派の声は厳しかった。パナマは所得税率が非常に低く、銀行機密法があることから、外国人の資産隠しや、違法なマネーロンダリング(資金洗浄)の温床になりやすい。その上、外国の捜査当局から要請を受けても、協力を渋ることで知られていた。
オバマは富裕層の所得税率引き上げに力を注ぐ一方で、富裕層の税逃れを事実上容易にする米パナマFTAに11年に署名した。これに先立ちクリントンも、上下両院がFTA実施法案を採択すると、歓迎の意向を発表。パナマ、コロンビア、韓国とのFTAは「米企業の輸出を一段と後押しするだろう」と称賛した。さらにクリントンは、「オバマ政権は、世界におけるアメリカの経済的関与を深化させるべく、日々努力している。FTAはその決意の表れだ」と言い添えた。
しかし批判派は、FTAによって金持ちや企業は海外に作ったペーパーカンパニーや銀行口座を通じて、多額の税逃れが可能になると指摘した。「租税回避地は、所得税率がゼロまたは非常に低いか、銀行機密法があるか、税金問題に関して諸外国との情報交換に応じないという特徴がある」と、NGO「税の公正を求める市民連合」のレベッカ・ウィルキンズは11年に指摘した。「パナマの場合、この3つがすべてそろっている。おそらく最悪だ」
FTAで資産隠しが簡単に
オバマとクリントンが推進したFTAによって、アメリカの捜査当局は事実上、パナマを経由する個人や企業の疑わしい活動を取り締まれなくなったと、複数の市民団体は指摘する。FTAはパナマ政府に銀行関連法令の譲歩を強いるどころか、アメリカの捜査当局がパナマを通じた税逃れを取り締まろうとすれば、FTA違反として国際機関の処罰を受ける可能性がある。
「米パナマFTAは、税逃れを取り締まるためのアメリカの政策手段を制限するだろう」と、消費者団体パブリック・シチズンは当時警告している。さらに、このFTAによって公共事業の受注業者や、公的資金の注入を受けた大手金融機関も資産隠しがしやすくなると指摘した。
こうした反対意見にもかかわらず、一部の民主党議員はFTA成立に向けて、オバマ政権に積極的に働き掛けていた。民主党の重鎮マックス・ボーカス上院議月(当時)は、FTA実施法案を議会で可決させるべく尽力した。チャールズ・ランゲル下院議員は、オバマが「スター並みの人気を駆使」して、FTAを実現するよう促した。実際、オバマはパナマの大統領をホワイトハウスに招いて説得に当たった。
ルパート・マードックのニューズ・コーポレーションなどの大手企業も、米パナマFTAを実現するべく、ロビー括動を展開した。ハフィントン・ポストによると、当時ニューズにはパナマ籍の子会社が136社あった。
とはいえ、民主党がFTAに賛成一色だったわけではない。マイク・ミシュー下院議員は09年、オバマが大統領に就任した2カ月後に政治紙ザ・ヒルへの寄稿で、パナマとのFTAに反対を表明した。
「まるで二重苦だ。これはアメリカの雇用を減らす貿易協定だ。しかも米政府監査院(GAO)によると、パナマは国内外の主要監視団体が発表するタックスヘイブン監視リストで、例外なく名前が挙がる8カ国の1つだ」
ミシューはさらにオバマが大統領候補時代、これらFTAの再交渉を約束したことを指摘している。それと同時に、パナマが租税情報を共有するための協定調印を渋っていることは、この国が抱える大きな問題を象徴していると警告した。
結局、アメリカはFTA実施法案の可決前に、パナマと租税情報の共有協定を結んだ。しかしパブリック・シチズンによると、この協定は、「個別の事案で米政府の要請があった場合、パナマ政府は情報提供を拒否できない」ことを定めていたにすぎない。
あれから4年半。パナマの法律事務所モサック・フォンセカから洗出した文書は、過去40年近くの問に同事務所が提供するオフショア金融サービスを利用した企業21万社の情報を含んでいた。流出文書は計1150万点に上るという。
こうしたオフショア企業の多くはペーパーカンパニーで、関係者にはデービッド・キャメロン英首相の父親、アイスランドのシグムンドゥル・グンロイグソン首相、それにロシアのウラジーミル・プーチン大統領の側近など、現職または元国家首脳12人と、彼らとつながりのある60人が含まれている。
こうしたペーパーカンパニーは租税回避だけでなく、資金洗浄やテロ組織への資金提供など、明らかに犯罪組織につながる資金の流れも可能にする。それだけに「パナマ文書」が明るみに出て以来、世論の反発は大きく、既にグンロイグソンは辞任に追い込まれた。
オバマは先週、タックスヘイブンを利用した資産隠しを「大きな問題」だと語った。だが、その舞台がパナマだったことについては、なんら驚きではなかったに違いない。
クラーク・マインドドック、デービッド・シロタ」
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