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[FINANCIAL TIMES]米、サイバー攻撃を宣言
デピュティ・エディター ルーラ・ハラフ
これで公になった。戦争はもはや、戦車や大砲、戦闘機、爆弾、兵士、機械を配備するだけではない。米国のサイバー部隊は最初の軍事任務を与えられた。過激派組織「イスラム国」(IS)と戦うことだ。
長い時間がかかったものだ。カーター米国防長官が(編集注、2月29日の記者会見で、サイバー部隊を使ってISの通信ネットワークに過重な負荷をかけ、ISが部隊の指揮をとれなくするよう)サイバー攻撃を加えていると明らかにしたが、初めはなぜこれほど時間がかかったのかと不思議だった。ISが中東の舞台に突如、出現してから2年間で悪意を拡散し、組織化を図り、新兵を採用するために抜け目なくインターネットを利用する様子はかなり報道されてきた。カーター長官はなぜ今になって部隊に指令を出したのか。
まもなく5000人規模に拡大される国防総省の新設部隊は、かなり前に攻撃を始めたと思うかもしれないが、もしそうなら、ISに対し何ら目立った成果を上げていないことになる。
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恐らくこれまでは、作戦の重点が情報収集と監視に置かれていたのかもしれない。もしかしたら作戦が増強されたのかもしれない。あるいは、テロリスト対策を強化していることを示せという国内の圧力にオバマ政権がさらされていること以外、目新しいことは何も起きていないのかもしれない。
真の動機が何にせよ、カーター長官が初めてサイバー攻撃について公表したことで、専門家たちはこの話題で持ちきりになった。
「歴史的な瞬間だった」。ワシントンのシンクタンク、新アメリカ財団(NAF)のサイバーセキュリティーの専門家、ピーター・シンガー氏は筆者にこう語った。「我々はこの能力を行使するだけでなく、サイバー攻撃をすると公言しているのだ。これはサイバー攻撃を戦争の一形態として位置付けることになる」と。
恐ろしそうに聞こえるだろうか。確かにそうだ。だが必要なことでもある。サイバー戦争に関する法的、道義的な議論に弾みがつくかもしれない。
専門家は今や100カ国以上が軍事目的のサイバー能力をある程度備えたと見ており、(ISのような)国家ではない組織も存在する。だが、交戦規則や、戦争と犯罪の間のどこに線を引くかについては統一見解がない。
「報復か否かには関係なく、攻撃行為という意味で、西側諸国が実際に何をしようとしているのかに関し、これまでよりもっと開かれた議論をする必要がある」。元英空軍高官で現在は英王立防衛安全保障研究所に所属するイワン・ローソン氏はこう話す。「議論は法的、倫理的、道義的なものになるだろう。そして、報復も含め実際に戦争になった時のことも議論しなければならない」
ローソン氏は、2010年前後にイランの核施設のシステムに仕込まれたウイルス「スタックスネット」を引き合いに出す。この攻撃の背後には米国がいたとみられているが、米政府は一度も認めていない。
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「スタックスネットがある特定の場所の特定の遠心分離機を破壊したとは主張できる。しかし、そのウイルスはネットワーク上に存在した。他者もアクセスし、再操作できるということだ」とローソン氏は言う。「国の安全保障に関する姿勢を示すうえで、サイバー空間の利用をどう考えるか、徹底した議論が必要だ」
すでにサイバー空間で活動している他国に比べ、米国は攻撃的ではないと思われている。昨年4月に公表された国防総省のサイバー戦略は、先制攻撃ではなく抑止を念頭に置いたものだった。
他国、特に中国、ロシア、イスラエル、イランは米国と同様、サイバー戦を展開しているとは公言していないが、攻撃を加えている。サイバー攻撃の事例は様々だ。ウクライナでは昨年、政府がロシアの仕業だと非難した送電網に対する攻撃があったし、イスラエルは07年、シリアの核施設を空爆する前に、シリアの防空システムに電波妨害を仕掛けたことが疑われている。
米国は最初の攻撃に格好の標的を選んだ。ISに対するサイバー攻撃なら、ロシアも含めて誰も反対しない。攻撃自体も特に高度なものにはならず、恐らくネットワークの電波妨害や、彼らの通信妨害といったところだろう。ISはソーシャルメディアを使うことにたけているかもしれないが、国家のような能力は持たず、サイバー組織の支援を得ているわけでもない。
米国の動きにはもっと大きな目的がある。ISへの攻撃を公に宣言することで、国防総省は行動する意志があるというメッセージを送っていると専門家はみる。中国とロシアはこれを意識するだろう。このメッセージがサイバー戦争を暗がりから引っ張り出す最初の一歩でもあることは、意義深い。
(14日付)
[日経新聞4月17日朝刊P.13]
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